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2015年2月28日

気候変動枠組条約第20回締約国会議及び
京都議定書第10回締約国会合における最新研究成果の紹介

朝山 由美子、PANG Shijuan

会場入り口

 国立環境研究所は、2014年12月1日から2週間、ペルー・リマで開催された気候変動枠組条約(UNFCCC)第20回締約国会議(COP20)及び京都議定書第10回締約国会合(CMP10)に参加し、気候変動に関する最新の研究成果を紹介しました。地球環境研究センターの横田達也衛星観測研究室長、環境計測研究センターの松永恒雄環境情報解析研究室長、Pang Shijuan高度技能専門員、社会環境システム研究センターの久保田泉主任研究員、藤野純一主任研究員、朝山由美子特別研究員が参加しました。

1.サイドイベント

公式サイドイベントの様子

 当研究所は、マレーシア工科大学(UTM)との共催で、「マレーシア及びアジア全域での低炭素社会実行計画づくりとその実践」と題するUNFCCC COP20/CMP10公式サイドイベントを12月11日に開催しました。このイベントでは、特にマレーシアのイスカンダル、プトラジャヤに焦点を当て、当研究所と京都大学が、国内外の研究協力機関との研究協力を通じ開発したアジア太平洋統合評価モデル(AIM)を用いた低炭素社会実行計画づくり、及びそれらの実践に関する最新の研究活動の成果を紹介しました。冒頭、外務省堀江正弘地球環境担当大使、及びUTMの国際室専務理事のNordin Bin Yahaya氏が歓迎挨拶を行い、マレーシア政府エネルギー・環境技術・水省(KeTTHA)のY. Bhg. Datuk Loo Took Gee氏が、マレーシア政府のエネルギー政策に関するキーノートスピーチを行いました。イスカンダルの事例に関しては、当研究所の藤野主任研究員、及び、UTMのHo Chin Siong教授が、SATREP(国際協力機構(JICA)科学技術振興機構(JST)による地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)のもと、UTM、当研究所、京都大学、岡山大学が現地の自治体等と協働で策定した「イスカンダル開発特区の2025年低炭素社会ブループリント」の概要、及び今年度の研究活動の成果として、イスカンダル開発特区内の5つの市レベルのLCSシナリオ、及び、「イスカンダル・マレーシア版こどもエコライフチャレンジ」について紹介しました。プトラジャヤの事例に関しては、プトラジャヤの都市計画の副部長を務めるDato' Omairi Bin Hashim氏がAIMを用いて策定した「Putrajaya Green City 2025」をもとに、「プトラジャヤ・グリーンシティイニシアティブ」を策定し、実施していることを発表しました。また、Hashim氏は、建築物のエネルギー効率改善による二酸化炭素(CO2)の削減に向けて、AIMによるシミュレーションや、東京都による建築物分野の低炭素戦略の実施・モニタリングのノウハウをプトラジャヤの実情に合うように汎用させていく意気込みを示しました。プトラジャヤの状況に関する発表を踏まえ、東京都環境局の西田裕子氏は、東京都の低炭素戦略の実施による教訓を紹介しました。パネルディスカッションでは、会場からの質問をもとに、国や地方の政策決定者が低炭素開発計画を実施していくために、どのようにして多様な利害関係者による主体的な参加を促しているか、どう課題を克服しているのかについて議論が行われました。

 登壇者による発表内容の詳細、及び発表資料はAIMホームページをご参照ください。
   http://www-iam.nies.go.jp/aim/AIM_workshop/ cop20_os_j.html

 また、他にも国内外の研究機関と共に以下の3つのサイドイベントを主催しました。

(1) 気候変動に関するわが国の人工衛星観測の取り組み(12月2日)
(2) オーナーシップを持ったINDC作成に向けたアジア気候変動政策研究コミュニティの活動支援(12月8日)
(3)AIMモデルを用いた低炭素都市実行計画づくりの事例紹介と今後の展開(12月9日)

 (3)のイベントでは、望月環境大臣の挨拶がありました。
 イベントの開催結果概要・発表資料は、COP20/CMP10日本パビリオンのイベントのページをご参照ください。
   http://www.mmechanisms.org/cop20_japanpavilion/index.html

 なお、(3)のイベントについては、下記AIMジャパンパビリオンのページからもご覧いただけます。
   http://www-iam.nies.go.jp/aim/AIM_workshop/cop20_jp_j.html

2.展示ブース

横田室長が研究成果を紹介している様子

 当研究所はCOP20/CMP10会場の展示ブースにて、AIM、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)及び温室効果ガス観測衛星技術衛星2号(GOSAT-2)による最新の研究成果・計画等を展示しました。

 第1週(12月1日(月)~6日(土))には、「いぶき」の5年以上にわたる全球のCO2及びメタンの吸収排出量の観測データの詳細と入手方法を紹介しました。また展示ブースのカウンターに設置したアンドロイド端末にて、「いぶき」の観測データを用いて作成した全球CO2・メタンの濃度変化映像を流し、会議参加者の高い関心を集めました。特にアジア諸国からの参加者の中には、「いぶき」が温室効果ガスのほか、エアロゾルも観測していることから、PM2.5等の大気汚染問題への応用もできるのではないかと期待を示された方もいました。後継機のGOSAT-2については、その最新要求仕様と期待される成果について紹介しました。またAIMによる最新の研究成果のパンフレットなどをみてワーキンググループ等への参加を希望される方々もいました。

 また第2週(12月8日(月)~12日(金))には、12月4日に行った報道発表「温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による大都市等におけるCO2観測データと人為起源排出量との関係について」の紹介も行いました。平成21年6月~平成24年12月までの3年半に大都市などとその周辺で取得された「いぶき」データを用いて、「いぶき」や将来の衛星によるCO2濃度データを人為起源CO2排出(インベントリ)の監視に利用できる可能性を示しました。報道発表の詳細についてはGOSATホームページをご参照ください。
   http://www.gosat.nies.go.jp/jp/related/2014/201412.htm

 なお展示ブースでは横田室長がペルーのテレビ局からインタビューを受けました。また各種電子ファイルを納めたUSBメモリとともに当研究所の研究者がデザインしたエコバッグ、間伐の樹木で作ったブックマークなども配布したところ、大変好評でした。

3.リマ会議における活動を通じて

全体会合の様子(写真提供:久保田主任研究員)

 今年開催されるCOP21において、2020年以降すべての国が参加する新しい法的枠組みの合意に向け、各国はCOP21に十分先立って約束草案の提出を招請されています。各国が約束草案を策定するに当たり、AIMを用いた包括的な定量指標、及びその実現のための手法を提示していく必要性がこれまで以上に高まっています。また、GOSAT、GOSAT-2によるCO2観測データと人為起源排出量との関係を示した研究成果は、各国の約束草案を集約した効果と、世界の平均気温を産業革命前の水準より2度以下で保持していくために必要な排出削減量を提示し、国際社会による更なる緩和及び適応行動を促す際にも必要な情報となってきます。私たちの研究成果が、国内外の温室効果ガス削減目標の一層の引き上げにも寄与するよう、今後も研究を進めていく所存です。

(あさやま ゆみこ、社会環境システム研究センター /ぱん せけん、環境計測研究センター)