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外国人研究者から見た日本,つくば,国立公害研究所

その他の報告

 最初に,国公研ニュースに自己紹介の機会を与えられたことを感謝します。この文章が日本語に翻訳される機会をとらえて私がこれまでにやってきた研究について述べたいと思います。

 英国には4つの州がありますが,私はその1つウェールズの首都であるカーディフで生まれました。1983年にカーディフ大学で微生物学専攻の学士となりました。続いて,化学専攻の博士となるために研究を開始しましたが,これは私が化学と生物学の両学問領域の間に介在すると感じているギャップについて研究し,それを利用するために必要な分析学的技術を開発することを目的としたためです。

 私が国立公害研究所のことを初めて知ったのは,鈴木博士の数多くの研究論文を通してでした。高速液体クロマトグラフィー-元素分析に関する鈴木博士の研究は,当時,博士論文の研究としてロンドン大学バークベック校で実施していた私の研究と一致するものでした。私が,カドミウム,亜鉛や銅と細菌の相互作用について研究していたとき用いていました分析手段の多くは,すでに鈴木博士が開発しておりました。高速液クロー発光分光法/原子吸光法の応用については鈴木博士とその研究グループが世界をリードしていることは明らかでした。そこで手紙を書き鈴木博士の研究に興味を持っていることを伝えました。その当時,日本人以外の外国人が国立研究機関で研究するための機会は限られていたため,科学技術庁奨学制度(STAフェローシップ)ができるまで,私は国立公害研究所で研究できる機会を待たなければなりませんでした。

 1988年に「生物における液性成分や微生物系における金属イオンの分布に関する研究」と題した私の博士論文を完成させると同時に,ベルリンのフライエ大学でポストドクターとして働き,大腸菌中に存在するクローン化した水銀還元酵素の検出に関するアッセイ法を研究しました。英国王立協会が私をSTAフェローとして採用し,ベルリンの仕事を終わらせた後に日本にやってきました。1989年3月に来日し,メタロチオネインの代謝に関して,種々の観点から基礎と応用の研究を行っています。

Michael H. Rayner
(環境保健部 鈴木和夫 訳)

 私はトゥルーディ・マンスフィールドです。この3月にイギリスから日本に来ました。科学技術庁の制度で2年間の滞在予定で,国公研の総合解析部で仕事をしています。今,日本で興味あるテーマは,
1)ディーゼルエンジンの排ガスによる建物の汚れの除去費用の日本での見解
2)温室効果によるさまざまな産業への影響の予測
3)公的な環境教育と啓蒙の方法
です。特にこの最後の項目については,“Think globally and act locally”というスローガンに共鳴していること,特に公共に役立つ研究を行いたいということ,より環境に負荷の少ないライフスタイルを追求したいということから興味を持っていることです。

 同時に私は長く暮らしてきたロンドンでの生活と同じようにつくばでの生活を大変に楽しんでいます。つくばの大気は大変にきれいですし,オープンスペースも大変にいいと思います。ここで7ヵ月経ちましたが,私はいつもいまだに東京に出かけたときその人口密度と建物の混み具合には驚きます。全くそれは新参者にとってはおそるべきものですし,また印象深い光景です。いうまでもなく,東京に1日行った後,非常によく計画された自転車用道路などが整備されたつくばに戻るとうれしくなります。私はまた日本の街路が安全で安心できることについて,楽しんでいるし有難く思っています。

 また,言葉の障壁等によって私がどうしたらよいかわからずに困ったり落ち込んでいたりしているときに,多くの日本人が私に対して見せてくれた親切についても同様です。しかし,日本の人々は英語を練習するときや,私と日本語で話そうとするとき(ゆっくりと)にそんなに恥ずかしがらないでほしいと思っていることも付け加えておきます。日本人は自分達の英語能力について謙遜し過ぎると思いますし,だから,気後れしないで“ガイジン”と話そうとしてほしいと思います。付け加えて言えば,私が経験した範囲では日本人の英語は非常に分かりやすいですし,だから,“ガイジン”と話すことを避けたりしないでください。私たちは“ガイジン”だけで交遊しようとは思っていません。トライして下さい。

Trudie Mansfield
(総合解析部 青柳みどり 訳)

 私は,今年の4月から2年間,科学技術庁の招聘職員として,環境保健部の遠山千春先生のところで研究に従事しています。日常生活は,いろいろな面で来日前まで住んでいたスコットランドとは異なりますが,今,私は生活をとてつもなく楽しんでいるといっても過言ではありません。

 私には,妻(Bushra)と3歳の娘(Farah)そして1歳の息子(Alyas)がいますが,彼らは,来年の1月に来日する予定です。

 公害研における私の研究は,カドミウム,水銀,銀化合物などの毒性の生体影響の評価を,これらの金属イオンを結合するタンパクであるメタロチオネインの面から解析することです。メタロチオネインは,これら重金属の解毒作用や,亜鉛,銅などの生体内における代謝に重要な役割を果たしていることが知られています。私達は,メタロチオネインのこうした機能のみならず,生理的状態における細胞の増殖・分化における生理的意義にも関心をもっています。研究は順調に進んでおり,きっとかなりの成果が出るだろうと思います。私は,公害研にとてもすばらしい研究施設が整っていることに感銘を受けました。設備のうちのある種のものは,イギリスでは,容易には購入できないものです。

 最後に,奨学金を供与してくださった科学技術庁と科学技術推進センター,ならびに,公害研への受け入れを認めて下さった不破所長,そして,今日まで,日本における滞在を有意義なものにしてくださった遠山先生はじめ研究所のスタッフの方々に厚くお礼申し上げます。

Abdul Ghaffar
(環境保健部 遠山千春 訳)