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「国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2005)」出展報告

久米 博

 平成17年2月23日(水)から25日(金)の3日間,東京ビックサイトで「国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2005)」が開催されました。この展示会に,つくばサイエンスアカデミーの呼びかけのもと,(独)国立環境研究所(国環研)は,(独)農業・生物系特定産業技術研究機構,(独)農業生物資源研究所,(独)食品総合研究所,そして筑波大学農林工学系研究室と共同して出展しました。その全体テーマは「食,農,環境-ナノテクの挑戦」であり,国環研のテーマは「ナノテクが環境を守る」としました。

 この総合展は,国内外でナノテク研究を行っている大学や研究機関,さらにはナノテクビジネスを展開しようと考えている企業が一堂に会し,それぞれの成果を発表する場として2002年から開催され,今年で4回目になります。開催規模は年々大きくなり,今回は,出展者数が350人あまり,ブースの数も650を越え,3日間合計の来場者数が39,069人に上り,それぞれ過去最大となりました。また,ナノテクビジネスフォーラム2005やナノバイオExpo,あるいは新機能性材料展などのナノテク関連会議も同時開催され,まさに総合という名に恥じない内容でした。

 国環研の展示は,研究所紹介のほか,現在ナノテク関連業務として遂行している8テーマについての概要説明をポスターによって行い,とくに下記の4テーマについては,成果発表ポスターとともに,成果の一端を実際に見てもらうための展示物を用意しました:

1)新たな炭素材料を用いた環境計測機器の開発

2)バイオナノ協調体による有害化学物質の高感度・迅速検出技術の開発

3)擬似分子鋳型を用いた環境汚染物質の選択的捕捉技術の開発

4)環境汚染修復のための新規微生物の迅速機能解析技術の開発

 国環研のナノテク関連事業はそれぞれ,小型で商用電力を必要としない環境計測機器を作ったり,身の回りの環境の安全性を簡単に判定できるモニタリングシステムの構築や,あるいは高効率・低コストな環境修復技術の開発を行いたいという環境ニーズから設定されたテーマですので,具体的な技術項目が少々見えにくくなっています。それゆえ,いわゆるナノテクに従事している人たちにとっては,いささかもどかしい内容になっていたかもしれません。しかし,1)のテーマでは,カーボンナノチューブだけが炭素系ナノ材料ではないということを示せましたし,2)では,一細胞計測やドラッグデリバリーが主流になっているバイオナノ(あるいはナノバイオ)という分野において,ヒト組織を用いることの重要性をアピールできました。また3)は,分子インプリンティング手法の新たな可能性を見いだし,実用化へのめどをたてました。さらに4)では,化学マイクロチップが化学分析だけではなく微生物生態学へも応用できるという提案を行っています。幸い,このような理解を示すたくさんの人たちの来訪があり,熱心な議論を展開することができました。一方,国環研に対する関心も高く,研究所の紹介パンフレットや環境儀は,最初持っていった数だけではまったく足りず,追加で送ってもらわなければならないほどでした。そのような状況でしたから,一般の環境問題に関する問い合わせもたびたびありました。説明には,3日間常駐の4名に加え,大学と企業の共同研究者6名にも参加してもらうことができ,各テーマについて詳しい紹介が行えました。

 このように,成功裏に終わった今回の展示でしたが,反省点もいくつかあります。まず,研究内容を示したポスターが,通常の学会レベルのものであったために,わかりにくいところが多々ありました。これについては,広報という観点からポスター作りを見直す必要があります。また,外国の研究機関と企業のブースが近くにあったせいもありますが,外国の方もしばしば訪れてくれました。日英のポスターを同時に展示するのは場所的に難しいのですが,その人たちへの説明のために,英文の研究内容紹介パンフレットを準備しておくべきでした。

 なお,われわれの共同ブースは,「環境・エネルギー部門」で「nano tech大賞2005」を受賞することができました。受賞理由は,「環境問題解決にむけてナノテクノロジーを活用した総合的な取り組みを賞す」とのことです。この受賞を励みとし,さらに環境ナノテク研究を発展させていきたいと考えております。すでに,nano tech 2006のブース予約は始まっています。

ブースの様子
参加者の写真

(くめ ひろし,化学環境研究領域)

執筆者プロフィール:

ナノテクを始めたのが,7年前。ようやく,まともに研究ができるようになりました。今回の展示会では,実用化などにはまったく関心のない研究発表が多々ありました。たいそううらやましく思う反面,いささか心配になりました。