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2010年9月30日

貧酸素水塊の形成機構と生物への影響評価に関する研究(特別研究)
平成19〜21年度

国立環境研究所特別研究報告 SR-93-2010

表紙
SR-93-2010 [8.6MB]

 本報告書は、平成19~21年度の3年間にわたって実施した特別研究の成果を取りまとめたものです。

 この特別研究では、閉鎖性海域で最大の水環境問題である貧酸素水塊(注)に着目し、その発生の主な原因である水塊中の有機物の分解や底泥への沈降、底泥による溶存酸素消費、代表的な種類の二枚貝に対する影響評価、水質再現のための三次元流動・生態系モデル・シミュレーションの構築・改良について、東京湾を調査対象として行ってきた結果を取りまとめました。

 この中で(1)陸起源のものより内部生産(植物プランクトン)に由来する粒子態の有機物の方が、分解性(および酸素消費能)が非常に高いこと、(2)底泥の酸素消費速度は底生生物の現存量より、泥の温度と硫化物含量に大きく依存すること、(3)劣悪環境である運河区域における二枚貝の現地飼育試験において、貧酸素水塊に対する耐性は種ごとに顕著に異なっていたこと、(4)三次元流動・生態系モデル・シミュレーションにおいて、浮遊系の有機物を易分解性・難分解性のものに区別し、底泥の酸素消費速度の実測値を適用することにより水質再現精度が上昇したことが明らかとなりました。

 以上で得られた研究結果は、東京湾のみならず、それ以外の貧酸素水塊に見舞われている閉鎖性海域の水環境管理・対策実施のための調査研究手法を例示したものと考えております。

(注) 貧酸素水塊
水中に溶解している酸素(溶存酸素)の濃度が、生物の生存に影響を及ぼすほど低下した水の塊のこと。

(水土壌圏環境研究領域 牧 秀明)

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