編集後記
自分の悪文を棚にあげ,他人の書いた原稿に朱筆を入れるという因果な仕事が回ってきたのも,日頃の行いがよろしくないためと観念するしかないだろう。集まってきた原稿を見て「ダブちゃん(自称?)のよりも分からないのを書く人もいるのね」なんて言われると,安心もならず複雑な気がする。こんなことをする羽目になったとき,いつも石川淳の短編小説『紫苑物語』を思い出す。それは怪しくも妖しい物語。発端は朱筆である。主人公は中世(であろう)の歌詠みの家に生まれ,幼少のころから歌作の修行を積まされる。ある日,苦心のすえ作り上げた歌を師匠でもある父親に見せる。父親が朱筆を入れる。なんと考えに考えた末に選んだ言葉が消され,熟慮のすえに捨てた語が書き込まれる。父親が置いた朱筆を取りその顔に投げつける。筆が面上におどる。歌を捨てた主人公はやがて家を去る。ニュースを良くするためとはいえ,他人の書いた文章に手を入れることはおろそかにはなし得ない。(K.O.)
目次
- 新しい課題(地球環境変化)に対応するために巻頭言
- 退任に際して − 基礎研究のすすめ −
- 研究生活を振り返って
- 環境負荷の構造変化から見た都市の水質問題の把握とその対応策に関する研究プロジェクト研究の紹介
- 微小試料中の元素の存在量および同位体比の精密測定法の開発と応用省際基礎研究の紹介
- "Thermal decomposition of tetrachloroethylene" Akio Yasuhara Chemosphere, 26, 1507-1512 (1993)論文紹介
- "Dynamics and energy balance of the Hadleycirculation and the tropical precipitation zones: Significance of the distribution of evaporation." Atusi Numaguti:Journal Atmospheric Science, 50, 1874-1887.(1993)論文紹介
- 森林の小さな生物の消長 − 倒木上の植生遷移 −研究ノート
- 河床付着生物膜による栄養塩の一時貯留・変換機能研究ノート
- 国際環境協力への期待 −タイ環境研究研修センターにおける経験−ネットワーク
- 新刊・近刊紹介