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お寄せいただいたご質問への回答

  • いただいたご質問の趣旨を踏まえ、ご質問内容を一部修正させていただいている場合があります。
    また、類似のご質問をまとめて回答している場合があります。ご了承ください。
  • 肴倉宏史
  • 近藤美則
  • 伏見暁洋
  • 矢部徹
  • 一ノ瀬俊明

廃棄物の処分、とりわけ焼却処分について俯瞰的にわかりやすくご説明されていると思いました。ここからさらに詳しく知りたくなる方々に対しても、参考になる情報サイトを構築いただけたらと存じます。

欧州で普及している焼却主灰の建設資材化は、なぜ日本で普及していないのでしょうか? どうすれば普及するのでしょうか?

  • 焼却灰から作られた製品を建設資材としてリサイクルすることは、不可能ではありませんが、重金属の心配が残っているので、この心配を払拭できるように品質を向上させたり、リサイクルした場所や状態などを管理できる仕組みを作ることが、普及を進めるために必要だと考えています。

元素の排出源で、鉛がプラスチックごみから出るとは、プラスチックの表面コーティングや塗装で鉛を使用しているということですか。

  • たとえば、プラスチックの一種である塩化ビニルの安定剤に、鉛が使われています。新品への鉛の使用量は極力減らしているそうですが、鉛が使われていた頃の古いものが廃棄されたのかもしれません。

木や竹や藁にはカドミウムがもともと含まれているのでしょうか。成分量が少ないために人はそれを感じないだけで、灰のように凝縮されれば相当量になるのでしょうか。

  • カドミウムは、植物や動物が取り込みやすい重金属の一つですので、確証は得ていませんが、もともと含まれているのではないかと考えています。灰になると、様々な金属元素の濃度が高くなるので、注意していく必要があると考えています。

金がごみから検出されるなんて錬金術のようですが、発生源は電化製品のパーツでしょうか。

  • 発生源の特定は今後の課題ですが、電化製品のパーツは、金の由来の一つになり得ると思います。したがって、私たちがごみの分別をよりしっかりと行えば、可燃ごみに含まれる量は減っていくかもしれません。また、ごみ処理費用の一部しか賄えませんが、資源回収は、ごみ処理の中の大事な役割の一つだと思います。

消石灰は酸性ガスを中和するのに使用するとのことでしたが、この化学反応式はどうなりますか。

  • Ca(OH)2 + HCl ⇒ CaClOH + H2O
    Ca(OH)2 + 2HCl ⇒ CaCl2 + 2H2O
    などであると考えられています。

お話にあったごみ発電に利用されるごみはサーマルリサイクルに含まれますか。

  • ごみ発電や固形燃料利用などがサーマルリサイクルと言われます。ただし、再生利用量の計算にはごみ発電で得られた電力は含まれませんし、欧州のようにサーマルリサイクルをリサイクルに含めない考え方もあります。

ごみの8割が焼却処理されているということですが、そのほかにどのようなごみがどのように処理されていますか。

  • 不燃ごみ、粗大ごみ、資源ごみは破砕や選別などが施されて資源が回収され、残ったものは焼却や最終処分されています。量や割合は、スライドの6枚目をご覧下さい。

今回のレジ袋の有料化はごみの減少にどのくらい影響しますか。

  • 可燃ごみに占めるレジ袋の重さの割合は、1-2%程度という調査結果が多いようです。一見、少ないようですが、ごみの量が1%でも減る可能性があることはとても重要であると考えています。

エージングについても効果の違いがあると言われます。何に起因するのでしょうか?

  • 焼却灰の質の違いによるエージングの効果については十分には解明出来ていません。これから、徐々に解明していきたいと考えています。

ごみの焼却灰をリサイクルするには、建設資材にするにも、セメント原料化するにしても、そのために再度エネルギーが使われます。そのエネルギーはごみ発電が有効なのでしょうか?

  • 焼却施設と同じ場所で溶融スラグ化まで行う場合などは、ごみ発電で得られた電力が有効に利用されています。別の場所で処理を行う場合(たとえば、セメント原料化はセメント工場で処理)は、直接利用はできませんが、ごみ発電の電力は、私たちの生活の中で普通に利用されています。

アシスト自転車は電池が切れたら、ペダルをこぐのに相当に大きな力が必要になりませんか。

  • アシスト自転車には、①ペダル部分をアシストする方式、②前輪若しくは後輪のハブにモータを組み込んだインホイール式、③タイヤ外周をモータでアシストする方式の大きく分けて3方式があります。③の方式は私に利用経験が無いので回答できませんが、②のインホイール式は、かつて三洋電機(現在パナソニック)が販売していたアシスト自転車(エナクル)の使用経験から、電池が切れたらモータが負荷になりペダルが若干重くなりましたが、相当に大きな力は不要でした。①のペダルアシスト式は、パナソニックやブリジストン製のアシスト自転車の利用経験から殆ど影響が無いと言えます。

極小モビリティのキックスケーターモードでは最高速はどれくらい出るのでしょうか。車いすと連結させる前提ということだと大きな力が必要になるので、スピードは諦める必要があるでしょうか。一人乗り用であれば、スピードが出た方が良いと思うのですが。

  • 極小モビリティに使用しているモータはアシスト自転車に使用されているものとほぼ同出力なので、開発段階では最高速度として時速15kmほど出ます。一般公道で実際に走行する際には、一人乗りの電動モビリティ(例えば、セグウェイ)と同様に時速11kmに制限することになると考えます。それでも、自転車より若干遅い程度ではありますが、歩くよりは倍ほど速い速度なので、それなりの満足感は得られると考えます。ただし、私有地では、速度の上限を外した利用を可能とすることもあると考えます。また、日本の狭い道路事情の中では、独立した走行帯の確保ができないので、歩行者や自転車との共存を考えて、事故が起きないように、もしくは、起きても傷害被害が小さくなるような対応(衝突を防止する機能の装備等)を併せて検討しています。

自動運転が実用化されるとモビリティはどう変わるでしょうか?

  • 完全自動運転車が実用となった際には、運転手不在でのドアツードアの移動が実現可能と思います。頻繁な発進停止が不要かつ一定速で衝突しない走行が同時に達成された場合には、小型軽量化されて形状も現状の車とは異なる室内から屋外までの利用を前提とする完全自動運転乗り物が実現できると予想します。低速で短距離利用における乗り物の一つは極小モビリティのような乗り物と考えています。

モビリティに乗ってみたいです。価格も気になります。

  • 国環研の一般公開(例年4月と7月に開催)で試乗できますので、おいでください。また、価格については、量産時には15万円程度の価格を想定しておりますが、利用者個人の特定ができない形での移動情報等の提供を前提とすれば、無料貸与も一方法かと考えております。

高齢者が自動車免許を返納したら一台もらえるとか、借りれたらよいですね!

  • 車を運転しない方が良いと思われるドライバに免許証の返納を促し、交通事故を未然に防止することも本モビリティの開発の目的の一つになりますので、やってみたいアイデアだと思います。利用者個人の特定ができない形での移動情報等の提供を前提とすれば、無料貸与も一方法かと考えております。

PM2.5の発生源として、家庭用の薪ストーブ・暖炉はどのように評価していますか?稲わらなどの野焼きと同等と見て良いでしょうか?

  • PM2.5の排出量の観点と化学組成・毒性の観点があると思います。最近の研究によれば,欧米では薪ストーブはPM2.5に対して比較的大きな寄与を占めているのですが,簡単な試算によると,日本では年間排出総量への影響は大きくなさそうです。
    木枝の燃焼に伴うPM2.5の毒性についても研究を始めております。

人間にとって空気とは何か?キレイな空気とはどういった基準で設定されているのか?

  • 人は呼吸しないと生きていられないので,空気(大気)を常に吸わなければなりません。そのため,大気の質は重要です。キレイな空気の基準を明確に示すのは難しいですが,「人の健康の保護及び生活環境の保全のうえで維持されることが望ましい基準」として定められている,環境基準の達成状況が目安にはなるでしょう。

野焼きは健康被害を生ずるが、森林火災は健康被害が低いとの図示がありましたが、オーストラリアやアメリカ西海岸の大規模森林火災による大気汚染は低いという評価ですか?

  • 日本では森林火災はあまり多くありませんが,アメリカやアマゾン等における大規模な森林火災は,大気環境に与える影響も大きいです。なお,私は,「森林火災は健康被害が低い」という説明はしておりません。講演で用いたスライドも公開していますので(https://www.nies.go.jp/event/sympo/2020/siryo3.pdf),適宜ご参照下さい。

最近の柔軟剤や合成洗剤の香料として配合されているマイクロカプセルの環境や人健康への影響はどのようでしょうか?今後研究される予定はありますか?

  • 柔軟剤や合成洗剤等による香りによるストレスや健康影響,いわゆる「香害」に対する訴えがあることは承知しています。香りの成分やマイクロカプセルについてはPM2.5の問題とは別に,有害化学物質や化学物質過敏症等との関連で捉える方がよいだろうと思います。
    これまで,私自身は調査・研究できていませんが,頂いたご意見は今後の参考にさせて頂きます。なお,弊所の対話オフィスからの以前の回答が参考になるかもしれません。
    https://taiwa.nies.go.jp/faq/index.html#answer01
    また,化粧品,香水,洗剤などの民生品からの揮発性有機化合物(VOC)の排出については,令和元年度から,環境省による揮発性有機化合物排出インベントリとして、全国での排出量が把握されるようになりました。
    https://www.env.go.jp/air/osen/voc/inventory.html

ゴミ焼却場の排ガスの方が野焼きより深刻ではないでしょうか?

  • 日本ではダイオキシン対策のため,ごみの焼却は厳しく管理され,その排気は高度に処理されています。そのため,ごみ焼却場からのPMの排出濃度は非常に低いです。実際,日本全国からのPM2.5排出量推計値(環境省,2015年度分)は,野焼き由来が12,519トン/年に対して,廃棄物(ごみ)焼却由来は1,154トン/年と約10分の1です(全発生源からの総排出量は115,711トン/年)。これらのことから,ごみ焼却場よりも野焼きの方がPM2.5に関しては重要な発生源であろうと思われます。

化学物質過敏症の患者からすると,屋内の空気環境の方が屋外大気環境より深刻と感じています。屋内のPM2.5などの空気環境についての調査はしているでしょうか?

  • 室内空気ももちろん大切ですが,私自身は室内空気はほとんど研究対象としてきませんでした。空気清浄機の使用やハウスダストの発生抑制等により,ある程度個人で管理し得るという側面はあります。

酸化能とは酸化還元反応の酸化物が相手を酸化させる力のことでしょうか?

  • 「酸化ストレス」は,人の様々な病気に関与していると考えられています。酸化ストレスとは,生命現象を支配する酸化反応と抗酸化反応の微妙なバランスが破綻し,生体が酸化傾向に傾く現象です。この酸化ストレスを生じさせる能力を酸化能とよびます。本研究では,粒子状物質(PM)による酸化能の強さを,細胞や化学試薬を用いて定量的に(数値として)評価しました。

有機炭素とは生物の生態反応の中で作られる炭素であり、無機炭素とは生物の体内では作ることが出来ない炭素のことでしょうか?無機に比べて毒性も強いのですか?

  • 無機炭素は元素状炭素と炭酸塩炭素に分けられますが,大気粒子中の無機炭素の大半は元素状炭素です。元素状炭素とは炭素を含む物が不完全燃焼した時に生成される物質で,炭素のみから成ります。有機炭素(または有機化合物)とは,無機炭素以外の,炭素を含む成分の総称です。大気粒子中の有機炭素には1万以上の成分があると考えられています。このように,有機炭素は多種・多様な成分の総称なので,一概には言えませんが,重量あたりの毒性が強い成分も多いので,無機炭素より概して毒性が強いといえそうです。

大気粒子中の多環芳香族炭化水素の中で一番多いものはメタンだと考えればよいですか。

  • 大気粒子中の多環芳香族炭化水素として,代表的な成分に,ベンゾ[a]ピレンがあります。

ノルマルアルカンは,具体的にはメタンをイメージすればよいですか?

  • メタンは炭素数が1のノルマルアルカン(化学式:CH4)ですが,揮発性が非常に高いため,大気中ではほぼ気体として存在します。大気粒子中で濃度の高いノルマルアルカンは炭素数が18~36程度の範囲のもので,例えば,エイコサン(炭素数が20のノルマルアルカン,化学式: C20H42)などがあります。

ホパンとは,石油地層に含まれる天然の五環式炭化水素でしょうか?

  • はい。ホパンは石油(原油)に含まれる,五環の炭化水素の物質群です。

大気粒子中の硝酸イオンの発生源は肥料で、硫酸イオンの発生源はガソリン中の二酸化硫黄でしょうか?

  • 都市大気粒子中の硝酸イオンの多くは硝酸アンモニウムとして存在し,硫酸イオンの多くは硫酸アンモニウムとして存在します。ただし,粒子を水で抽出してイオンクロマトグラフィーで分析するため,分析結果は,硝酸イオンや硫酸イオンの濃度として表すのが一般的です。硝酸イオンは元々大気中に窒素酸化物(NOx)として放出されたものが主です。NOxの主な発生源は,自動車排気,発電所など固定(燃焼)発生源,船舶などです。硫酸イオンは元々大気中に硫黄酸化物(SOx)として放出されたものが主です。SOxの主な発生源は発電所など固定(燃焼)発生源,船舶,火山などです。

大気粒子中のアンモニウムイオンの発生源は家畜の糞尿や窒素肥料ですか?

  • はい。アンモニアの主たる発生源は家畜の排泄物と施肥です。

2007年のデータを参照していたスライドがありますが、古すぎはしませんか。新たにデータを取り直す必要はないでしょうか。

  • ご指摘のように、やや古いデータで恐縮です(スライド13)。我々は、その後も不定期に集中観測を行ってきており、例えば、つくばでの2012-2013年の解析結果も本講演の中(スライド18)でも紹介しています。大規模な観測や化学分析、発生源解析にはそれなりの労力と時間が必要なので、頻繁に行うことはできませんが、今後、データを更新・改善していけるよう努めます。

PM2.5が人体へ悪影響を及ぼし死亡にもつながるという説明がありましたが、これに関する実験やデータを示していただけないでしょうか。また、PM2.5が死因であったことはどのように判明するのでしょうか。

  • スライド5の表「大気中のPM2.5による人への健康影響」は米国環境保護庁の報告書(U.S.EPA、 2019、 EPA/600/R-19/188, https://cfpub.epa.gov/ncea/isa/recordisplay.cfm?deid=347534)に基づくものです。人への健康影響とその因果関係の確からしさは、大勢の人を対象とした疫学研究の確からしさ、動物実験や作用機序などとの整合性などに基づき、専門的かつ総合的な判断によって決められています。

大気中粒子状物質の粒径分布が二山になる理由を教えてください。

  • 自動車排気など、燃焼によって生成する粒子の多くは微小粒子です。一方、物理的に巻き上げられた土壌や道路粉じんなどの多くは粗大粒子です。このように、発生源ごとに粒径分布が異なり、それらが大気中で混合した結果、大体このような二山の分布になることが多い、ということです。

元素状炭素は多孔質であり、さまざまな物質を吸着しているのではないでしょうか。

  • はい。元素状炭素は、粒径10~20nm程度の球状の元素状炭素が複数葡萄の房状につながった構造をしています。そのため、その空隙や表面に、不完全燃焼で生じた有機成分や硫黄化合物などが吸着しているのが一般的です。(参考文献1)日本環境化学会, 地球をめぐる不都合な物質 拡散する化学物質がもたらすもの,講談社ブルーバックス,2019(p148, 図5-5)。(参考文献2) Fujitani, Y.; Saitoh, K.; Kondo, Y.; Fushimi, A.; Takami, A.; Tanabe, K.; Kobayashi, S., Characterization of structure of single particles from various automobile engines under steady-state conditions. Aerosol Sci Tech 2016, 50, (10), 1055-1067. https://doi.org/10.1080/02786826.2016.1218438(Figure 4)

発生源ごとの毒性の違いに関する発表に関連して、有機粒子の酸化能とLD50との関係はどのようでしょうか?

  • 我々が行った、発生源微小粒子試料の有機抽出物の毒性評価では、半数致死量(LD50)と似た指標である、半数効果濃度(EC50:細胞増殖抑制の指標)と酸化能(HO-1遺伝子発現)との関係性について、以下のような傾向が見られています。すなわち、植物(αピネン)由来二次有機粒子と調理由来粒子は細胞増殖阻害活性も酸化能も弱い傾向があり、人為起源二次有機粒子と野焼き粒子は細胞増殖阻害活性も酸化能も強い傾向でした。一方、ディーゼル排気粒子は、細胞増殖阻害活性は弱いが、強い酸化能を示しました。

今回の発表内容について、さらに深く学ぶための参考資料を教えてください。

  • まずは,一般向けで読みやすい、ブルーバックスの書籍をお勧め致します。(参考文献1)日本環境化学会, 地球をめぐる不都合な物質 拡散する化学物質がもたらすもの,講談社ブルーバックス,2019。 PM2.5の環境動態については、やや専門的で、やや古いですが、我々のレビュー論文が参考になると思います。 (参考文献2) 伏見暁洋, 森野悠, 高見昭憲, 大原利眞, 田邊潔: PM2.5の実態解明に向けて —最近の研究と今後の課題-. 大気環境学会誌 2011, 46, (2), 84-100. https://doi.org/10.11298/taiki.46.84

ちょっとテーマとズレてるかも知れませんが、原子力発電による海水温の上昇は地球温暖化や海の生態にどれほどの影響を与えているのでしょうか?
巨大な水槽に海を例えるなら、世界の至る所で高温のサーモスタットがジワジワと海水を温めている影響は計り知れないのではととても心配です。核廃棄物問題は別として、CO2は出さないかも知れませんが環境への影響度が知りたいです。都市部の人々がどのような電気を選択するかにも繋がると思いますので是非ご回答の程宜しくお願い致します。

  • 気候変動に伴う海水温上昇は近年注目されるテーマです。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第五次報告書ベースで、日本近海平均で+1.08℃/100年、世界全体平均で+0.51℃/100年と報告されています。
    一方、日本では海の沿岸域に原発が設置されることが多いため原発温排水の沿岸生態系への影響は比較的古くから注目されているテーマです。原発は都市域よりも田園・農村地帯の沿岸域に設置されることが多いわけですが、排水量を考慮すると排出口直近だけでなく周辺数㎞の範囲で1-3℃程度の海水温上昇への影響があるものとされています(「平成22年度国内外における発電所等からの温排水による環境影響に係る調査業務報告書」(環境省))。これらの海水温上昇で高水温を忌避する生物種がみられる一方で、南方系の侵入種を含め冬季に多様な生物が集まる事例も報告されております。さらに同種であっても生育が良くなったり採餌が活発になったり、その結果として群集の種組成にも変化が生じることが予想されます。
    このように特定地域の環境問題である温排水と地球環境問題としての気候変動が相まって海水温の上昇が生じるとき、特に閉鎖性が高く原発の多い海域では沿岸生態系への影響は重要な問題であると考えられます。また世界の原発442基(2019年、日本原子力産業協会HP資料より)のうち内陸部に位置し、冷却には陸水を活用している原発も数多くあります。いずれにしましても原発の運転に必要な冷却水の取水温度が高まることで、発電システム保全のために原発の運転がむしろ制限されることも考えられます。
    生態系影響の研究課題としましては、いっそうの野外観測、室内実験、シミュレーションが必要な研究分野であり、特に日本では閉鎖性海域に隣接することが多い大都市に生活するヒトにとっては沿岸の生物多様性保全や気候変動に対する緩和と適応に応じた振舞いを選択する上で大変重要なテーマだと考えております。

先日の新聞で、ガス会社が東京湾に海草の繁殖を広げる活動をしているのを知りました。
CO2を排出する会社だからこそ、CO2の削減と生物多様性に取り組むというお話で、大変素晴らしい取り組みだと感じました。
海草の繁殖とCO2の削減効果について、詳しく教えていただきたいです。

  • アオサ類を含む海藻(かいそう)、アマモ類等の海草(うみくさ)は、植物プランクトンと同様に、生きているときは日中に海水中の二酸化炭素を吸収し、相応分の二酸化炭素を大気中から海水中へ吸収させます。また、彼らは藻場に住みついた多くの生物同様、死んだ後は微生物によって完全に分解され二酸化炭素となり、海水、大気へと放出されていくわけですが、すべてが分解されるわけではなく、その一部は分解しきれない炭素化合物として海底に蓄積されていくと考えられています。この2つの性質から、地球環境における二酸化炭素の削減効果があるといえるでしょう。

グリーンタイドが水質浄化に貢献していると理解したのですが、どの点からそう言えるのでしょうか。繁殖することで、過栄養な環境を正常レベルにまで下げ、光合成をして酸素を増やして好気性水質にするからでしょうか。
グリーンタイドのせいで日光が減り、植物プランクトンの餌を食べてしまうというのは、グリーンタイドは藻なのに、水中の何を食べて生きているのでしょう?

  • ご指摘の通りです。アオサ類を含む海藻や植物プランクトンなどの光合成をする一次生産者にとって「餌」と表現されるものは、「光」「二酸化炭素」「栄養塩」と大きくまとめることができます。窒素やリンといった栄養塩は、都市の下水道整備に伴う排水からの供給減、海水による希釈によって過栄養な状況から一般的な冨栄養な状況へと移行し、さらに爆発的に増えたアオサ類等にも利活用されていると考えております。なお、好気的水質とのご指摘もありますが、潮の干満にも左右されるものの夜間はアオサ類の卓越する呼吸に起因すると思われる溶存酸素濃度の低下も観測されております。

ご講演、大変勉強になりました。滋賀県で農業をしている者です。
特にアオサの問題は身近で興味深かったです。
琵琶湖でも水草が増え過ぎて、悪臭などの問題が発生しています。
行政と協力して肥料への活用を考えています。
試験的に水草肥料にしていますが釣り糸やペットボトルなどのゴミの混入が多く、使い物にならないです。
何かうまくいっている事例があればご教授ください。
よろしくお願いします。

  • ご質問ありがとうございます。飼育栽培されている農作物と違い、管理されていない自然環境において増え過ぎた生物の有効活用を検討されている事案に関しては、ご指摘の混入夾雑物除去等の加工過程以外にも運搬過程のコスト等も課題です。また、市場価値を安定させるために不可欠な継続的な安定供給、という課題もあります。アオサに関しては特定海域からの食用供給はすでに商業ベースにのっており、それ以外の地域では環境問題への意識向上を兼ねて地域のNPOで利活用をしている事例を複数伺っております。水草につきましても同様な問題が指摘されていることを聞き及んでおります。琵琶湖については近年産官学民連携の努力でヨシ原の整備から利活用までを通して、ヨシ紙等の文具や伝統工芸品、腐葉土等への利活用が試みられていることはご存じのことかと思います。これらの利活用が自律的、持続的な事業になってゆくことが期待されています。

風の通り道を作る実証実験で、ソウルでは小規模河川を復活させると、その上空とそれに直行するように風が流れるとありましたが、なぜそんな気流ができるのでしょう。水面の上だけは水蒸気量が多く、そこだけ気塊が異質になり、他とずれが生じるからでしょうか。ならば、直行する流れがおきるのはなぜでしょう。

  • 空気の動きは水の動きに似ています。ソウル上空へ海から吹いてくる風(ここでは海風)の規模は大きく、地表付近では建物による凹凸もあるためスピードは遅くなっていますが、この復元河川のように風向きにそって障害物のほとんどない土地がつながっているような場所では、上空とほぼ同じ向きの風が吹いていると考えられます。実際我々の観測事例もそういったデータを示しています。

    一方、河道に直交する道路(両側、つまり風上側と風下側はビルに囲まれている)に接した空気と、河道に接した空気はほぼ同じ高さでつながっているので、圧力の高い方から低い方へ押し出され、あるいは吸い込まれることになります。空気は水と同じで、なるべく同じ高さを動ける(空いている)ところへ流れるので、そのような流れが生じるのです。その結果、ビル上空の風は河道に接した空気と同じ風向きのままですが、ビルの谷間では直交した風向きになるわけです。

地面被覆の種により、排熱量が変わるとのことでしたが、ならば排熱の少ないアスファルトを開発すべきだと思いますが、既に開発されていますか。

  • 「排熱」という概念は、エネルギー消費(燃焼などの人為的発熱)の影響だけを指しますので、「日中の蓄熱および夜間の放熱が少ない」と読み替えてご回答したいと思います。代表的なものとして、90年代から話題になり普及してきた「保水性舗装」があります。保水性舗装では、降雨のあとしばらく(たとえば2日ほど)は、表面からの水分蒸発で熱が奪われるため、表面温度が低く保たれる効果があります。しかし、乾燥した状態では効果が得られない、多孔質であるために強度が弱くメンテナンスが必要、といった課題が指摘されています。

都市の避暑対策は都市全体の低温化を目指す方向からクールスポットの創生に変わっているとのことでしたが、それは緑化事業を面で推進していくのは手間がかかり過ぎて諦めつつある、ということでしょうか。

  • 今から20年ほど前、環境省や国土交通省が、ドイツなどの先進事例にならって関連する取り組みを始めました。我々専門家が当時から議論していたのは、「XX(たとえば保水性舗装や屋上緑化など)が都市全域に普及すれば、典型的な夏の日中気温は何℃下がる」というものでした。

    しかし実際には、「都市全域に普及」は困難で、スポット的にXXが普及してその場所だけは確かに低温になる、というのが現実的であり、コストとベネフィットのバランスがとれている、という認識もありました。

    そして今は、危険な暑熱日(都市の熱バランスだけで起きているのではありません)が広域に出現するという状況になり、実際に高温に「備える」必要が明らかになってきています。クールスポットを増やしていく方針は、さらに合理的な考え方になっていると思います。

とある地点におけるヒートアイランドの影響の大きさは気象データ(気温、湿度、天気、降水量などと考えています)から知ることはできるでしょうか。
例えばその地点の気温(日平均・日最高・日最低などいづれか。日最低が最もわかりやすいでしょうか)だけから、そのうちの何℃程度がヒートアイランドが原因であるかを知ることができるのか、ということです。

  • 大きく三つの方法が考えられそうです。
    第一に、「ヒートアイランド強度」という概念があって、伝統的には、都市化の影響のないと思われる郊外の気温データとの差(都心と郊外の気温差)、と定義されています。もちろんそのような場所(都市部に隣接する郊外)に都合よく観測データが存在すれば、算出可能です。また、ヒートアイランド強度の定義上、その地点(都市の内部)のデータだけから算出するのは不可能です。
    第二に、1年のうちにはヒートアイランドの影響が出にくいとされる季節・時間帯と出やすいとされるそれがあるので、その差をヒートアイランドの影響と見なすことが考えられます(簡単ではありませんが)。つまり、日変化や年変化のカーブを見ながら、不自然な部分をヒートアイランドの影響と見なすのです。実際にこのように算出している事例を見たことはありませんが、比較する郊外地点のデータが存在しない場合などは、(郊外と比較できる)、ほかの都市の事例とくらべるなど、検討する価値がありそうです。
    第三に、都市化が始まる以前からの長期間の観測データがある場合、現在と過去の気温差をヒートアイランドの影響と考える方法にも一理あります。しかし観測データでは都市化以外の影響(長期的な広域の気候変動)が入ってしまうため、気象学モデルによる数値シミュレーションで、都市化のある・なしの2つのシナリオの結果を比較し、ヒートアイランドの影響を計算するなどされています。