環境遺伝子工学実験棟
ネットワーク
近藤 矩朗
遺伝子工学を環境保全に利用したり,遺伝子を組換えた生物(組換え生物)の環境中での挙動や影響を検討することを目的に環境遺伝子工学実験棟が建設され,このたび稼働を開始した。本施設の物理的封じ込めレベルはPlおよびP2であり,人間の健康に対しては極めて安全性の高い実験のみが行われる。
本施設は2階建てで,1階には微生物,植物,動物の遺伝子組換え実験室がある。それぞれに培養室,栽培室,飼育室が設置されていて,組換えた生物の育成ができる。また,組換え微生物の模擬的生態系における挙動や他の生物に対する影響を研究するための環境影響評価実験室がある。ここには土壌環境実験装置,水系マイクロコズム等が設置される予定である。2階はラジオアイソトープの管理区域になっており,生化学実験,遺伝子の構造解析,動物細胞の培養のための実験室がある。また,l階に分析機器室があり,DNAやタンパク質の構造を解析するための装置が設置されている。さらに,得られた結果を既知のデータと比較したり,遺伝子の構造を解析するための遺伝子構造解析室がある。
遺伝子を環境保全に利用するための研究には,遺伝子操作による環境浄化生物,環境指標生物の開発等があるが,近年,遺伝子解析技術の応用範囲が急速に拡大し,遺伝子の多様性の研究や,化学物質のリスク評価のための研究なども本施設で実施される予定である。
(こんどう のりあき,地域環境研究グループ 新生生物評価研究チーム総合研究官)
目次
- 研究のネットワーク化巻頭言
- 環境研究と女性論評
- 環境を見る化学の目をみがく論評
- ディーゼル排気による慢性呼吸器疾患の発症機序の解明とリスク評価に関する研究プロジェクト研究の紹介
- 森林破壊が野生生物種の減少に及ぼす影響の機構に関する研究(熱帯林の撹乱による林床性鳥類群集構造の変化)プロジェクト研究の紹介
- ”A method for micro-determination of total microcystin content in waterblooms of cyanobacteria (blue-green algae)"Tomoharu Sano, Fujio Shiraishi, Kunimitsu Kaya:International Journal of Environmental Analytical Chemistry, 49, 163-170(1993)論文紹介
- ("Effect of arsenic pollution on soil microbial population" Mikiya Hiroki: Soil Science and Plant Nutrition, 39, 227-235 (1993))"Arenic fungi isolated from arsenic-polluted soils" Mikiya Hiroki and Yoshihito Yoshiwara:Soil Science and Plant Nutrition, 39, 237-243 (1993)論文紹介
- 臭化メチルは成層圏オゾン層にどのような影響を与えるのか研究ノート
- オゾン層国際研究集会(Tsukuba Ozone Workshop)ネットワーク
- 表彰・主要人事異動
- 編集後記