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国立環境研究所特別研究報告 SR-89-2009
「湿地生態系の時空間的不均一性と生物多様性の保全に関する研究
(特別研究)」(平成18~20年度)

 本報告書は,平成18~20年度に実施した特別研究「湿地生態系の時空間的不均一性と生物多様性の保全に関する研究」の成果をまとめたものです。多様な生物と生態系を保全するには,まずはその分布を把握することが必要ですが,人間が歩き回って確認できることは限られます。飛行機や人工衛星などから全体を把握するリモートセンシングは有力な手段ですが,遠距離から姿をとらえることが難しい対象の場合は,空から得られる情報にもとづいて生物の分布の確率を推定するというアプローチが重要になります。本特別研究では,特に湿地を対象として,リモートセンシング情報から生物の分布パターンを推定することを試みました。空間統計学的な手法も取り入れて,群落の下層で暮らす稀少な植物や,植物群落を生活の場とする鳥などの分布確率を推定する手法を工夫したほか,植物群落の構造や,河川内の微地形の空間分布を推定することに成功しました。本報告書で提示したアプローチが生物多様性の保全に役立つことを期待しています。

国立環境研究所特別研究報告 SR-90-2009
「残留性有機汚染物質の多次元分離分析法の開発に関する研究
(特別研究)」 (平成18~20年度)

 この研究では,従来の環境汚染物質の分析法における問題点を解決することを目的に,高分離能力をもつ多次元ガスクロマトグラフ(GC×GC)と,広範囲の精密質量情報を網羅的に記録することができる高分解能飛行時間型質量分析計(HRTOFMS)を組み合わせた新しい分析方法を開発しました。

 ダイオキシン類の分析では,前処理を省略し,複数回必要だった測定を1回で済ませることを可能にしました。同時に,公定法による測定値と同等の結果を得ることができるようになり,これまで非常に困難だった迅速さと正確さの両立に成功しました。また,この方法を応用し,試料量を少なくすることも可能になり,POPsやPCBの分析では,必要な大気や河川水の試料量を数百分の一にしています。さらに,試料中の化学物質の情報を余すことなくデータとして保存することも可能にしました。その中には未知物資も多数含まれているはずです。本研究報告書の分析法が普及し,各分野へ貢献すること期待します。

(化学環境研究領域 橋本俊次)

国立環境研究所特別研究報告 SR-91-2009
「都市大気環境中における微小粒子・二次生成物質の影響評価と予測
(特別研究)」 (平成18~20年度)

 直径が数μm以下の微小な粒子状物質(PM)は,人の健康に及ぼす影響が大きいため,大気環境を保全する上で重要な物質として,2009年度にはわが国のPM2.5(直径2.5mm以下の微小粒子)の環境基準が設定されました。近年,工場などの固定発生源におけるダイオキシン対策やディーゼル車に対する排出ガス規制の強化により,都市の大気環境に大きな影響を及ぼしていたばいじんやディーゼル車からの粒子は減少する傾向にありますが,その一方で,窒素酸化物(NOx)や揮発性の有機物質(VOC)等のガス状物質から光化学反応で生成される二次粒子の影響が高まる傾向があります。しかし,二次粒子の発生,分布,健康影響などは,十分解明されておりません。この研究では,最新ディーゼル車の排出ガス評価,フィールド調査に基づいた二次有機粒子や生物起源粒子の挙動や寄与の推定,疫学的な見地からの大都市域およびその周辺地域でのPMへの曝露と死亡リスクとの関連性などに関する一連の研究を行いました。本研究報告書がPMの大気環境影響の研究の新たな取り組みの一歩になれば幸いです。

 

(大気圏環境研究領域 今村隆史)

国立環境研究所特別研究報告 SR-92-2009
「中長期を対象とした持続可能な社会シナリオの構築に関する研究
(特別研究)」 (平成18~20年度)

 環境問題の解決策を検討する上で,環境問題はもとより,エネルギーや食料等の安全保障,国際貿易,社会経済活動などさまざまな観点から,将来にわたる長期的な持続可能な社会のビジョンを定め,問題解決に向けたシナリオやロードマップを構築することは重要です。本報告書では,平成18~20年度に実施した特別研究の成果として,定量化が可能な事象については,統合評価モデルや計量経済モデルを用いて,ビジョン・シナリオを描き,定量化が困難な事象については,専門家インタビューなどの手法を用いて,定性的なビジョン・シナリオを描き,持続可能な社会像を構築するための道筋や課題を示しています。また,今後,持続可能な社会構築に向けたより詳細なビジョン・シナリオの検討のために,持続可能性指標のあり方についても提示しました。持続可能性の観点から社会の状況を把握する指標として,現在,必ずしも適切な持続可能性指標は存在しないからです。これらの研究成果に基づいて,今後の持続可能な社会の構築に向けた取り組みに貢献したいと考えています。

 

(社会環境システム研究領域 日引 聡)

国立環境研究所研究報告 R-203-2010
「光化学オキシダントと粒子状物質等の汚染特性解明に関する研究
-国立環境研究所と地方環境研究所とのC型共同研究-
平成19~21年度(最終報告)」

 本研究報告書は,国立環境研究所と地方環境研究所とのC型共同研究「光化学オキシダントと粒子状物質等の汚染特性解明に関する研究」(平成19~21年度)の研究成果を最終報告としてとりまとめたものです。光化学オキシダントは全国的に増加傾向にあり,多くの地域で問題になっています。また,粒子状物質も国内対策が進んでいるにも拘らず依然として問題になっており,平成21年9月には微小粒子状物質に関する環境基準が告示されました。そこで,国立環境研究所は,全国の地方環境研究所50機関と共同して,全国の大気環境時間値データベースを整備し,このデータやモデルデータなどを使用して,光化学オキシダントと粒子状物質の汚染特性や発生原因を,地域と広域,経年変化と高濃度エピソードといった複眼的視点から解明する研究を実施しました。本報告書は,これらの解析結果をとりまとめたものです。本報告書の解析方法や解析結果が,我が国における光化学オキシダントと粒子状物質の汚染特性を解明し,対策を検討する上でお役にたてば幸いです。

 

(アジア自然共生研究グループ 大原利眞)