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2015年12月28日

エピジェネティクス

コラム2

エピジェネティクス

 「エピジェネティクス」という言葉は、個体発生に関する説の1つである「エピジェネシス(後成説)」と、ジェネティクス(遺伝学)」を起源としています。「エピ」はギリシャ語で「後で」や「上に」という意味の接頭語であるため、「エピジェネティクス」は「遺伝子の上にさらに修飾が入ったもの」などという概念です。ジェネティクスでは、DNAを構成するA(アデニン)、 T(チミン)、 G(グアニン)、 C(シトシン)という4種類の塩基の並び方、すなわち塩基配列を遺伝情報の基本とします。一方エピジェネティクスでは、DNAの塩基配列は変えずに、あとから加わった修飾が遺伝子機能を調節する制御機構となります。

 エピジェネティクスは、個体発生や細胞分化の過程をはじめとして、重要な生命現象における必須のメカニズムです。エピジェネティクスの主要な制御機構は、DNAメチル化とヒストン修飾です。これらのエピジェネティックな 修飾が、何らかの原因で変化すると、さまざまな疾病につながることがわかってきています。

(1)DNAメチル化:4つの塩基の組み合わせの中で、シトシンの次にグアニンが続く配列のシトシンにメチル基(-CH3)が付加され、5メチルシトシンになることをDNAメチル化といいます。哺乳類では3種類のDNAメチル化酵素と3種類のDNA脱メチル化酵素が見つかっています。DNA配列のなかには、CG配列が集まって密に存在する領域(CpG island)があり、CpG island のDNAメチル化は、遺伝子が働きはじめる過程に深く関与することがわかっています。

(2)ヒストン修飾:ゲノムDNAはヒストンというタンパク質に巻き付いた状態で核内に収納されています(この構造をクロマチンといいます)。ヒストンがアセチル化、メチル化、リン酸化やユビキチン化などの修飾を受けると、クロマチン構造が変化し、DNAと転写因子などの核内因子との接近のしやすさが変化し、遺伝子の発現制御が可能となります。アセチル化は遺伝子発現の活性化に関与します。またメチル化については、メチル化を受けるリジンの位置が遺伝子の発現制御に重要であることが明らかになっています。ヒストンのアセチル化酵素や脱アセチル化酵素、特定の位置のヒストンメチル化酵素や脱メチル化酵素が同定されています。

図3:遺伝子発現調節に関わるエピジェネティック修飾変化の模式図
上:DNA の高メチル化や抑制型ヒストン修飾の増加によりクロマチン構造が凝集すると、遺伝子発現の活性が抑制されます。
下:DNA の低メチル化や活性化型ヒストン修飾の増加によりクロマチン構造が緩むと遺伝子発現が活性化されます。

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