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地方公害研究所の国際化

巻頭言

全国公害研究所協議会長代行・福岡県衛生公害センター所長 高橋 克巳

たかはしかつみの写真

 昭和40年代当時,災害的とも言うべき激甚産業公害対策に,国を挙げて悪戦苦闘していた我が国に,「公害問題は資本主義国に特有の社会現象である」とか,「せめて公害に悩む工業国に早くなりたい」等の皮肉,羨望,批判が諸外国から寄せられたものである。現在,我が国ではこれらの言葉は,既に忘れ去られて久しい。しかし,因果は巡ると言うか,今日,社会主義国,発展途上国を問わず,広く公害克服は単に一国の工業化過程に不可避な課題であるに留まらず,文明論的な視点からも,人類が直面している共通,普遍的な課題である。この認識は,最近,俄に国際的に提起されている地球環境に係る危機的な諸問題に象徴されている。この意味から,世界で最も先進的に辛酸をなめた公害克服体験国である我が国の公害対策ノウハウは,国際的に注目され,積極的な寄与が求められているが,その重要な一翼を担うものに地方公害研究所の存在がある。

 過去20余年,我が国の環境保全行政において,優れて地域特性に依存する複雑,多様な公害現象に対処する環境科学,技術の地方拠点として,地方公害研究所はその監視,調査,研究,指導等に着実な成果を挙げている。この間,実務的な経験と技術の豊富な蓄積を逐げ,現在,全都道府県,政令指定都市等に設置された64機関に所属する約2,300名の専門技術者集団を形成している。その創立と発展の歴史を辿ると,揺藍期,少青年期を経て,現在は,まさに心,技,体の充実した壮年期にあると言えよう。地方公害研究所の国内的な点としての個々の活動は,既に,機関の相互の連繋,或いは国立公害研究所との共同研究により,点→線→面へと広範な研究ネットワークを構築しており,更に今後,国際的な方向へと指向されるであろう。また,開発途上国への公害防止技術の提供,協力は,国際協力事業団(JICA)を通じての専門家派遣,或いは研究生の受け入れの両面によって推進されている。

 地方公害研究所の国際化は,時代的な国家要請であり,今後,一層の進展を期している処である。

 関係各位の御指導と御鞭撻を切にお願いする次第である。