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2016年6月30日

地球環境問題と地球環境研究センター

【地球環境研究センターの紹介】

向井 人史

 地球環境研究センターの発足は1990年で、昨年で25周年を迎えたところです。1990年という年は、当時の環境庁には地球環境部ができ、研究所は国立公害研究所から国立環境研究所と改名した年ということで、研究所は地球環境問題を含めより広く環境研究を行うことを目指していました。世界においても地球環境への危機が叫ばれる中、その年の10月に当センターの組織が立ち上がりました。この25年の間、当センターは一貫して地球環境の長期モニタリングや関連データベースの整備、国内の地球環境研究の支援などの役割を持つ環境庁(省)所属の機関として機能してきました。地球環境のモニタリングにおいては、気候変動の元となる二酸化炭素を初めとする温室効果ガスのモニタリングを国際的にも進めようと、シベリアなどを含む、日本、アジア—太平洋域での長期モニタリングを開始し、さらに成層圏オゾン観測、陸水のバックグラウンド変動観測、陸域の森林での二酸化炭素吸収量モニタリングなどを推進してきました。また、温室効果ガスの国内排出量を算定するオフィスである温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)が2002年に、国際的な二酸化炭素に関する研究プロジェクトであるグローバルカーボンプロジェクト(GCP)のつくば国際オフィスなどが2004年に設立されました。2006年には、研究所の組織再編によって、地球環境研究センターに研究部門(4研究室、現在は6研究室)が追加され、地球環境に関する研究とモニタリング等基盤機能の両方をもつセンターとして活動を開始しました。特に気候変動-地球温暖化問題に関しての研究拠点として、気候変動研究プログラムという長期的な研究の枠組みの下社会系の研究者と共に研究展開を行ってきました。その間に、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT和名「いぶき」)の打ち上げが2009年に行われ、宇宙からの観測を含む地球環境研究も進展してきました。

 本年4月に、地球環境研究センターとして4期の中長期計画が始まることになりましたが、これまでの研究活動の内容が大きく変わったわけではありません。しかしながら、時代や温暖化に係る情勢の進行に合わせ強化しなければならない活動ポイントがありました。モニタリング活動においては、温暖化による自然生態系の影響モニタリングの開始です。温暖化は今後数10年にわたり長期にわたり起こっていく現象ですが、それによる影響を科学的に長期にわたり記録する手法の開発やそのモニタリングが重要になってきます。そのため、サンゴの北上の問題や、高山帯の植生変化などのモニタリングを本格化するというのが、今後の課題の一つです。研究プログラムでは、温暖化のグローバルなリスクの予測の精度向上研究などがますます重要ですし、地球全体の生態系を含むシステムの気候変動による応答に対して、いち早くその異常を検出することが重要です。例えば、地球の気候変動により、異常気象、森林火災、砂漠化、洪水、凍土の融解、海洋大循環の変動などによる二酸化炭素吸収量の増減や地球の異常に関して早期検出を行い、我々の排出している温室効果ガスの排出量の削減をさらに加速するような警告や気象災害の変化に対する情報提供を含め、観測やモデル研究から温暖化のリスクに対する警鐘を鳴らす必要があります。特に、人類における陸の土地や水利用活動による気候変動へのフィードバックを含むモデル予測研究が必要になります。また、昨年に国際的に合意されたCOP21でのパリ協定に基づく、各国の温暖化削減計画に対して、その実行に対する検証や評価を含む観測などが今後重要になります。これらは、低炭素研究プログラムの中で総合的に行われることになります。関連して、今回の中長期計画では、当センターの組織として新たに衛星観測センターという、GOSAT、GOSAT2関連の衛星観測事業主体が発足したことや、温暖化に対する適応政策に関する事業を行う気候変動対策戦略オフィスを社会システム研究センターと共同で運用するなど組織的な強化策が含まれています。

 気候変動問題に加えて、成層圏オゾンの問題、特にオゾン層の回復と温暖化の問題は関連があるので、小さいながらプロジェクトを継続します。これらの、地球温暖化問題は国際的な問題でもありながら、国内的にどのような対策を講ずるのかという現実的な問題を突きつけられています。そのため、今後どのような研究が真に望まれるかといったことも含めて、市民や政策担当者、経済界などいろいろの立場の方々と対話しながら、研究を進めなければならないと考えています。

(むかい ひとし、地球環境研究センター長)

執筆者プロフィール

向井

ハワイのCO2観測が始まった年に生まれましたので、CO2の上昇とともに年を重ねています。昨年には、地上のCO2濃度は400 ppmを超え始めていますが、パリ協定の2℃目標には420-440 ppm程度の濃度が設定されています。今のままで行くと、あと20年程度で440 ppm以上になるのをそのまま見ているわけにはいかないと思う毎日です。

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