国立公害研究所への期待
巻頭言
国務大臣・環境庁長官 志賀 節
近年,環境問題は,複雑かつ多様化しており,地球的規模においては,地球温暖化,成層圏オゾン層の破壊,酸性雨,熱帯林の減少,砂漠化等の地球環境問題がクローズアップされ,国際政治・経済の舞台でも非常に重要な課題になっています。わが国でも国際的地位に応じた役割を積極的に果していくことが必要となっており,9月11日〜13日に「地球環境保全に関する東京会議」を開催しました。
一方,国内の環境問題は,窒素酸化物による大気汚染,生活雑排水による閉鎖性水域の汚濁等の改善が遅れているほか,アスベストやトリクロロエチレンによる環境汚染の問題が生じており,これらに対して,新たな対応が求められています。また,自然環境の保護もますます重要となってきています。
このような背景の中で,多様な環境問題を解明し,解決するための化学的知見の重要性が高まっており,環境庁としても,環境問題に関する試験研究の推進を始め各般の取組の強化を図ることとしているところです。特に,地球環境問題に関しては,環境庁本庁における体制の強化と併せ,国立公害研究所においては,地球環境研究グループの設置,地球環境研究センターの新設等の組織の強化及びこれらに対応する国立環境研究所への名称変更を平成2年度の組織・定員として要求しています。さらに,国立公害研究所を始めとする国内外の試験研究機関による地球環境研究を推進するための経費を新たに要求するなど,各分野における地球環境問題に関連する試験研究を総合的に実施するための体制の整備を図ることとしております。
このように,国立公害研究所の役割は一段と重要になってきており,私は,この機会に改めて,研究所の皆様がさらにご努力されることを期待するとともに,私自身も地球環境及び地域環境の保全のため,また,国立公害研究所の発展のために引き続き努力してまいりたいと考えております。最後に「東京会議」への国立公害研究所の貢献に謝意を表したい。
目次
- 国立公害研究所の平成2年度組織改正等要求について論評
- 紫外線による植物の成長阻害特別研究活動の紹介
- 歴史から学ぶ原子スペクトル分析の展望経常研究の紹介
- なぜ意識調査をするか経常研究の紹介
- 酸性雨対策としてのSOx,NOx防除技術の最近の動向と将来展望酸性雨シリーズ(7)
- 地球温暖化対策としての環境調和型技術とその評価に関するセミナー報告その他の報告
- 「酸性雨」の研究—化学的視点からの課題酸性雨シリーズ(8)
- 平成元年度地方公共団体公害研究機関との共同研究課題その他の報告
- 気道平滑筋の神経支配について研究ノート
- ガスクロマトグラフ高分解能質量分析装置機器紹介
- Dinosaurs との遭遇海外からのたより
- 新刊・近刊紹介
- 主要人事異動
- 編集後記