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「環境保全対策分野」の発足に当たって

論評

内藤 正明

 所長の紹介にあるように,地域環境に関わる総合研究部門は“保全対策”を中心とする分野と,“リスク評価”を主対象とする分野に分かれて運営されることとなっている。以下にはその内の前者について概要を紹介する。

 この分野の構成は,これまで継続(又は本年度よりスタート)の“特別研究”の中で,地域環境の保全や対策に関わる6つのテーマを集めた形となっている(組織図参照)。これらは研究を開始した時期,規模なども互いに異なり,必ずしも全体が体系的なフレームの中で明確に位置づけられたものではないが,一応今日の地域環境に関する重要性や研究所のもつポテンシャルを考慮して選ばれてきたものである。

 これら6グループの研究内容は,基本的には問題解決指向のプロジェクト研究とされているが,すべてが対策や施策立案と直結しているわけではない。その前提として不可欠な,現象の解明,その定量化,影響評価や予測などのどこかに,それぞれの主題が置かれている。

 なお,組織図中には特定課題又は手法を担当する3人の研究官が位置づけられ,そのうちの「環境統計手法研究官」は当分野の他のサブグループに対して,統計手法に関して横断的支援を行うことがその主任務とされている。

 具体的な組織運営はまだ模索段階であるが,この種のプロジェクトチームの集合体を一つの組織として運営していくには多くの難しさがある。

 まず,各チームのテーマはその担当者と共に毎年いくつかが入れ替わっていくという意味で,組織全体の恒常性はない。またそのテーマは少なくとも国内の環境問題に係わるあらゆる対象が次々と組み込まれるため,“統括研究官”なる使命はそれらの内容に深く立ち入って指導的役目を果たすことは困難である。また,新たなプロジェクトの設定は組織改変と連動する重大事項であるため,これに関する第一義的な権限は所長・副所長レベルに属する。したがって,幸いこのような大きな意思決定の責任は免れることになるが,反面主体的な体制づくりが難しいと思われる。

 次に進行管理については,研究の専門的詳細はともかくとして,ある種の方向づけやテーマ間の調整などに何らかの役割が果たせるかと思っている。

 研究運営の最終段階は成果の評価であるが,これには新たに評価委員会なる組織をつくることが予定されている。その場合,自らの立場としては評価を受ける側として弁明に努める役目を担うことになるであろうかと想定している。

 以上のようにまだ研究運営のいずれの段階にも,自分が果たすべき役割に未知の部分が多く,確たる抱負というべきものを持つに至っていない。現時点では唯一,メンバー全員が少しでもhappyな状況で研究に励んでもらえる条件づくりに努めていきたいということである。並行して,個人的には,これからの環境対策の展開方向及びその背景となる理念を,「地域環境政策懇談会(環境庁)」や「環境理念検討班(文部省科学研究費)」での活動を通じて模索してみたいと思っている。その結果をもって,本グループに対するguiding principleのようなものを示せれば……というのが夢である。

(ないとう まさあき,地域環境研究グループ統括研究官)