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環境負荷の構造変化から見た都市の水質問題の把握とその対応策に関する研究

プロジェクト研究の紹介

稲森 悠平

 都市部における生活様式の変化や多様化は,排水や廃棄物の質や量を大きく変化させ,第3次産業レストラン等の高濃度油分含有排水や,都市周辺地域における小規模未規制排水による表流水系の汚染を引き起こす可能性が高い。これらの水問題に対する新たな対応策とその評価手法を明らかにすることを目的に,本特別研究(平成5〜8年度)は,(1)環境負荷の構造変化とその都市環境に及ぼす影響把握を行い,(2)首都圏を中心とする水質問題の改善や未規制排水問題に対する新たな対応策とその評価を明らかにして,(3)都市の水質問題に対する行政施策に有用な知見を提供する(図)。4年間の年次計画を課題ごとに示すと次のようである。


図  首都圏における地域特性に応じた水質保全対策に係わる研究

課題1.環境負荷の構造変化の要因の同定とそれに伴う都市の水質問題の実態解明に関する研究:環境負荷に構造変化をもたらす要因の究明と都市域における水質汚濁負荷に関するデータベースの基本フレームの作成,首都圏・阪神圏を対象とした業種別水質汚濁負荷に関する経年データベースの作成,首都圏・阪神圏地域を対象とした都市域の面的拡大の水質汚濁負荷の変化に及ぼす影響の定量的把握,都市域における未規制排水の時間・空間変化とこれに伴う表流水への水質汚濁負荷の発生構造との関連性の解明を行っている。

課題2.環境負荷の構造変化に伴う都市水質問題の予測に関する研究:統計解析データおよび実験データをもとにした環境負荷の構造変化と都市水質問題との関連性の解析,水環境への負荷の発生量の時間・空間変化と水質の変化との関連性を説明できるモデルの構築,モデルを用いた都市の水質の予測を行い得られた結果とフィールド観測結果やモニタリングデータと比較することによるモデルの検証,モデルを用いた都市域における今後考えられる環境負荷の構造変化と都市水質問題との関連性の予測を行う。

課題3.都市水質問題の新たな対応策に関する研究:レストラン等の高濃度油分含有排水の処理対策および都市の流域形態を利用した自然浄化システム等の検討について,対応策を実施したときの環境負荷への影響,C・N・P比のバランスが悪く生物処理が困難な排水処理対策の検討と小規模事業場排水の負荷削減対策を行ったときの環境負荷への影響,小規模未規制排水の有機物,窒素,リンの同時除去システムおよび汚泥の減量化を同時に検討した場合の総合的な対応策の検討,都市域における小規模未規制排水への対応策を総合的に実施するために必要な社会システムの研究および都市計画の予測的研究を行う。

課題4.都市水質汚濁負荷の削減効果の評価に関する研究:都市水質環境の対策評価を行うための基本的な手法の検討,都市水質環境に影響を及ぼすと考えられる各種の環境負荷の個別的な対策評価に基づいた都市水質汚濁負荷への影響の程度の定量的な把握,都市水質環境に影響を及ぼすと考えれる各種の環境負荷の総合的な解析を行い都市部の水路,池沼,都市河川,内湾,湖沼の水質改善効果の評価,都市の将来計画を考慮に入れた都市水質環境の予測評価を行った場合の各種シナリオの提案等を行う。期待される成果は次のとおりである。

 本特別研究を行うことにより(1)都市域の排水,廃棄物等の質的,量的な変化が水質に及ぼす影響,(2)水質の地域分布,人為起源,自然起源の環境負荷寄与率,局所的な高濃度表流水汚染等の動態の把握,(3)統計解析データや観測データ,実験室データ等を用い,かつ水生生物実験施設,大型淡水マイクロコズム,臨湖実験施設を活用することによる都市の水質予測,(4)地域特性および排水特性に応じた小規模排水処理方式の検討を行うことによる,小規模未規制排水等の有機物,窒素,リンの同時除去システム等の提案およびこれらのシステムの都市および周辺地域への適正立地評価手法の開発,(5)都市域の未規制排水対策等による水質汚濁負荷の削減効果の評価による各種シナリオの提案等の成果が期待できる。

 本特別研究を推進するに当たっては多くの自治体の環境・公害研究所と共同研究を行う予定である。

(いなもり ゆうへい,地域環境研究グル−プ水改善手法研究チーム総合研究官)