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アジア水環境研究の新しい展開へ向けて −長江水利委員会との新たな共同研究の開始−

【トピック】

王 勤学

 第2期中期計画ではアジアにおける持続可能な環境管理を目指した「アジア自然共生研究プログラム」が開始されました。本プログラムは三つの中核研究プロジェクトより構成され,そのうちの一つである「東アジアの水・物質循環評価システムの開発」プロジェクトの一環として長江流域圏のマネジメントに関する日中共同研究が開始されました。本中核研究プロジェクトでは,まず,長江,黄河を中心とした東アジア地域の流域圏について,日中の共同研究による水環境に関する科学的知見の集積と持続的な水環境管理に必要なツールの確立および観測とモデルの組合せによる水・物質循環評価システムの開発を目的としています。さらに,都市・流域圏における環境管理の技術インベントリを整備し,持続性評価の指標体系を構築することにより,技術導入の効果算定にもとづく適切な技術システムと政策プログラムの設計を含む流域の長期シナリオ・ビジョンの構築の方法論開発を行うこととしています。この目的を達成するために,本プロジェクトでは,これまで長年にわたる日中共同研究の成果を踏まえ,相互に信頼できる良好なパートナーシップの構築を通じて,新たな研究展開とその成果のアジア地域への還元を目指し,長江の管理と研究をリードする中国長江水利委員会(CWRC)をはじめとする中国の研究者・行政担当者との連携をさらに強化し,研究を推進しています。

 2006年1月には蔡其華主任をはじめとする長江水利委員会主要メンバーのNIES訪問を受け,「水環境管理及び整備技術の共同研究に関する協議書」に署名し,これまで築いてきたお互いの良好なパートナーシップを高く評価し,今後もこの分野での共同研究,研究協力を一層強化していくことを相互に約束しました。このような経緯を受けて,NIESでは大塚理事長を団長とする一行9人が長江水利委員会の招へいにより2006年6月20~25日にかけて共同研究の対象地域を訪問し,今後の研究の着実な進展を目指した現地調査を行いました。また,中国側専門家を交えて「第一回日中流域水環境技術検討会」を開催し,流域管理に関する活発な情報および意見交換を行いました。このような交流を踏まえて双方は,流域水環境分野での共同研究,研究協力を一層強化していくことについて,合意文書をまとめ,理事長による署名と文書交換が成されました。なお,具体的な研究内容では流域データベースの整備,現地モニタリングシステムの開発,流域における水・エネルギー・物質循環効率を高める経済と環境の好循環を実現する産業共生技術評価システムの開発について特に集中的な意見交換が行われました。このような意見交換を踏まえて,双方で共同研究の情報発信,研究交流に継続的に努力するとともに,南水北調プロジェクトをはじめとする流域圏のマネジメントに関する重要かつ緊急の政策課題について共同研究を推進することとしました。

 さらに,今後の交流を円滑に行うために専門家を相互に派遣すること,具体的な研究課題・期間を詳細に議論するためのワーキンググループを早急に招集することなどが取り決められました。NIESでは共同研究を推進するために,年内に第1回ワーキンググループ会議を開催し,来年6月を目処に日本で「第二回日中流域水環境技術交流会」開催するなど具体的な交流を進めていきます。

写真1 武漢市郊外の分散型生活排水処理モデル施設見学の様子(2006年6月)
写真1 武漢市郊外の分散型生活排水処理モデル施設見学の様子(2006年6月)
写真2 「第一回日中流域水環境技術検討会」議事録の調印式(左が大塚理事長,右が長江水利委員会長江水資源保護科学研究所の雷所長)(2006年6月,長江水利委員会提供)
写真2 「第一回日中流域水環境技術検討会」議事録の調印式(左が大塚理事長,右が長江水利委員会長江水資源保護科学研究所の雷所長)(2006年6月,長江水利委員会提供)

  今回の交流活動は日中共同で行う流域水環境研究の新たな展開として中国で大きな注目を集め,中国の主要なマスメディアを含む情報発信サイトで取り上げられました。このように今回の訪問は単なる研究交流に止まらず,相手の要求が何であるのか,我々が提供できることは何なのか,といったポイントについて双方の認識をさらに深めることができた点で意義深いものとなりました。

 (おう きんがく,アジア自然共生研究グループ アジア水環境研究室長)

執筆者プロフィール:

平成18年4月から,アジア水環境研究室室長及び東アジアの水・物質循環評価システムの開発という中核プロジェクトリーダーに任命されました。皆の知恵を学びながら,文化的,伝統的な壁を乗り越え,皆と仲良くいい研究成果を出すために全力投球していきたいと思っています。