木に名札をつけました
竹中 明夫
本年2月に環境研構内の樹木に名札を付けました(写真1)。全部で89種,220枚の名札です。「木に名札を付けませんか」という理事長の発案を受け,構内を歩き回って名札を付ける木を選びました。名札には名前のほかに数行の説明を加えました(図1)。常緑か落葉か,高木か低木かといった情報のほか,ちょっとした特徴や豆知識などを書きました。また,近縁な植物のグループである科の名前を記しました。どんな植物の仲間なのかを意識するといっそう興味をもてるし,覚えやすいからです。さらに,もともと日本に自然に生えていたものと外から持ってきたものは区別したいと思い,外来の樹種には原産地を書き添えました。
正門を入ってから本館までの道沿い,地球温暖化研究棟の前,研究本館のいくつかの中庭,おなじく研究本館の南の池のまわり,環境リスク研究棟の前などがとくに多くの名札を付けたエリアです(図2)。歩き回って目にとまる木に名札が付いているように考えて配置しました。調べるうちに,趣向を凝らして樹種を配置している庭や,10種近くの木を連ねた生け垣などに気が付きました。
構内の樹種は89種にとどまりませんが,今回は種類がはっきり分からずに先送りにしたものもあります。たとえばツツジの仲間(ツツジ科ツツジ属)がそうです。日本だけで50種余りの野生種があるのに加え,園芸品種も多数あるのでどの種類かを決めることは簡単ではなく,来年度以降の課題としました。また,めったに人が行かないところの木,短命であと10年はもたないだろうと思われる種類,貧弱な木しかない種類には名札を付けませんでした。そのほか,サクラやツバキは品種までは決められず,「サクラ」「ツバキ」と書くにとどめました。
草とちがって木のありがたいところは,一年中そこに生えていることです。構内を散歩しながら名札で種類を確認しつつ,それぞれの木の四季折々のすがたに目を止めていただければと思います。大きな木なら葉を1枚ちぎりとって観察するぐらいはかまわないでしょう。冬の落葉樹も,冬芽のかたち,枝振り,樹肌など見どころはいろいろあります。じっくり見ていると,派手ではないけれど上品な花が咲いているのを発見することもあるでしょう。ぜひ顔見知りの木を増やしてください。毎日を環境研で過ごす職員だけでなく,当研究所をお訪ねいただくお客様にも構内の散策を楽しんでいただければ幸いです。
執筆者プロフィール
森林生態学が専門で,構内の木の名前はだいだい分かることもあり,楽しんで作業しました。木に名札をつけたり,これからの植栽を考えたりといった仕事はとても心安らぎます。領域長の5年の任期もようやく2年が過ぎました。木々に慰められながら,なんとかあと3年を乗り切れればと思っています。
目次
- 環境研究への期待を受けて【巻頭言】
- ディーゼルナノ粒子曝露実験のための吸入装置の検討【シリーズ重点研究プログラム: 「環境リスク研究プログラム」 から】
- ライダーネットワークによる黄砂観測 −モンゴル編−【研究ノート】
- 大気中超微小粒子(ナノ粒子)と心疾患【環境問題基礎知識】
- 南極レポート(第6回:「越冬交代」)(2008年度 27巻1号)【海外調査研究日誌】
- 「第23回全国環境研究所交流シンポジウム」報告
- 「第27回地方環境研究所と国立環境研究所との協力に関する検討会」 報告
- 平成20年度の地方公共団体環境研究機関等と国立環境研究所との共同研究課題について
- 独立行政法人国立環境研究所公開シンポジウム2008 『温暖化に立ち向かう−低炭素・循環型社会をめざして−』
- 新刊紹介
- 表彰
- 人事異動
- 新着情報メール配信サービス開始のお知らせ
- 編集後記
- 国立環境研究所ニュース27巻1号