国立環境研究所の発足に寄せて
巻頭言
国務大臣・環境庁長官 北川 石松

国立公害研究所は、昭和49年3月、公害研究の中心的役割を担う機関として設立されました。爾来、16年を経過し、環境問題はますます複雑、多様化してまいりましたが、このことに対応して、環境保全に関する総合的な研究を進めることが極めて大切になってきました。こうして、本研究所は、本年7月1日から「国立環境研究所」として生まれ変ることになりました。
研究所は、発足以来、人員の増強、大型研究施設の整備等が行われてきましたが、さらに今回の改組により、研究部門が再編されたほか、10月には地球環境研究センターが新設されるなど、研究体制の一層の拡充が図られます。また、研究と研修の緊密な連携を図るため、公害研修所が環境研修センターとして統合されました。
今日の環境研究の課題としては、地球環境問題が大きくクローズアップされてきています。私も、本年4月、米国ワシントンで開催された「地球的規模の変動に関する科学的・経済的研究についてのホワイトハウス会議」に出席いたしましたが、その場においても、地球環境研究の重要性が再確認されたところであります。
また、国内の環境問題についても、窒素酸化物の大気汚染や生活排水問題等への対応や、自然環境の保全への取り組みへの一層の強化が求められております。
このような情勢の中で、生まれ変わった国立環境研究所が果たすべき役割は、誠に重要なものであります。
昭和48年の国立公害研究所設立準備委員会報告書では、国立公害研究所の研究分野として、「真の社会ニーズに対応した目的指向型の研究が中心となるべきである。また、未知の環境破壊に対処するためには、長期的視野に立った研究も重視する必要がある。」と述べられています。
この基本的理念は、引き続き、国立環境研究所で行われる研究に生かされなければなりません。さらに、環境研究の分野で国際的な連携を果たすことも強く求められています。
国立環境研究所の皆様が、新たな組織の中で広範な研究・研修活動を展開し、その課せられた使命を真剣に果たされることを期待してやみません。私も、その成果をどしどし活用して政策を進めていく覚悟です。頑張って下さい。
目次
- 嵐に向かって翔べ論評
- 国立環境研究所組織の紹介論評
- 新たな研究所における研究企画の役割論評
- 国立環境研究所記念式典を挙行所内開催又は当所主催のシンポジウム等の紹介、報告
- 研究支援体制の役割論評
- 地球史,人類史の中での地球環境研究 −地球環境研究グループの発足にあたって−論評
- 「自然環境保全研究分野」の研究について論評
- 「環境保全対策分野」の発足に当たって論評
- 「環境リスク評価分野」の発足に当たって論評
- 社会環境システム部とは論評
- 化学と環境と論評
- 環境健康部の役割論評
- 基盤研究部門としての大気圏環境部論評
- 水・土壌・地下環境の保全をめざして論評
- 生物関連研究の新たな体制論評
- 環境情報のセンターを目指して論評
- 地球環境研究センターの任務 —地球環境の保全に向けて全体像の構築を—論評
- 環境研修センターの紹介論評
- 第13回 研究発表会、特別講演会報告所内開催又は当所主催のシンポジウム等の紹介、報告
- 編集後記