牧草地の牧養力およびその脆弱性の定量化
コラム3
環境容量とは、自然の包容力と人為的な攪乱による影響との関係(環境容量=自然の包容力/ヒトの活動の集積)を示す指標です。これまでに熱環境容量、水環境容量、生活環境容量、炭素固定容量、環境受容力、そして牧草地の牧養力など様々な指標が開発されています(大西2013)。これらの指標を活用することで、自然の包容力を定量化することにより、ライフスタイルや未来社会のあり方を探ることが可能になります。また、レーダーチャートやGISなどの図化技術を用いて比較することにより、地域が持つ様々な包容力や攪乱による影響が一目瞭然となり、政策決定者やステークホルダーに向けた情報発信が可能となります。
脆弱性とは、影響の受けやすさを示す指標であり、気候変動のみならず医療・臨床心理分野、情報セキュリティ分野など様々な分野で使用されています。環境分野の脆弱性は、気候変動や人為的攪乱の大きさや激しさ、および自然または人間社会の感受性と適応能力の関数であると定義されています。そのうち、感受性は、攪乱による影響の受けやすさを示し、一方、適応能力は、潜在的な影響の顕在化を抑制する力を意味します。
本号は、上述の複数ある環境容量のうち、牧草地の牧養力(式1)およびその脆弱性(式2)を取り上げています。
ここで、牧草地への放牧圧は「影響の受けやすさ」を、牧草地の牧養力は「適応能力」を示しています。つまり、放牧圧が小さくなるだけでなく、適応能力が大きくなればなるほど、牧養力が大きくなり、結果的に脆弱性が小さくなると考えられます。
適応策とは、脆弱性を規定する要因を解消し、適応能力を向上させる対策だと認識されています。例えば、牧草地の脆弱性を解消する対策として、人為的攪乱の緩和や家畜頭数の適正管理による放牧圧(写真4)の減少、水資源の有効利用、飼料の適時収穫と流通システムの確保による適応能力の強化などがあげられます。