衛星画像を用いた土地被覆分類
研究ノート
飯倉 善和
衛星画像(多重分光画像)を用いた土地被覆分類は,対象(畑地,裸地,水域など)の分光濃度特性が異なることを利用するもので,コスト的な利点などから土地利用図や植生図の最新の情報源として航空写真に変わる役割が期待されている。一般的には,現地調査などにより得られた土地被覆をトレーニングデータとして予め対象の分光濃度特性と出現率(事前確率)を推定し,それらと画素の分光濃度との統計的な類似性(事後確率)を利用した,いわゆる教師付き分類法が利用される。しかし,この方法に対して次のような問題点が指摘できる。
- 画像データは空間的な特性を持つため,単一の出現率を仮定することができない。
- トレーニングデータの選択が限られた領域において行われるため,推定した濃度分布に偏りが生じる。
- 衛星画像のデータ量は膨大であり,分類の精度ばかりではなく,その処理時間が問題となる。
- 画素内に複数のカテゴリーが混在していたり,ノイズに汚されている場合,濃度特性だけでは適切な分類が行われない。
現在,これらの問題の理論的な検討を行うと共に,その成果を踏まえた実用的な衛星画像データ処理システムの開発を行っている。例えば第1の問題に対しては,分類の精度が出現率に影響されることの少ない分類方法(最良線形判別関数)を提案するとともに,その特徴を生かした効率的な分類プログラムを開発した。また,図1は第4の問題の例として,画素毎に分類を行ったものであるが,斑点状のノイズのために分類結果が鮮明ではない。これに対して図2は,空間的に均一性の高い領域をまとめて分類した結果である。図の左下に蛇行している川がはっきりと識別できる。
今後衛星画像の空間分解能がますます向上すると考えられるが,その意味でも空間的な情報の利用は重要な課題である。
(いいくら よしかず,総合解析部総合評価研究室)