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監事 貞國 鎮

 ライブドア事件で改めて考えさせられるように,営利企業は利益を追求することを最大の目的とするのみで許されるものではありません。村上ファンド事件で問われているように,企業は株主だけのものでもありません。企業は多くの利害関係者(株主・従業員・国や地域社会等)の監視にさらされています。利害関係者に貢献する優良企業であることは,長期的にも,結果的に最大の利益を確保できることになります。企業の社会的責任(CSR—CorporateSocial Responsibility)が改めて問われているのです。特に,環境問題に積極的に取り組むことは,CSRの中心的な要素の一つです。企業が積極的に環境問題に取り組むことが,結果的に優良企業として社会から認められることになります。環境問題を無視あるいは軽視することは,「自分で自分の首を絞めることになる」と理解しなければならないでしょう。

 利害関係者が,企業の環境問題への取り組みを判断するには,環境報告書を閲覧すれば良い訳ですが,全ての企業がこの環境報告書を作成している訳ではありません。EUでは2003年6月「会計法現代化指令(2003/51/EC)」を採択し,大・中規模の会社に対して,環境情報や従業員情報を含む,非財務的な主要業績指標を年次報告として開示するよう義務づけました。我が国では「環境配慮促進法」(2005年4月1日から施行)が制定され,独立行政法人等(特定事業者)に環境報告書の作成・公表を義務づけ,大企業にも努力義務を課しています。特定事業者以外は,努力義務ですが,いずれは義務化されると思われます。

 次の課題として,いかにこの環境報告書の信頼性を確保するかと言う問題があります。企業等の公表する財務諸表や計算書類は,一般に公正と認められた企業会計原則・監査基準等の諸則や法規があります。財務諸表等の信頼性を確保するための基準がありますから,信頼性の確保に貢献すべき監査人は,これらの基準に照らして,自信を持って積極的形式での意見を表明できることになります。「計算書類は法令及び定款に従い会社の財産及び損益の状況を正しく示しているものと認める」と監査意見を表明できるのです。残念ながら環境報告書には,確たる基準がありません。従って消極的な意見表明とならざるを得ないわけです。環境報告書の監査人は独自の基準によって監査を行い,その結果を報告することになります。その結果「問題は認められませんでした」と言う消極的な意見にならざるを得ないのです。環境報告書に信頼性を付与し,他の報告書と比較検討できるよう,克服すべき種々の困難な問題もあると思いますが,環境報告書の基準制定が急がれます。われわれNIESがこの問題に貢献できれば素晴らしいことだと思います。

 (さだくに まもる)

執筆者プロフィール:

昨年四月,小池環境大臣から監事を命じられ一年半近くとなります。毎月開催の第一木曜日の理事会には,東池袋から自家用車でお伺いしています。時々スピード違反で捕まったりもしますが,自分では運転に自信があるつもりです。月曜日の早朝は合気道の稽古,火曜日は大学院の講師,その合間に公認会計士の業務を行っています。今年から統計上は老人に分類されることになりましたが,まだまだ成りきっていないのが現状です。