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2017年10月31日

資源循環・廃棄物分野における新たな技術展開

特集  資源循環分野における次世代基盤技術の開発

大迫 政浩

 わが国の資源循環・廃棄物分野における技術開発は、社会のニーズや国内外の政策動向などと深い関係をもちながら進められてきました。一つの新しい原理の技術を生み出すだけでなく、既存技術を組み合わせてシステム化する、あるいはローテクノロジーであっても適用先の条件に適合するようにカスタマイズして社会に実装していくケースもあります。

 表1に、1990年代からこの30年弱の技術開発の流れを、時代ごとのエポックとなるような廃棄物問題や主要政策とともに整理してみました。1990年代は、ダイオキシンや不法投棄、廃棄物量の増大による処分場ひっ迫といった問題を背景にして、適正処理や減容化技術の研究開発が主流でした。また、容器包装リサイクル法の制定により、廃プラスチックのリサイクル技術も進展しました。2000年代に入ると地球温暖化や資源枯渇の問題を背景に、廃棄物系バイオマスからのエネルギー転換技術や使用済み製品からのメタル回収技術の研究開発が脚光を浴びました。そして2010年代は、東日本大震災に伴う福島第一原発事故の発生が放射能汚染という大きな課題を投げかけました。資源循環・廃棄物分野でこれまで蓄積してきた知見をベースに、汚染廃棄物等の処理技術の研究開発が進められています。一方、原発事故も契機に再生可能エネルギーへの転換が急務となり、電力自由化の流れやFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)も後押しして、焼却施設における発電効率向上やメタン発酵と焼却処理の複合システムの開発など、エネルギー転換技術の進展がみられています。

年表(クリックすると拡大表示できます)
表1 資源循環・廃棄物分野における社会ニーズや政策動向と主な技術開発動向

 さて、私たちが研究を進めるにあたって、これからの資源循環・廃棄物分野の技術展開には持続可能な社会づくりを目指して、以下のような視点が必要なのではないでしょうか。

 まず、経済社会に蓄積された人工物が廃棄されるときに、そこからできるだけ資源を回収し、最低限の天然資源のみ使うようにする社会への転換が求められます。廃棄物として単に埋めて処分するのではなく、上流から下流までのあらゆる段階で資源価値のある金属元素等の有用物質を回収する技術やシステムの構築を進めていくべきです。

 また、低炭素社会と循環型社会の協調的な取り組みも一層重要性を増すものと思います。温暖化対策のために導入された太陽光パネル、ハイブリッド車などの新規技術から生じる新たな廃棄物・リサイクル問題も生じています。カーボンニュートラルな廃棄物や未利用のバイオマス資源のエネルギー転換も一層拡大していくものと考えられます。

 一方、新たに普及してきた新規材料(炭素繊維やナノ材料)や新規化学物質(難分解性有機汚染物質POPsなど)の処理・リサイクル時の適正管理技術は将来においても注視していくべき課題です。それらの材料や化学物質の挙動を正確に把握してリスクを評価し、適切な管理方策を提示していくことが求められます。

 資源循環研究プログラムの「次世代の3R基盤技術の開発」では、以上のような見通しのもとに新たな技術開発研究にチャレンジしており、本特集でその一端を紹介します。我々の研究が、将来の持続可能な社会の基盤となる技術システムづくりに貢献できればと考えています。

(おおさこ まさひろ、資源循環・廃棄物研究センター長)

執筆者プロフィール

筆者の大迫政浩の写真

2011年の東日本大震災・原発災害の直後から現職に就いて7年目に入りました。その間、がれきの処理など、一人一人は微力でも結集すれば成し遂げられていくことを実感しています。福島支部も動きだしました。世の中が求めるものに対して常にチャレンジできるように、研究所も「応変」していかなくてはなりません。

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