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国立環境研究所の存在

【巻頭言】

理事 鏑木 儀郎

 今年の4月1日から国立環境研究所(国環研)の理事を勤めています。

 国環研の研究対象は環境に関する非常に幅広い分野をカバーしています。我が国の環境に関する研究の中核であるばかりか世界的にも評価されてさらに活躍の場を広げつつあります。そして数多くの研究者が国や自治体の審議会や委員会、テレビ番組などのいろいろな場面で表に出て、自身や国環研での研究成果、知識・経験に基づく科学的な見解をわかりやすく伝えて社会に貢献しています。

 国環研は多くの研究者の歴史と研究成果が蓄積されている宝の山ですから、毎日毎日、多角的でかつ深い様々な知識と意見を求めて様々な分野の多くの人々が訪れてくる場所でもあります。

 実はかく言う私自身も行政施策の展開に必要な知恵と事実を求めて、また審議会等での協力を得るために過去何度も国環研に来たことがあります。

 国環研のOBの方々の中にもこれまで相当にお世話になった先生方がいらっしゃいます。ともに政策実現の苦労と喜びを分かち合えた方々です。

 今国環研に集っている人材がそれぞれ取り組んでいる幅広い分野にわたる多数のテーマは、そのターゲットに短・中・長期の差こそあれ、自らの研究関心だけではなく社会のニーズに応えるべく企画されました。国民の税金が研究所の活動に沢山投入されているのですから当然のことです。

 では国民が当研究所に求めるものは何なのか。これは単純ではなく多様だと思います。例えば地球環境、循環型社会など当研究所のテーマに関するキーワードの一覧を示したら、きっと、あれもそれもこれもみんな必要だという回答を頂けると思います。

 研究テーマがみんな必要なものばかりだとしたら、その研究成果やその成果によって得られる社会への貢献の内容についてわかりやすく人に伝えることによって、より一層の応援、支援が得られやすくなりますし、ますます研究成果が広く活用されるようになると思います。

 IT技術が進んだ今では、研究内容を、わかりやすくて人目を引くコンピューターグラフィックなどを活用して表現することができます。そこで表現されるものは、例えば環境モニタリングを長期的にたゆまぬ努力で継続したことでわかった研究成果であったり、コンピューターの中に複雑なモデルを組み込んで膨大なデータで地球の温暖化とその影響を解析した結果であったり、社会の中で循環する資源・エネルギーや廃棄物のフローを視覚的に示したものであったり、人工衛星の画像を解析して処理された人が容易には踏み込めないような場所の生態のようすであったり、多くの方々に訴える内容があるものになります。

 そのような様々な研究を行っている国環研では、全ての研究活動による成果を社会に還元しようと、毎年夏に全所をあげた一般公開を行うことなどにより、多くの方々に直接訴えかけることもしています。

 専門家だけではなく、より多くの方々に国環研の存在と活動内容が意識されるようになれば、個々の研究者の活動も一層やりやすくなり、そのことによってより多くの研究成果があがるようになり、その結果として現在と将来の環境をより良くすることができて社会に大きな貢献ができるという好循環が期待できます。

 私も、国環研がその社会的な役割を確固として果たし続け、さらに一層向上させていけるようにと考えながら取り組んでいきたいと思っています。

 

(かぶらぎ よしろう、企画・総務担当理事)

執筆者プロフィール

鏑木 儀郎

 大通りの店には歩道か裏通りからしか入れない、車交通と人の動線をわける大規模な歩道橋が多い、ロンドンの大公園を思わせる立派な洞峰公園など、新しい街造りの成果集「つくば」を楽しんでいます。