研究所の研究環境
巻頭言
主任研究企画官 小澤 三宜

この7月に研究所に赴任する以前に、研究所を数度訪れたことがあるが、その時の印象は「豊かな緑に囲まれた環境の良いところ」といった程度のものであった。しかし実際に赴任し、数か月ここで過ごしてみて、地味ではあるが豊かに自然が息吹いていることが分かった。
今年の夏は全国的に蜂が大発生したそうであるが、本研究所でも企画官室のガラスにアシナガバチのこぶし大の巣が作られ、ガラス越しに蜂の行動をよく見ることができた。また、部屋の中に入ってきて飛び回る蜂と、多少の危険を感じながらも共に生活をした。
所内に3か所ある池には多くの種類のトンボが生息している。ムギワラやシオカラは珍しくなかったが、オニヤンマやギンヤンマを久しぶりに見て実に懐かしかった。アカトンボやイトトンボの類も何種類も見られる。
また、所内を歩いてみると、急に近くの茂みから数羽の鳥が飛び立って驚くが、コジュケイの親子連れである。キジや野ウサギやタヌキも目撃されている。タヌキは、ある時、排水路の格子蓋越しに数秒間ほど見合ったことがあるが、実にかわいい瞳であった。
花も豊かで、季節の移ろいとともに山百合が咲き、金木犀が香り、山茶花の花びらがこぼれる。
こうした環境は研究環境としてはいわば外的環境であり、おそらく研究所発足以来ほとんど変わらずに存在してきたであろうし、近い将来も変わらないであろう。まことに長閑で平和である。
一方、研究環境の大きな要素の一つとして「組織」があるが、本年、研究所は発足以来の大規模な改組を経験した。そうした中で、従来の大気汚染や水質汚濁の機構や影響などの研究に加え、自然環境と地球環境という新たな分野へのホットな挑戦が始まっている。
関係の皆様には、この挑戦を暖かく見守るとともに御支援を賜わりますようお願い致したい。
目次
- 国立環境研究所に広い視野での研究を望む論評
- 地球環境研究センター・その第一歩その他の報告
- 地球温暖化の影響とその対策に関する研究プロジェクト研究の紹介
- バイオテクノロジーによる大気環境指標植物の開発に関する研究プロジェクト研究の紹介
- カドミウムはいかにして毒性を発現するか経常研究の紹介
- 藻類の増殖に及ぼす銅の影響経常研究の紹介
- 第6回全国環境・公害研究所交流シンポジウムの開催について所内開催又は当所主催のシンポジウム等の紹介
- 平成2年度地球環境研究総合推進費についてその他の報告
- GFDLのスーパーコンピュータ更改海外からのたより
- ニトロアレーンの変異原性メカニズム研究ノート
- 表彰・主要人事異動
- 編集後記