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2016年6月30日

「地域環境問題」を解くことを目指して

【地域環境研究センターの紹介】

今井 章雄

 私たちの身の回りでは様々な空間スケールの環境問題が起きています。霞ヶ浦では、最近、20年振りにアオコが大発生しました。アオコ問題は全国の湖沼に広がっています。アジア大陸からはPM2.5等の大気汚染物質が越境してきます。気候変動の環境に及ぼす影響も懸念されています。

 わが国では、地域環境を、国内の局所的な環境と捉えられる傾向があります。しかし、地域環境問題になると、対象とする環境問題の原因、影響あるいは対応に基づいて定義されるようです。原因が多くの国で共通的である、あるいは類似している場合、影響が国境を越える、多くの国で類似している、あるいは国際的な関心がある場合、そして対応が国境を越える、あるいは各国で協働的に実施すべき場合、環境問題は地域環境問題と定義されます。地域環境研究センターは、幅広いスケールで多様な環境を対象として地域環境問題の解決を目指して研究を行っています(図)。


図 地域環境研究センターのロードマップ

 地域環境研究センターは、日本やアジアで起きている地域環境問題に対して、なぜ問題が発生するのか、どのように発生しているのか、どのような影響を与えているのか、どうすれば解決できるのかといったことを、観測や室内実験、シミュレーションモデル、そして技術開発によって明らかにする研究を進めています。着実に科学的知見を集積して活発な情報発信を通じて、国内外の地域環境問題の解決を目指しています。

 地域環境研究センターは6つの研究室から構成されます。(1)大気環境モデリング研究室、(2)広域大気環境研究室、(3)湖沼・河川環境研究室、(4)海洋環境研究室、(5)土壌環境研究室、(6)環境技術システム研究室。大気から水や土壌、そして対策技術を展望する幅広い陣取りとなっています。研究室の展望を列記します。(1)都市-アジア-半球規模に至るマルチスケール大気汚染の解明と予測・対策・影響評価のために、大気質モデリングと排出インベントリの精度向上に関する研究を進めます。(2)アジアにおける広域越境大気汚染、国内の都市域大気汚染の解明と対策・影響評価のために、地上・リモートセンシングによる観測研究や大気汚染物質の特性を明らかにする実験研究を実施します。(3)健全な水循環や良好な水辺環境の再生・創出を目指して、生態系サービスや水環境保全に資する物質循環をはじめとする生態系機能の評価手法を構築します。(4)内湾・沿岸域を中心とする海洋環境を対象として、観測・実験・モデリングに基づいた評価・保全・管理等に関する研究を行います。(5)土壌圏における窒素等の物質循環機構の健全性の維持・保全と有害金属類・化学物質等の環境負荷低減化に関する調査・技術開発研究を行います。(6)国内外の地域を対象とした水環境保全に関わる技術的解決手段の開発と、それら技術の社会環境的側面からの評価に関する研究を行います。

 地域環境研究センターのメンバーは、当研究所の顔である課題解決型プログラムにも参画しています。安全確保研究プログラムのPM2.5など大気汚染の実態解明と毒性・健康影響に関するプロジェクトや地域の水環境保全に向けた水質改善・評価手法の開発プロジェクトにおいて積極的な取り組みを行います。加えて、自然共生研究プログラムや災害環境研究プログラムでの活躍も期待されています。

 国立環境研究所が得意とする長期モニタリングや一貫した研究アプローチをフルに活用して、着実に後世に残るような成果を積み上げて、一歩一歩、着実に目標を達成して行きます。「出る杭は打たれる」という諺がありますが、出ない杭は腐ります。出ない杭に明日はありません。アジアや世界に向かって「出る杭」として進んでゆきます。ご期待ください。

(いまい あきお、地域環境研究センター長)

執筆者プロフィール

今井 章雄

長い間研究を行ってきました。今、研究レベルは過去最高です。共同研究者に恵まれています。バラバラだったアイデアが一つに纏まってゆきます。5年位かけた方法や技術が形になってきます。とても楽しいです。ただ、時間がありません。「出る杭」が出るにも時間が必要です。

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