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2012年4月27日

愛知目標(愛知ターゲット)

●特集 生物多様性● 【環境問題基礎知識】

角谷 拓

 2010年、愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)において、生物多様性条約戦略計画2010-2020(通称:愛知目標・愛知ターゲット)が採択されました。

 愛知目標では、生物多様性条約加盟国(192カ国およびEU)の総意として、2050年までに人と自然が共存する世界を実現するために、2020年までに生物多様性の損失を止めるための緊急かつ効果的な行動をとることが使命として掲げられました。そして、2020年までに達成すべき具体的な目標として5つの戦略目標(戦略目標A~E)の下に20個の個別目標(目標1~20)が定められています。

 戦略目標Aでは、生物多様性の価値に対する人々の認識を高めたり、生物多様性の価値が正当に評価・考慮される社会の仕組みをつくることが主要な課題として掲げられています。その中には、開発の際に生物多様性の保全の視点を入れる仕組みをつくる(目標2)、生物多様性の保全に悪影響がある補助金制度を廃止する(目標3)などの個別目標が含まれます。

 戦略目標Bでは、生物多様性に悪影響をおよぼす人間活動の制限や対策の実現が掲げられ、森林などの生物の生育・生息地の減少速度の緩和(目標5)、持続的な農林水産業の実現(目標6、7)、水質の保全(目標8)、侵略的外来生物の管理・根絶(目標9)、サンゴ礁の保全(目標10)などが個別目標として定められています。

 戦略目標Cでは、生物多様性に対する直接的な保全対策の実現が掲げられています。特に、陸域と湖沼・河川などの陸水域で17%、沿岸域および海域で10%を保護地域とする(目標11)という数値目標が盛り込まれた点は、より具体的で実効性のある対策の実現をめざした愛知目標の特徴を端的に示すものとして日本においても大きな注目を集めました。戦略目標Cではその他にも、絶滅危惧種の減少防止の実現(目標12)、作物・家畜などの遺伝的な多様性の保全(目標13)などが個別目標として定めらています。

 戦略目標Dでは、人々が生物多様性や生態系からより多くの恵み(生態系サービス)を享受できるようにすることが掲げられ、そのための社会制度の実現(目標14、16)や劣化した生態系の15%以上を再生・回復させる(目標15)ことなどが個別目標として掲げられています。

 また、最後の戦略目標Eでは、目標達成のための計画・意思決定のプロセスに多様な主体の共同参画を可能にする仕組みづくりや、科学的知見の集積や普及、人材育成、より多くの資金を振り向けることなどを通じてこれまで述べてきた目標の実施を促進することが目標として掲げられています。

 このように愛知ターゲットは、多様な主体を巻き込みながら社会制度や社会を構成する人々の意識や行動を変えることを通じて(戦略目標A、戦略目標E)生物多様性保全のための緊急かつ有効な対策を実現し(戦略目標B、戦略目標C)、ひいては、あらゆる人々が生物多様性と生態系サービスからの豊かな恵みを享受できる世界を実現する(戦略目標D)という、今後、2020年を節目の年として、生物多様性条約加盟国のみならず世界全体が目指すべき大きな方向性を示しています。

(かどや たく、生物・生態系環境研究センター
生物多様性評価・予測研究室)

執筆者プロフィール:

角谷 拓

昨年からスタートした生物多様性プログラムでは、変化する環境に生物多様性がどのように応答していくのかを広域的に予測する仕事に携わっています。今年の目標は、保全の現場にしっかり通って地に足のついた研究をすることです。

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