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2011年6月30日

東日本大震災からの復興に対する国立環境研究所としての取組

木幡 邦男

 平成23年(2011年)3月11日に発生した未曾有の大地震(東北地方太平洋沖地震)により、東北及び関東地方では大きな災害にみまわれました。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

 国立環境研究所でも施設・設備等が被害を受け、復旧作業を進めているところです。研究機能の回復にはもうしばらく時間が必要ですが、同時に、激甚な震災を被った地域の復旧・復興に向けて、環境研究の面から協力し貢献しようとしています。このため、3月29日には研究所内に理事長を本部長とする「復旧・復興貢献本部」を設置しました。

 国立環境研究所は、環境問題に関する中核的研究機関として、研究者ネットワークを活用した取り組みや震災に関連する情報源情報の提供など、様々な形で復旧・復興に貢献しています。3月31日に復旧・復興貢献本部は研究所ホームページ内に「東日本大震災関連ページ」を開設し、国立環境研究所の取り組みや震災に関連する成果等の情報を発信しています。

 このホームページに紹介されている2つの取り組みをご紹介したいと思います。1つ目は津波によって大きな被害を受けた東北地方沿岸部における廃棄物対策、2つ目はつくば市環境大気中の放射性物質の測定についての取り組みです。

 津波などの災害により発生した廃棄物や被災地の生活で発生する廃棄物等について、環境省や被災地域自治体等による現地対応を技術的観点から支援するため、資源循環・廃棄物研究センターでは、全国の大学、国及び地方の研究機関、自治体、関連団体、民間等の知識・技能を有する方々のネットワーク化を進めています。そして廃棄物資源循環学会の「災害廃棄物対策・復興タスクチーム」と連携しつつ、現在既に起こっている問題や、今後予想される問題への対策の提案、災害廃棄物に関する知識・技術・技能や有用な資料等のデータベース化を行っています。

 さらに、同学会のタスクチーム調査に当研究所の研究者が複数参加し、津波堆積物の調査や塩分を被った木くず試料の採取などを行いました。現地で得られた情報は所内の緊急報告会で所内研究者にも報告・情報共有されています。

 研究所がとりまとめた情報提供ファイル(ホームページからPDFで提供)は、例えば津波がもたらしたヘドロ状の堆積物に対する応急対策など、極めて実用的なもので、被災地ですぐ適用できるよう工夫してとりまとめられています。

 2つ目として、東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、3月15日より国立環境研究所は同じつくば市内にある高エネルギー加速器研究機構と協力して、空気中の放射性物質の種類と濃度の測定を実施しています。原子力発電所敷地内などごく近くでは、施設自身や爆発で生じたがれきからの放射線を受けるために高い放射線量が観測されています。一方、環境中で観測されている放射線は、施設から直接に届く放射線ではなく、施設から放出され、大気中を風で運ばれた放射性物質からの放射線です。野菜や水道水から検出されている放射能は、こうして各地に運ばれた放射性物質が地表に降下して直接葉に付着したり、植物体中に取り込まれたり、雨水とともに河川に流れこんだりしたものです。今回、国立環境研究所はハイボリュームエアサンプラを使って大気の試料採取を行い、それを高エネルギー加速器研究機構が分析しました。データは、つくば市内の大気中を漂っているガスや微粒子に含まれる放射性物質の種類や放射能の強さを測定したものです。このように大気中の放射性物質を直接採取し、測定したデータは、内部被ばくの影響を検討する上で重要です。一方、多くの機関による空間線量測定器を用いた測定データも大気中放射線として発表される場合がありますが、これには大気中を漂う放射性物質からの放射線だけでなく、地表などに付着した放射性物質からの放射線も含まれますので、意味が異なります。これらのことを図解すると下図のようになります。

図
図 原子力発電所から放出された放射性物質の環境中における挙動(模式図)

(こはた くにお、東日本大震災復旧・復興貢献室長、審議役)

執筆者プロフィール:

平成23年3月まで、水土壌圏環境研究領域長を務めていました。同年4月開始の第3期中期計画において、新たに設置された審議役に就任いたしました。主に、他の研究機関等との連携を担当する事となっていましたが、現在は、本稿に記載したように、復旧・復興貢献室や電力使用抑制に携わっています。

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