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国立公害研究所の平成2年度組織改正等要求について

論評

1 国立公害研究所の組織の見直しについて

 国立公害研究所は平成元年3月をもって創立15周年を迎えた。創立以来研究施設及び組織の整備を進め,昭和55年頃にはそれらも当初計画に沿って概成し,現在に至っている。この間研究所としては,研究スタッフが若いこと,組織としての実績が無かったこともあって,基礎的な研究蓄積に重点を置いて運営されてきた。しかし,地球環境研究や自然保護研究の推進に対する社会的要請の高まり等環境研究を取り巻く情勢の変化,研究スタッフの年齢上昇等を背景に近年になって研究組織の見直しを必要とする気運が高まってきた。このため当研究所としては昭和63年11月,所長の諮問機関である国立公害研究所評議委員会(座長:向坊 隆 東京大学元学長)に国立公害研究所の今後の研究体制のあり方について検討を依頼した。具体的な内容の検討は,評議委員会の下に設置された環境研究関係の学識経験者から構成される専門委員会(座長:江上信雄 前国立公害研究所長)において行われたが,所内にも副所長を座長とし,関係部長を構成員とする検討会を設けて所内意見の集約を行った。専門委員会では,内部検討会での検討結果を考慮して議論が行われ,研究所の抱える問題点の現状分析,環境研究を取り巻く状勢の変化,これらを踏まえた研究所の果たすべき役割,当面の組織のあり方と研究運営の改善方策について平成元年3月に評議委員会から,所長あて提言が行われた。なお,それと併行して,環境庁の行政部局に対しても研究所の研究体制のあり方について意見を求め,これらについても専門委員会の議論に反映された。

 評議委員会からの提言のうち,研究所の果たすべき役割とその達成のための方策に係る部分の要点は以下の通りである。
(1) 研究部門の再編成による目的指向型研究の充実
(2) 環境研究の中核的機関としての役割の発揮及び国際的な貢献の向上(国内外との研究交流の推進)
(3) 環境保全に関するデータ,試料等の収集,解析及び提供機能の充実並びに内外関係機関との情報ネットワークの整備
(4) 大型実験施設及びフィールド施設の改廃・整備の適切な推進及び共同研究の実施等を通じた所外研究者による利用の促進
(5) 基本的な運営方針とそれに基づく研究計画の策定等研究運営の改善

2 平成2年度組織改正要求について

 国立公害研究所においては,前記の評議委員会の提言を基に,地球環境問題に関する内外の急速な情勢変化等も勘案しつつ,その具体化のための検討を重ね,次のとおり平成2年度の組織改正要求を行うこととした。
(1) 国立公害研究所組織の全面改正
・研究部門を全面改組し,社会ニーズに対応した課題に関して総合的なプロジェクト研究を行う総合研究部門(3グループ)と総合研究部門の支援やシーズ創出等のための基盤研究部門(6部)に再編成する。(図参照)
・環境問題に係る情報の収集,整備及び提供業務を充実するため,環境情報センターを設置する。
・大型実験施設の管理業務を合理化し,技術部門の再編成を行う。
(2) 地球環境研究センターの設置
・環境庁計上の地球環境研究推進費(平成2年度12億円を新規要求)により地球環境研究を行う研究者の交流の場を提供し,研究の総合的推進を図る。
・地球環境研究等に資するため,アジア太平洋地域を中心としたモニタリングを実施する。
・スーパーコンピュータ,地球環境データベースの整備等地球環境に係る研究者に対する研究支援手段を提供する。
・以上の業務の充実のため,所要の組織を整備する。(平成2年度地球環境研究センター予算としては,4億8百万円を新規要求)
(3) 地球環境研究,自然保護研究への取組み強化を機に国立公害研究所を国立環境研究所と名称変更する。

3 今後の展望

 組織改正及び予算の最終的な姿は今後の政府部内での調整等を待たねばならないが,当研究所としては,既に述べた研究体制のあり方の方向に沿って内部的な詰めを実施しており,地方公害研究所との共同研究の推進に見られるように一部の施策については既に実施に移しているものもある。また,国際研究交流についても環境問題の国際化を背景に,米国,西独,フランス,イギリス,ポーランド,中国,韓国,タイ等その範囲はますます広がりつつある。これらの国際研究交流に対しても既に地方公害研究所,大学等の参画を仰いでおり,今後ともこれらの交流の進展にあわせて環境研究に携わる研究者の幅広い連携が必要となってくることは論を待たない。

 来年度に向けた組織改正の最大の眼目は,国立公害研究所が文字どおり国際的にも国内的にも環境研究のセンターとしての機能を最大限発揮することであり,そのために研究所としても最大限の努力を傾注しなければならないと考えている。関係者の方々にも今後の当研究所の活動に対するご理解とご支援をお願いしたい。

(うんの ひであき,研究企画官)

図  基礎研究部門と総合研究部門との関係