大気汚染のモニタリング装置
機器紹介
宇野 由利子・溝口 次夫
全国の地方公共団体が大気汚染防止法に規定する大気の汚染の状況の常時監視と光化学オキシダントなどの緊急時措置を迅速,的確に行うために大気汚染のモニタリングステーションを設置している。モニタリングデータは環境基準の適合状況の評価,地域の大気汚染防止計画の策定などに活用されている。従って,モニタリング値の信頼性を確保することは極めて重要である。
国立公害研究所の大気モニター棟では全国のモニタリングステーションで使用されている公定法に基づく,各汚染物質の自動測定機を装備しているが,SO2,NOx,オキシダントについてはそれ以外の測定法に基づく自動測定機も利用している。ここではもちろん筑波の大気汚染の状況をモニタリングしているが,それよりもむしろ次の目的に重点を置いている。全国で稼動している各モニタリング装置の測定精度,感度,正確さ,安定性,妨害要因などを明らかにするための実験研究を行い,各自動測定機の特徴,問題点などを正確に把握し,全国でモニタリング装置を使用されている方々からの問い合わせに的確に応えられるように努力している。最近は近隣諸外国からの問い合わせも多くなっている。
大気モニター棟における実験研究でこれまでに得られている主な成果に次のようなものがある。
- 中性ヨウ化カリウム法による光化学オキシダント自動測定機の温度影響の定量化
- 紫外線蛍光法による二酸化いおう自動測定機の励起光量の減衰の解明とその補償回路の開発
- 光散乱法,β線吸収法およびピエゾバランス法による浮遊粒子状物質自動測定機の特徴と問題点の解析
このうち1)の成果の要点を紹介する。中性ヨウ化カリウム(KI)法による光化学オキシダント自動測定機(オキシダント計)はその指示値が吸収液の温度の影響を受ける。影響の大きさは吸収液のKI濃度にも依存する。その原因は主としてオキシダントによって遊離したヨウ素が揮散するためである。温度影響の大きさ,KI濃度との関係などを実験的に検討した。室温(吸収液温度)とオキシダント計の指示値との関係についての実験のうち,オゾン濃度200ppb,入口ガス温度25℃の場合の結果を図に示す。実験には機種の異なる4台のオキシダント計を用いた。室温1℃について約1%の指示値の変動が認められている。オキシダント計は20℃で校正されるので,室温の変動には十分注意する必要がある。