編集後記
生物の中で自分の排泄物のことまで考えるものは人類を除けばおそらくいないのではないか。ライオンはシマウマを倒し、食べるだけ食べ、残りはそのまま捨てる。排泄したければそこらに排泄すればよかった。そもそも生態系は全体がたれ流しで、ゴミや排泄物のことなどかまっているヒマなどないのである。かまっている間にエサは取られてしまうし、知らないうちに自分がエサになってしまっていることだってあるのである。それでも“廃棄物”や排泄物は自然の循環の中で処理されることができ、問題にならなかった。ヒトも同じ生物の一員であるから、やはり同じようにしてきたし、また、それで良かったのであろう。
環境破壊が進み、人類は環境のことを考える必要性を認識した(させられた)。さらに、環境にやさしい技術、生活などへの移行をはじめた。このことは、もしかすると道具や火の使用、農耕の開始、文字の発明などといった人類史上における画期的な出来事、また大きな転換点の一つに位置づけられるものなのかもしれない。転換期にはそれを支える原動力として哲学、方法論、技術などが産まれてくることが多い。21世紀を控えて何が産まれるのか。また、それになんらかの寄与ができるのか。楽しみでもあり、それが遅すぎることのないようにしたいものである。(T.K)
目次
- 研究所は研究のみをするところにあらず− 人材養成 −巻頭言
- 伝統と現代、あるいは過剰と欠乏−環境と健康の関係を研究する際の視点として−論評
- 退任にあたり期待するところ論評
- 熱帯林生態系の構造解析プロジェクト研究の紹介
- 有害廃棄物のモニタリングに関する研究プロジェクト研究の紹介
- 実験池における富栄養化過程とプランクトン群集の相互作用について経常研究の紹介
- 誘導結合プラズマ質量分析法(ICP・MS)による鉛同位体比測定の国際的クロスチェック経常研究の紹介
- 私の行動主義研究ノート
- レーザーレーダーと高濃度大気汚染研究ノート
- 研究発表会・特別講演会報告その他の報告
- 美しい湖とマイノリティ気質海外からのたより
- 新刊・近刊紹介
- 主要人事異動