気道平滑筋の神経支配について
研究ノート
山根 一祐
気管支喘息の発症には気道平滑筋が重要な役割を果たしているが,気道平滑筋を調節している神経には少なくとも3種類あることがわかっている。つまり副交感神経(コリン作動性神経)および交感神経(アドレナリン作動性神経)そして近年発見された「第3の神経」(非アドレナリン作動性抑制神経)である。副交感神経は末端のシナプスからアセチルコリンを,交感神経はノルアドレナリンを放出し,それぞれ気道平滑筋を収縮または弛緩する。「第3の神経」は現在未同定の物質を放出し気道平滑筋を弛緩する。
われわれは気道平滑筋の神経による調節の様子を,モルモットより摘出した気管を電気的に刺激し神経の興奮によって起きる平滑筋の反応から検討している。図は,1〜50ヘルツのパルス電流で20秒間刺激した際のモルモット気管平滑筋の反応を3種の神経に対応した成分に分離したものである。
この結果から,気道平滑筋を弛緩する作用は交感神経よりも「第3の神経」の方が強力であること,また時間経過あるいは刺激周波数との関係で比較すると3種の神経による気道平滑筋の調節にはかなり違いのあることなどが明らかになってきた。
今後,大気汚染物質が気道平滑筋の神経による調節にどのような影響を及ぼすかさらに検討して行く予定である。
(やまね かずすけ,環境生理部慢性毒性研究室)
目次
- 国立公害研究所への期待巻頭言
- 国立公害研究所の平成2年度組織改正等要求について論評
- 紫外線による植物の成長阻害特別研究活動の紹介
- 歴史から学ぶ原子スペクトル分析の展望経常研究の紹介
- なぜ意識調査をするか経常研究の紹介
- 酸性雨対策としてのSOx,NOx防除技術の最近の動向と将来展望酸性雨シリーズ(7)
- 地球温暖化対策としての環境調和型技術とその評価に関するセミナー報告その他の報告
- 「酸性雨」の研究—化学的視点からの課題酸性雨シリーズ(8)
- 平成元年度地方公共団体公害研究機関との共同研究課題その他の報告
- ガスクロマトグラフ高分解能質量分析装置機器紹介
- Dinosaurs との遭遇海外からのたより
- 新刊・近刊紹介
- 主要人事異動
- 編集後記