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桜島の噴煙はどこまで届くのだろう

研究ノート

向井 人史

 桜島といえば“大根”とすぐ連想しがちであるが,ここ数年来大気汚染の分野ではその煙の行く先の方に興味が注がれている。桜島の南岳(1100m)は日本で最大のSO2の発生源と考えられ,桜島だけで日本の人為起源のSO2の発生量と匹敵するぐらいの量(約70万トン/年)を出していると言われている。したがって,日本における全体のSO2の発生量は,お隣の韓国に比べて決して少なくない。SO2による大気汚染は,大陸からやって来るばかりとは限らない。
 
 長崎県(雲仙)や阿蘇山などではその噴煙を観測したという報告がなされ,九州全域の調査では雨の中に取り込まれた例も報告されている。気象衛星NOAAから取られた画像を解析すると,九州を縦断するぐらいの距離までは煙の追跡が可能らしい。しかしその後,島根県の松江や隠岐島でもその噴煙が来ることが分かり,その飛距離は700㎞ぐらいまで伸びた。1991年度に行った国立環境研究所の調査では,沖縄でもその噴煙らしいものを検出した。仮に 700㎞という距離を飛距離と考えるならば,韓国には優に届いてしまう。

 さて,このようになると,観測された煙らしきものが本当に桜島からのものかどうかきちんと確かめる方法を確立しておかないといけない。SO2は人為起源の割合の高い物質でもあるので,その濃度だけが高くとも即座に桜島からのものだとは判断できない。噴煙中の灰の中の鉛同位体比を測定してみたが(207Pb/206Pb=0.852),日本の一般的な土壌と差がなかった。そこで次に微量元素の測定にとりかかった。セレンの濃度が高いことが報告されていたがそれだけでは不十分のため,その他の元素で特徴的なものを探してみた。その結果まだ検討は要するものの,スズ,アンチモン,タリウム,ビスマスなどが指標として使えそうであることが浮かび上がってきた。

 今後,桜島の噴煙はもっと遠くで観測されることになるに違いない。そのときまでには,桜島の噴煙と確認できる良い指標を探しておこうと思う。

(むかい ひとし,地球環境研究グループ温暖化現象解明研究チーム)