ガスクロマトグラフ高分解能質量分析装置
機器紹介
伊藤 裕康
ガスクロマトグラフ高分解能質量分析装置(GC/HRMS)は,有機化合物の分子量測定,元素組成,構造解析等の定性分析とppt(pg/g)レベルの微量の定量分析が可能な装置である。本装置は,イオン化法として,最も一般的な電子衝撃法(EI)を初め,化学イオン化法(CI),電界脱離イオン化法(FD),高速原子イオン化法(FAB)を有し,気体,液体,固体試料の測定が可能である。
近年,PCB,ダイオキシン等の環境汚染が問題となっている。このような環境汚染物質や生体試料中の超微量物質の低分解能GC/MSによる定性・定量分析を行った場合,目的のピークが,妨害物質のピークと重なり分離できない。従って,妨害物質となる化合物を出来るだけ取り除くために通常クリーンアップが欠かせない。しかし,そのクリーンアップは一般に煩雑で長時間を要する等の問題点を抱えている。そこで本装置GC/HRMSを用いれば,各目的成分を精密な質量差(分子量の小数点以下の差)で妨害成分と分離できるので,超微量の物質を煩雑なクリーンアップなしで,高感度で迅速に検出することができる。特にダイオキシンの分析は,高分解能による定量が必要と言われている。
図は,GC/HRMSを用いて環境試料中のTetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)類を分析した例である。問題の2,3,7,8-TCDDの他に多くの異性体ピークが見られ,超微量定量分析を精度よく行う事が可能となった。現在,本装置では,分解能10,000でダイオキシン100fg(10兆分の1グラム)以下の測定が可能である。(分解能10,000とは,分子量Mの化合物とM+M/10,000の化合物とを分離できることを言う。)
さらにGC/HRMSは,今後環境汚染が問題となるであろう物質,或いは高分子化合物の分析に有用な装置になると考えられる。
目次
- 国立公害研究所への期待巻頭言
- 国立公害研究所の平成2年度組織改正等要求について論評
- 紫外線による植物の成長阻害特別研究活動の紹介
- 歴史から学ぶ原子スペクトル分析の展望経常研究の紹介
- なぜ意識調査をするか経常研究の紹介
- 酸性雨対策としてのSOx,NOx防除技術の最近の動向と将来展望酸性雨シリーズ(7)
- 地球温暖化対策としての環境調和型技術とその評価に関するセミナー報告その他の報告
- 「酸性雨」の研究—化学的視点からの課題酸性雨シリーズ(8)
- 平成元年度地方公共団体公害研究機関との共同研究課題その他の報告
- 気道平滑筋の神経支配について研究ノート
- Dinosaurs との遭遇海外からのたより
- 新刊・近刊紹介
- 主要人事異動
- 編集後記