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国立環境研究所研究報告R-145-'99 「CDM・共同実施におけるベースライン設定方法に関する議論の概要」(平成11年5月発行)

 1997年に採択された京都議定書では,先進国に対して,2008~2012年の温室効果ガス排出量の数量目標が設定され,その目標達成に,クリーン開発メカニズム(CDM),先進国間の共同実施,排出量取引の利用が認められた。なかでも前2者は,複数国の共同プロジェクトによって実現された排出量削減分を当該諸国間で分配するという,国際協力に経済的インセンチブを付加した制度として注目されている。しかし,「プロジェクトなかりせば」時の排出量(ベースライン)と,プロジェクト実施後の実際の排出量との差をプロジェクトによる削減分と考えることが基本とされているが,肝心のベースライン設定方法が確定されていない。本報告書は,CDM及び共同実施におけるベースライン設定方法に関する世界の主要な研究をレビューするとともに,この制度の試行段階として位置づけられる共同実施活動の1998年末時点までの動向をまとめたものである。

(社会環境システム部 川島康子/地球環境研究センター 山形与志樹)

国立環境研究所研究報告R-146-'99
「十和田湖の生態系管理に向けて」(平成11年5月発行)

 本報告書は水産庁さけ・ます資源センター,青森県環境保健センター,秋田県環境技術センター,青森県内水面水産試験場および秋田県水産振興センターと共同で行っている平成10~12年環境庁国立機関公害防止等試験研究「生物間相互作用を考慮した適切な湖沼利用と総合的な湖沼保全を目指す基礎的研究」の中間報告である。十和田湖では1980年代半ばにCOD濃度が環境基準値の1ppmを越え,透明度の低下が認められ富栄養化が懸念されている。一方,同じ頃からワカサギが増え,同湖の重要な水産資源であるヒメマス漁が不振になったが,その原因が特定できないでいた。過去の文献調査と共同研究によりワカサギの導入がヒメマスとの餌をめぐる競争を引き起こし,動物プランクトン群集が小型化しクロロフィルa量の増加ならびに透明度の低下を招いた事実を科学的に証明した。さらに,十和田湖の保全に向けて,ヒメマスの適正な資源量,沿岸域の生態系の構造,河川からの負荷量等を明らかにした。

(地域環境研究グループ 高村典子)