「第17回全国環境研究所交流シンポジウム」−内分泌攪乱化学物質の評価手法の現状と展望−
田中 敦
平成14年2月20~21日に,「内分泌攪乱化学物質の評価手法の現状と展望」というテーマで,第17回全国環境研究所交流シンポジウムを開催した。この交流シンポジウムは,「環境研究に関する研究発表,意見交換を通じて地方環境研究所(以下,地環研)と国立環境研究所(以下,国環研)の研究者間の交流を図り,共同研究等の新たな展開に役立てるとともに,環境研究の一層の推進を図ることを目的とする(全国環境研究所交流シンポジウム実施要領)」という趣旨で,第1回目の昭和61年以来,毎年1月から2月頃に開催している。
今回も例年通り,当研究所大山記念ホールにおいて,国環研内に設置しているセミナー委員会の主催により開催した。
今回のシンポジウムのテーマ設定に際しては,地環研各機関の意向を受けて,ダイオキシン類を含む内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)を取り上げた。2年前にもダイオキシン等有害化学物質をテーマとして交流シンポジウムを開催したが,その際は,分析手法の検討・確立に関する研究発表が目立っていた。当時は,環境ホルモンが社会問題として喧伝された時期であり,その時期に開始した研究が,今回のシンポジウムでは,環境動態・バイオアッセイによる評価,動物・生体影響など幅広いテーマに結実していた。
初日は,大気,降下ばいじん,埋立廃棄物中の内分泌攪乱化学物質の分析法・環境動態に関する発表3題に続いて,「内分泌攪乱化学物質の分析法の展望」に関して白石寛明総合研究官から発表があった。その後,バイオアッセイを用いた内分泌攪乱化学物質のエストロゲン活性に関する発表等が4題あり,「内分泌かく乱作用のバイオアッセイによる評価と展望」と題して白石不二雄主任研究員から発表があった。
2日目は,魚類(メダカ,コイ等),両生類(カエル),は虫類(カメ)などの動物に対する影響に関するセッションとヒト(血清,尿,母乳等)への移行・代謝に関するセッションで合計8題の発表がなされ,遠山千春領域長による「内分泌攪乱化学物質の健康リスク研究の展望」でシンポジウムを締めくくった。最後に,国環研の浜田理事から閉会の挨拶があった。
シンポジウム終了後には,例年通り国環研の施設見学会を開催し,55名の方々に所内の研究施設をご覧いただいた。
シンポジウムの参加者は,地環研を含む自治体関係者が96名,環境省から2名,国環研から26名,国環研友の会会員の方々などの合計164名であった。
(たなか あつし,前研究企画官)
【プログラム】
平成14年2月20日(水)
開会挨拶 国立環境研究所理事長 合志陽一
来賓挨拶 環境省大臣官房審議官 山田範保
I.セッション1:内分泌攪乱化学物質の分析法・環境動態
座長:鈴木規之(国立環境研究所)
(1)環境大気中POPsの濃度レベルと挙動について 村山 等ら(新潟県保健環境科学研究所)
(2)降下ばいじん中のダイオキシン類について 内藤宏孝ら(愛知県環境調査センター)
(3)一般廃棄物最終処分場内埋立廃棄物中のダイオキシン類について 半野勝正ら(千葉県環境研究センター)
(4)内分泌攪乱化学物質の分析法の展望 白石寛明(国立環境研究所)
II.セッション2:内分泌攪乱化学物質のバイオアッセイ
座長:青木康展 (国立環境研究所)
(5)三重県内の公共用水域のエストロゲン様物質 岩崎誠二ら(三重県科学技術振興センター保健環境研究部)
(6)下水処理場におけるエストロゲン活性の挙動 小口文子ら(長野県衛生公害研究所)
(7)遺伝子組み換え酵母法を用いた事業所排水からのエストロゲン作用検出の試み 中嶋智子ら(京都府保健環境研究所)
(8)ビスフェノールAの塩素置換体の生成とそのエストロゲン活性 深澤 均ら(静岡県環境衛生科学研究所)
(9)内分泌かく乱作用のバイオアッセイによる評価と展望 白石不二雄(国立環境研究所)
平成14年2月21日(木)
III.セッション3:内分泌攪乱化学物質の動物への影響
座長:堀口敏宏 (国立環境研究所)
(10)魚類を用いた内分泌かく乱化学物質の影響評価について 森 真朗ら(東京都環境科学研究所)
(11)都内河川における魚類の生殖腺異常の実態 和波一夫ら(東京都環境科学研究所)
(12)両生類におけるダイオキシン類の動態 門上希和夫ら(北九州市環境科学研究所)
(13)過剰肢ガエル調査のためのFETAX(アフリカツメガエル胚による催奇形性試験)の結果について 坂 雅宏ら(京都府保健環境研究所)
(14)外因性エストロジェンの生態影響調査を目的としたクサガメビデロジェニンELISAの検討 多田哲子ら(京都府保健環境研究所)
IV.セッション4:内分泌攪乱化学物質のヒトへの影響
座長:米元純三 (国立環境研究所)
(15)ヒト血清及び尿中の内分泌かく乱化学物質の挙動 寺澤潤一ら(長野県衛生公害研究所)
(16)環境および生体試料中のPCB異性体パターン 中野 武ら(兵庫県立公害研究所)
(17)内分泌攪乱化学物質の健康リスク研究の展望 遠山千春(国立環境研究所)
閉会挨拶 国立環境研究所理事 浜田康敬
V.施設見学会 (所内各施設等)
目次
- 人間の立場に立つ環境研究
- 地球温暖化の影響を予測するシリーズ重点特別研究プロジェクト:「地球温暖化の影響評価と対策効果プロジェクト」から
- ミリ波放射計によるオゾン変動の観測シリーズ重点特別研究プロジェクト:「成層圏オゾン層変動のモニタリングと機構解明プロジェクト」から
- ダイオキシンによる生殖機能の異常はどのくらい低い濃度で起きるのか?研究ノート
- 「COP(コップ)とは?」環境問題基礎知識
- 「第21回地方環境研究所と国立環境研究所との協力に関する検討会」報告
- 独立行政法人国立環境研究所公開シンポジウム2002 「環境 温故知新 −地球環境の履歴から将来を考える−」について
- 新刊紹介
- 表彰・人事異動
- 編集後記