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2008年8月15日

研究最前線第1回「紫外線をとりまく国内外の情勢」

 紫外線とは、人間の目に見える光より波長の短い100~400nm(ナノメートル。1nmは1mmの100万分の1)の光で、A領域紫外線(UV-A、315~400nm)、B領域紫外線(UV-B、280~315nm)、C領域紫外線(UV-C、100~280nm)に分けられます。太陽紫外線のうち、最も有害なUV-Cは大気中の酸素分子とオゾンによって吸収され地表には届きません。一方、UV-Aはオゾンの影響をほとんど受けません。UV-Bはオゾンによる吸収を受け地表にその一部が届くため、成層圏オゾン層破壊に伴う増加が懸念されています。成層圏オゾンが1%減少した場合、約1.5%増加するといわれています。

 地表の紫外線の強さを決める主な要因は、太陽高度、オゾン全量、気象要素(雲量等)の三つです。地球規模でみると低緯度地域で(日本では南ほど)、1年のうちでは夏に、1日のうちでは正午前後に、そして晴れて雲のない日に、紫外線が強くなるのは、これらの要因の組み合わせによるものです。気象庁の四つの観測局の月別紫外線量(UV-B)、時刻別紫外線強度(UVインデックス)を図に示します。

図:月別紫外線量(UV-B)、時刻別UVインデックス

紫外線計測方法

 紫外線の計測法は大きく物理的方法、生物学的方法、化学的方法に分けられます。物理的計測は、紫外線のエネルギーを直接測定する方法で、波長別に測定、ある範囲を一括して測定、リモートセンシング技術を利用して測定する方法などがあります。

 (1)分光光度計:波長別に紫外線強度を測定。日本では、気象庁が札幌、つくば、鹿児島、那覇の4地域で、1990年から紫外線観測を行っています(鹿児島は2005年3月で観測を中止)。オゾン層破壊の影響を強く受けるUV-Bのうち290~315nmとUV-Aのうち315~325nmを、0.5nmごとに、毎正時に観測しています。

 (2)帯域型紫外線計:UV-A領域、UV-B領域に一定の波長感度特性を持つ紫外線計で一定の波長範囲を一括して測定。比較的安価で、連続観測が可能であり、UV-A領域やUV-B領域それぞれの中央付近の波長に感度のピークを持つタイプのほか、人の紅斑(日焼け)作用曲線やDNAダメージ作用曲線に類似した波長特性を持たせたタイプなどがあります。

 (3)衛星観測:人工衛星を使ったリモートセンシングにより地表面の紫外線照射強度を評価する方法。地上観測の困難な地域を含め、ほぼ全球を毎日観測しています。

 生物学的計測・化学的計測は、物理量としての紫外線ではなく、紫外線の影響を計測する方法です。紫外線照射によって生じる生物の致死率などで評価する生物学的計測法と化学物質(フィルムなど)の色の変化などで評価する化学的計測法があります。これらは、物理計測と異なりリアルタイムの測定はできませんが、非常に小型で取り扱いが容易であるため、個人暴露量測定などにも使われています。

有害紫外線モニタリングネットワークとUVインデックス

 国立環境研究所地球環境研究センターでは、全国の大学や研究機関等と連携して「有害紫外線モニタリングネットワーク」を構築し、帯域型紫外線計による紫外線観測を行っています。現在、国立環境研究所の5観測局を含む、22機関26観測局で観測を行っています。

 紫外線の強さ・量を表す指標には、UV-BやUV-Aのほか、生物への影響を考慮した指標があります。代表的なものがヒト皮膚への紅斑作用の強さで重み付けしたCIE(紅斑)紫外線です。CIE紫外線25mW/m2を1として指標化したものがUVインデックスで、国際標準の紫外線指標として世界中で用いられています。

 有害紫外線モニタリングネットワークでは、現在全国16ヵ所の観測結果を国立環境研究所のホームページからUVインデックスとしてリアルタイムで公開しています。また、気象庁のホームページでも紫外線情報の提供を行っています。

紫外線予防対策

 世界中で、紫外線による障害を防ぐためのさまざまな活動が行われています。世界保健機関(WHO)では、紫外線の健康影響に関するさまざまな調査研究を実施しており、最近では、『Artificial tanning sunbeds: risk and guidance』という報告書の中で、日焼けサロンの有害性について警鐘を鳴らしており、とくに18歳以下の子供についてはリスクが高いとして日焼けサロンの利用禁止を勧告しています。日本では日焼けサロンに関してほとんど規制は行われていませんが、欧米では多くの国が18歳以下の子供の利用を法律で禁止する動きを始めています。

 その他、オーストラリアでは政府・民間機関によるさまざまな紫外線防御、がん予防のための啓発・教育活動が盛んに行われています。具体的な活動としては、日焼け防止方法を教えるプログラムの実施、さまざまな紫外線防御のためのガイドライン(子供向け、親向けなど)の作成、紫外線と皮膚がんの関係を紹介する小冊子の発行、各種紫外線防御グッズ(帽子、サングラス・ゴーグル、衣類、日焼け止め)の販売などを行っています。同様のプログラムはアメリカ、カナダ、フランス、イギリスなど多くの国で行われています。

 日本でも、2003年に環境省が紫外線保健指導マニュアルを作成し、紫外線の基礎知識、健康影響、防御方法、専門家による保健指導方法等をやさしく解説しています。しかし、学校での取り組みなど、オーストラリアや欧米と比べるとまだまだ遅れているのが実情です。

紫外線とのつきあい方

 国連環境計画の報告書では、大気中のオゾン層破壊物質濃度は減少しているものの、全球オゾン量は1970年代に比べて依然として少ないままであり、オゾン量減少によるUV-B照射量の高い状態は現在も続いているとしています。モデルによれば、オゾン層は、中緯度地域では今世紀半ばまでに、極緯度地域ではその10~20年後頃までに、人為起源のオゾン層破壊物質の影響から回復すると予測されています。一方、UV-B照射は現在ほぼピークにあり、今後徐々に減少するとされていますが、気候変動の影響を受けるため、地表UV-B照射の将来予測はより不確実性が大きいとしています。

 日常生活での紫外線暴露は、私たち一人ひとりのライフスタイルによって決まります。紫外線の特徴を知り、そしてUVインデックスなどを有効に活用することにより、戸外生活を楽しみながら紫外線の浴び過ぎを防ぐことができるのです。

雑誌「グローバルネット」(地球・人間環境フォーラム発行)213号(2008年8月号)より引用
目次ページの図は、「有害紫外線モニタリングネットワーク」パンフレットより