環境研修センターの紹介
論評
加治 隆
環境保全に関する研究と研修の緊密な連携の観点から,「公害研修所」は本年7月1日より「環境研修センター」として国立環境研究所に統合され,新たに出発することになった。
昭和48年,公害研修所は環境庁の付属機関として設置され,それまで各省庁が個別に実施していた研修のうち環境保全全般にわたる研修を当研修所が担当することになり,ここに公害研修所は環境行政に関する専門研修機関として,かつナショナル・センターとしての性格を持つことになった。
以来,行政及び分析の両分野の研修を実施し,平成元年度までにその研修修了者は延17,600人を超えるに至っている。
当研修センターは,地方公共団体において,環境行政に従事する職員を主体に,環境行政に係わりを有する国,公社,公団,事業団等の職員を対象に,
(1)環境問題をめぐる諸般の情勢の把握,関連行政との関係の理解を図るための行政研修
(2)環境汚染物質の監視,分析,測定等の業務を担当する技術職員の養成に必要な分析化学等に関する専門的知識・技法の習得を図るための分析研修
を実施している。これら研修員の約8割は,地方公共団体の職員で占められていることから完全合宿制を採用し,業務の連帯意識の育成,地域環境問題の情報の交換,経験の交流など,合宿の場を通じて相互啓発を図っているところである。
特に,環境影響評価研修,環境教育研修など,環境行政上民間企業や国民各層の理解と協力を得なくてはその実効が期待し得ないものについては,民間からの参加を得て研修を行っている。
また,開発途上国の環境保全を支持していくためには,開発途上国自身の人材を養成していくことが必要不可欠である。そのため平成2年より国際技術協力の一環として新たに研修コース[環境モニタリング(水質)研修]を設け,開発途上国からの研修員を受け入れ,研修を実施することになっている。
最近,産業構造の高度化,都市化が進行する中で,環境汚染等の種類と発生源は多様化の傾向を強めており,分析測定技術の習得も新たな対応をもとめられている。そのため平成元年度より,研修員の業務経験,技術レベル等に応じて,(1)最新の手法による機器測定分析,(2)長期間の専門課題ごとの特別分析および(3)地域的かつ今日的テーマを短期間に習得する課題分析の各研修コースを設け研修員の質的レベルの向上を図っている。
今後,地球環境問題の認識が深まるにつれ,国内の環境問題とそれに対する環境施策の方向も変わっていくであろう。それにともなって,研修需要は増大し,研修内容は多様化,専門化することが要請されるであろう。今回の組織の統合により,従来の研修機能を実質的に維持していくとともに,研究と研修との連帯を図ることによって,より一層効率的な研修を進めていくことが期待できる。その実現のためにも従来にまして大学,国立研究機関,地方公害研究所等の方々の一層の御協力と御支援をお願いする次第である。
目次
- 国立環境研究所の発足に寄せて巻頭言
- 嵐に向かって翔べ論評
- 国立環境研究所組織の紹介論評
- 新たな研究所における研究企画の役割論評
- 国立環境研究所記念式典を挙行所内開催又は当所主催のシンポジウム等の紹介、報告
- 研究支援体制の役割論評
- 地球史,人類史の中での地球環境研究 −地球環境研究グループの発足にあたって−論評
- 「自然環境保全研究分野」の研究について論評
- 「環境保全対策分野」の発足に当たって論評
- 「環境リスク評価分野」の発足に当たって論評
- 社会環境システム部とは論評
- 化学と環境と論評
- 環境健康部の役割論評
- 基盤研究部門としての大気圏環境部論評
- 水・土壌・地下環境の保全をめざして論評
- 生物関連研究の新たな体制論評
- 環境情報のセンターを目指して論評
- 地球環境研究センターの任務 —地球環境の保全に向けて全体像の構築を—論評
- 第13回 研究発表会、特別講演会報告所内開催又は当所主催のシンポジウム等の紹介、報告
- 編集後記