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2016年6月30日

自然共生社会の構築に向けて

【生物・生態系環境研究センターの紹介】

山野 博哉

 生物・生態系環境研究センターは、地球上の多様な生物からなる生態系の構造と機能及び構造と機能の間の関係、人間が生態系から受ける恩恵、並びに人間活動が生物多様性・生態系に及ぼす影響の解明に関する調査・研究を様々な空間及び時間スケールで実施し、生物多様性・生態系の保全に基づく自然共生社会構築に貢献します。

 第4期中長期計画においては、これまで進めてきた基盤的研究やモニタリング(環境微生物及び絶滅危惧藻類の収集・系統保存・提供、希少な野生動物を対象とする遺伝資源保存、生物多様性・生態系情報の基盤整備、湖沼長期モニタリングの実施と国内外観測ネットワークへの観測データ提供など)を継続するとともに、大型施設(図1)を活用して、課題解決型プログラムの一つである自然共生社会研究プログラムを推進します。

図1 生物・生態系環境研究センターが管理している大型施設

図1 生物・生態系環境研究センターが管理している大型施設

 また、ゲノム環境科学研究推進室を新たに設置し、環境問題において重要な生物の全ゲノム解析、生物の同定の基礎となるDNAバーコーディング、環境中から得られるDNAから生物の出現や多様性を解析する環境DNAなどさまざまなゲノム解析技術の開発とそれによって得られたゲノム情報のデータベース化を行い、自然共生研究プログラムを支援するのみならず、所内外のゲノム関連研究を推進します。

 自然共生研究プログラムでは、以下の5つのプロジェクト(図2)を推進し、生物多様性の危機をもたらす4要因(乱獲・開発、耕作放棄、外来種・汚染、気候変動)をはじめとする各種危機要因の生物多様性への影響メカニズムの解明と影響評価・予測を行い、生物多様性の保全策と適応戦略を構築します。また、生物多様性がもたらす生態系機能とサービスの評価を行い、自然共生型流域管理など、生態系からの恵みを持続的に享受し利用する方策を提案します。

図2 自然共生研究プログラムの構成
図2 自然共生研究プログラムの構成

プロジェクト1:人間活動と生物多様性・生態系の相互作用に基づく保全戦略
 国際貿易にともなう生物多様性影響の定量化及び国内の人口減少の下での人間社会と生物多様性・生態系の相互作用を定量化する指標や手法を開発します。生物多様性への影響の最小化という観点からの国際的なスケールと国内スケールの異なるスケールで生じる生物多様性・生態系の利用と管理の問題を統合的に評価し、適切な資源利用の評価や、人口減少下における生物多様性保全に配慮した国土利用の検討に貢献します。

プロジェクト2:生物多様性に対する人為的環境撹乱要因の影響と管理戦略
 人為的環境撹乱要因と野生生物感染症の感染拡大プロセス及び生態リスクを明らかにして、これらの要因による影響の管理手法を開発するとともに、侵略的外来生物の生態影響評価及び防除手法の開発、農薬による生態影響評価及びリスク管理手法の開発、野生生物由来の新興感染症(鳥インフルエンザ・ツボカビ・ダニ感染症)の管理対策を行います。これらを通じて、環境省外来生物法に基づく特定外来生物の防除システムの構築と、ネオニコチノイド農薬の生態リスク解明及び安心・安全の情報提供、農薬取締法における生態リスク評価システムの高度化へ貢献します。また、環境省及び自治体に向けて野生生物感染症リスクからの希少種・危惧種の保全策の提言や感染症リスク管理の観点からの動物移送の管理指針の提言を行います。

プロジェクト3:広域環境変化に対する生物・生態系応答機構解明と適応戦略
 広域環境変動の中でも緊急性の高い気候変動と大気汚染について、生物・生態系の応答機構を明らかにし、今後起こると想定される環境変動シナリオに基づく生物・生態系の応答予測を行い、科学的根拠に基づいた適応戦略の構築に貢献します。

プロジェクト4:生物多様性の統合評価および保全ツール開発
 生物多様性・生態系サービスに関連する基盤情報として、生物の分布情報・生態特性・土地利用等のデータの整備・データベース化及び生物多様性・生態系サービスの評価指標の整理を行い、多面的な評価指標と保全対策の効果・コストを考慮した保全エフォートの配分・配置デザインを支援するツールを開発し提供します。生物多様性の保全と生態系サービスの持続的な利用に係わる多様なニーズを総合的・効率的に満たす保全策の探索に貢献します。

プロジェクト5:生態系機能・サービスの評価と持続的利用
 生態系のつながりと持続性、生態系サービスの観点から、生態系からの恵みを持続的に享受し利用する方策を提案します。具体的には、流域・島嶼など地域を単位とし、各地域の森林、農地、河川、湖沼、沿岸域などの構成要素の内部及び要素間の各種生態系機能・サービスを評価し、それらの維持機構や生態系サービス間のトレードオフ等の関係とそのプロセスを解明します。こうした科学的知見に基づいて、自然共生型流域及び地域管理策の立案に貢献します。

 こうした取組は、生物・生態系分野だけで達成することは不可能です。社会科学など所内外の他の研究分野の方々、行政、地方環境研究所やNGOなど様々なステークホルダーとの対話と連携を行い、科学的知見に基づいた生物多様性・生態系の保全と、自然共生社会の構築に貢献したいと考えています。

(やまの ひろや、生物・生態系環境研究センター長)

執筆者プロフィール

山野 博哉

サンゴ礁の海で泳ぐこと20年余り、生物・生態系環境研究分野のとりまとめという大役をおおせつかってしまいました。隙を見ては管理業務の海からサンゴ礁の海に出かけています。自然とふれあいたいと思う気持ちは誰にもあること。素直にそれに従えば自然共生社会がきっと築けます。

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