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2016年6月30日

環境と社会の調和する未来をめざして

【社会環境システム研究センターの紹介】

藤田 壮

 社会環境システム研究センターでは、人間の社会・経済の活動と環境との関係に焦点をあて、環境と経済が調和する持続可能な社会の構築にむけて、自然科学と工学に加えて社会科学を含む分野横断的な研究を進めています。これまでも低炭素社会を実現するためのシナリオ研究や、環境と経済が調和する中で地域の暮らしを支える環境都市システム研究、持続可能な社会と地域の実現を目指す持続可能社会研究などとともに、災害復旧から新たな地域創生へのスムーズな転換を実現する環境創生研究などを進めてきました。

 2016年4月から、低炭素と資源循環、自然共生と安全安心な地域という、さまざまな環境の価値を経済と社会の価値に束ねて、現在の快適さと未来の健やかさが共存できる社会の実現に向けての理論と手法を開発する「統合研究プログラム」に取り組んでいます。所内の各センター、所外の研究機関、行政、企業、市民NPOの皆さんとの連携で、日本やアジアの政府と連携し、研究を積極的に推進します。低炭素社会、循環型社会に加えて自然と共生する社会を実現することにより、環境がもたらす将来に至る恵みを現代社会で準備することによって、さまざまな環境の便益を総合的な社会政策に内生化する社会の仕組みや技術システムを明らかにすることを目指します。

 統合研究プログラムは、各センターを連携させる中心的な役割を目指します。具体的には、現在の産業社会を持続可能な社会へ転換することを目指して、低炭素・資源循環・自然共生の各領域の取組が社会と環境へ及ぼす影響を、国土及び地域、都市のスケールで相互に整合的な分析ができるマルチスケールのモデル群を開発します。地域、都市の包括的な環境社会への実現方策を検討するともに、社会実装による効果検証の視点も加味した総合的な戦略づくりを実施します。気候変動の緩和・適応をはじめ、資源循環や生物多様性・生態系保全を含めた環境問題解決のための施策の提案・効果分析を行ないます。加えて、地域活性化・回復などの環境、経済及び社会の観点から、その効果について総合的・統合的に定量的評価を行ない、国から地域・都市まで適用可能な汎用性を持ち、異なる地域スケールの分析を相互に整合的に実施できるモデル群の開発を目指します。開発したモデル群を用いて適応策と緩和策をはじめとした様々な環境問題の解決策を合わせた統合的な施策評価と実施計画の立案検討のための枠組みを構築するとともに、日本やアジアへ適用して社会実装も目指した科学的知見に基づく持続可能な社会実現への政策立案とその実現を支援することを検討します。また、エネルギー消費のような社会経済活動に加えて、制度・政策の実現を支えて、伴う実際の効果を検証可能な社会モニタリングシステムを構築し、開発した枠組みの有効性とそれを用いて立案・実施した政策の効果検証を実施するとともに、モデル群へフィードバックしてその高度化を進めます。

 また、地球環境研究センターと連携する「低炭素研究プログラム」では、環境と社会、経済を解析する統合評価モデルを開発・活用し、将来の地球温暖化の影響と対策を明らかにする研究を進めます。IPCCをはじめとする気候変動に関する国際交渉の支援や、その分析の研究も続けています。さらに、都市や地域の研究機関、行政、企業等と連携し、環境資源や社会ストックなどの特性を解析して、目指すべき環境社会の将来像とともにそこへの道筋を具体的に描き、社会への実装に貢献する研究に取り組んでいます。

 この4月に発足した福島支部との研究連携を強化して、震災からの復旧から復興、そして新たな環境創生のステージを目指して、地域の環境資源を活用したまちづくり、地域づくりを産官学連携で実現する研究にも引き続き取り組みます。自治体、企業、住民の将来ビジョン構築やそこに至る技術選定と施策の策定に有用な情報を提供するため、福島県内の環境・社会情報、および環境技術・社会技術等に関する情報のデータベース(地域データベース)とそれを用いた地域診断システムの構築に取り組みます。環境成長の目標の達成に加え、高齢化や人口維持・産業振興等の社会面の目標を達成するための技術・施策を分析するモデルの開発を進めて、その政策貢献を通じての実用性と信頼性の改善を進めます。地域統合評価モデルを福島県と県内の地域、自治体単位で適用することで福島支部との共同研究を進めます。福島で実現する環境成長の取り組みが、環境研究と地方創生の橋渡しとなって、あらたな環境地域研究を形成することを目指しています。

 加えて、人々の意識やライフスタイル、環境行政・法制度、環境経済学に関する研究も進めています。いろいろな方々と協働する研究をこれからも積極的に進めてまいります。環境研究と社会実装から新たな環境の理論と実践を結び付ける研究の中核的機能を担っていきたいと願っています。

(ふじた つよし、社会環境システム研究センター長)

執筆者プロフィール

藤田 壮

建設会社、海外留学、コンサルタント、大学を経て、環境を研究することを曲がりなりにも本職として25年を迎えようとする年になり、体力知力の衰えを感じつつ、いまさらですが環境研究の難しさと面白さ、躍動感を実感する日々を送っています。

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