公開シンポジウム報告
須賀 伸介
環境月間の行事の一環として,6月8日に国立環境研究所公開シンポジウム’99が東京都内のイイノホールで開催された。この行事は,研究所の環境問題への取り組みをより広く公開することを目的に,昨年から東京都内に会場を設けて行っている。本年は,「21世紀における環境研究の展望」という主題のもとに,21世紀の環境研究において重要と考えられる3つのテーマを設定した。
シンポジウムは別表のプログラムにしたがって進められた。大井玄所長の開会挨拶に引き続く第1セッションでは,地球温暖化研究への取り組みを紹介した。午後の第2,第3セッションではそれぞれ,生物多様性,循環型社会の構築についての問題を取り上げた。いずれの発表においても豊富なデータやそれらの分析結果をもとに,分かりやすく説明が行われた。また,来訪者との間では活発な質疑応答があった。
研究発表と並行して20題のポスター発表がホールロビーで行われた。こちらでは,講演発表では取り上げることができなかった話題を中心に発表を行った。各発表者は工夫を凝らした図表を提示しながら,来訪者との間で熱心な討論を行っていた。最後は合志陽一副所長の講演で締めくくられた。
環境問題への関心の高さを反映してか,本年も事前申し込み者数が会場の定員を越え,当日の所外からの参加者数は昨年を大幅に上回った。このように会場は終日にぎわい,成功のうちにシンポジウムを終えることができた。
プログラム
総合司会 小野川和延(主任研究企画官)
10:30~10:40 開会挨拶 大井 玄(所長)
10:40~11:50 「21世紀の地球温暖化研究には何が必要か」
・地球温暖化はどこまでわかっているか? 井上 元(地球環境研究センター)
・海の役割と陸の役割 野尻 幸宏(地球環境研究グループ)
司会:中根 英昭(大気圏環境部)
11:50~12:40 特別講演
「21世紀の文化-環境倫理の視点から」 加藤 尚武(京都大学教授)
12:40~14:00 休憩 ポスタ-セッション
14:00~15:10 「生物多様性はどうすれば守れるか」
・野生生物が絶滅する仕組みを探る 椿 宜高(生物圏環境部)
・熱帯林の保護と利用の両立をめざして 奥田 敏統(地球環境研究グループ)
司会:渡邉 信(生物圏環境部)
15:10~15:40 休憩 ポスタ-セッション
15:40~17:00 「ピコグラムの反乱とギガトンの氾濫」-低リスク・循環型社会づくりをめざして-
・微量化学物質とどうつきあうか 中杉 修身(化学環境部)
・循環型社会へ向けてモノの流れを見つめ直す 森口 祐一(社会環境システム部)
・山積する環境問題の重大性を誰が判断するのか? 安井 至(東京大学教授)
司会:後藤 典弘(社会環境システム部)
17:00~17:30 「21世紀における環境研究の展望」 合志 陽一(副所長)