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2017年6月2日

温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の観測データに基づくメタンの全大気平均濃度データの公開について

(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付)

平成29年6月2日(金)
環境省 地球環境局総務課研究調査室
  室長:竹本 明生
  補佐:磯野賀瑞夫
  担当:加藤 尚
     小林 和史
国立研究開発法人 国立環境研究所(NIES)
 衛星観測センター
  GOSATプロジェクト
  観測センター長:松永 恒雄
  フェロー:横田 達也
  研究員:野田 響
  主任研究員:森野 勇・吉田 幸生・齊藤 誠
 地球環境研究センター
  大気・海洋モニタリング推進室
   室長:町田 敏暢
  地球環境データ統合解析推進室
   高度技能専門員:曾 継業
国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 GOSAT-2プロジェクトチーム
  GOSAT-2 ミッションマネージャー:中島 正勝
 

 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)は、環境省、国立環境研究所(NIES)及び宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で開発した世界初の温室効果ガス観測専用の衛星であり、平成21年1月23日の打上げ以降、現在も観測を続けています。
 二酸化炭素に次いで地球温暖化に与える影響の大きい重要な温室効果ガスであるメタンについて、「いぶき」観測データを使って、地上から上空までの「地球大気全体(全大気)」の平均濃度を算出したところ、月別平均濃度は晩秋・冬に極大・初夏に極小という季節変動をしながら年々上昇し、平成29 年1月には過去最高の約1815 ppb* を記録しました。さらに推定経年平均濃度**は平成27年頃に増加率が上昇し、平成29 年2月には過去最高の約1809 ppb に達したこともわかりました。このような地球規模のメタン濃度の動向は「いぶき」の観測によって今回世界で初めて示されたものであり、衛星による温室効果ガス観測の重要性を表すものと言えます。
 「いぶき」による月別メタンの全大気平均濃度データは、6月2日よりNIESホームページにて公開されました。

 今後も「いぶき」による全大気二酸化炭素平均濃度について定期的に公表を行っていきます。
*:微量の気体の濃度等を表す単位で、1 ppbは10億分の1の割合を意味する。
**:季節変動を取り除いた2 年程度の平均濃度値
 

○温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)とは

 「いぶき」は、環境省、NIES及びJAXAが共同で開発した、世界初の温室効果ガス観測専用の衛星です。二酸化炭素とメタンの濃度を宇宙から観測し、その吸収・排出量の推定精度を高めることを主目的にしており、さらに炭素循環の将来予測の高精度化への貢献を目指して、平成21年1月23日の打上げ以降、現在も観測を続けています。

○「いぶき」による温室効果ガス観測の特徴とその意義

 世界気象機関(WMO)を含む世界のいくつかの気象機関では、これまでも地表面の各地の観測地点や、それらのデータを用いて算出した地上での全球平均濃度を発表してきました。しかし、メタンを含む温室効果ガスは通常高度によって濃度差があるために、地上観測点だけの濃度データでは地球大気の全体濃度を表しません。これに対して「いぶき」は温室効果ガスの地表面濃度ではなく、地表面から大気上端までの大気中の温室効果ガスの総量を観測できます。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書において予測されている将来の温室効果ガス濃度は「全大気」の平均濃度であることから、今後の温室効果ガスの増加による地球温暖化のリスクを算出・予測する上では、地球全体の温室効果ガスの平均濃度の算出が重要であり、上空の大気まで含めた「全大気」の平均像を把握することが不可欠です。

○大気中のメタンについて

 メタンは二酸化炭素に次ぐ重要な温室効果ガスであり、その地球温暖化への寄与は同じ量の二酸化炭素の25倍になります。その主な発生源は農地/家畜(牛等)、廃棄物、湿地、化石燃料等、多岐にわたっています。さらに大気中では主にOHラジカルとの反応による消失もあります。
 なお地表付近のメタン濃度は18世紀頃までは700-750 ppbの範囲で比較的安定していましたが、その後人間活動によって急激に増大し、現在では1800 ppbを越えています。

○「いぶき」による「全大気」月別メタン濃度の観測成果

 そこで、平成21年5月から平成29年2月までの約8年間の「いぶき」観測データを用いて「全大気」の平均メタン濃度を算出したところ、月別濃度は北半球の初夏〜夏(5〜7月)に極小、北半球の晩秋〜冬(11〜2月)に極大となる季節変動を経ながら年々上昇し、平成29年1月には、過去最高の約1815 ppbを記録しました。また、推定経年平均濃度注1)も平成29年2月に同じく過去最高の約1809 ppbを記録しました。ただし、衛星で観測できる地域は、太陽高度が高くかつ雲のない特定の地域に限られるため、算出した「全大気」の濃度は、「いぶき」の観測データに基づきモデル的手法を用いて推定した結果です注2)。「全大気」月別平均値とそれに基づいて算出した推定経年平均濃度のグラフを下図に示します注3)。この数字は、地表面の平均濃度注4)より40 ppbほど低い結果となっていますが、この傾向はメタンが大気中で分解されるために上空ほど低濃度になることと整合的です。

○「いぶき」による観測成果の公開

 また、環境省、NIES、JAXAの3者では、今回算出した「いぶき」(GOSAT)による晴天域の観測データから解析・推定された、月別「全大気」のメタン平均濃度を公開することと致しました。この「全大気」の平均濃度の公開は、平成29年6月2日より国立環境研究所GOSATプロジェクトのWebページにおいて開始し、「いぶき」の運用が続く限り定期的に結果を更新いたします。この公開により、メタン濃度増加の事実を広く一般国民の皆様に周知し温室効果ガス排出の抑制につなげてまいります。

【公開方法】

 国立環境研究所GOSATプロジェクトの「月別メタンの全大気平均濃度 速報値」のページ(http://www.gosat.nies.go.jp/recent-global-ch4.html)において公開致します。

 今後も引き続き、「いぶき」観測データに基づく成果の公表を行うとともに、平成30年度をめどに打上げが予定されている「いぶき後継機(GOSAT-2)」による継続的な温室効果ガス観測を実施し、それらの成果を地球温暖化予測の精緻化に反映させていく予定です。

 (注1) メタン濃度は二酸化炭素同様1年の周期を持つ季節変動をしているが、地球大気の長期的な変動を論ずるには季節変動を取り除いた2年程度の平均濃度値を用いる必要がある。このため、観測濃度から平均的な季節濃度変動を取り除いた平均濃度を算出した。本文中では「推定経年平均濃度」と記しているが、科学的には経年トレンド濃度と呼ぶべきものである。この値は、その前後半年の1年間の平均値とほぼ同じ値を示す。
(注2) 今回使用した全大気平均濃度算出方法は二酸化炭素と同様である。
http://www.gosat.nies.go.jp/newpdf/whole_atm_co2_160929_JP.pdf
(注3) 平成27年1月は機器の調整のため、観測データが取得されていない。
(注4) 米国海洋大気庁によるデータが以下に公開されている。
参考URL: https://www.esrl.noaa.gov/gmd/ccgg/trends_ch4/

【本件問い合わせ先】

(「いぶき」衛星搭載センサデータ及びその解析結果について)
国立環境研究所 衛星観測センター GOSATプロジェクト
                            電話: 029-850-2966
                          携帯電話:090-4012-6701
(「いぶき」衛星、搭載センサ及び観測状況について)
宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門 GOSAT-2プロジェクトチーム
GOSAT-2ミッションマネージャー 中島 正勝 電話:050-3362-6130

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