FAQ2. インベントリの算定方法
・一般的な算定方法
Q2-1 温室効果ガス排出量はどのように算定していますか?
A
温室効果ガスインベントリにおける温室効果ガス排出量は、直接大気を測定するのではなく、統計データなどから引用する人為的な生産や消費などに関する活動量に、研究結果などに基づく単位活動量当たりの排出量(排出係数)をかけて算定します。更にこの排出量は、地球温暖化係数(GWP)をかけることでCO2換算値にします(Q2-2をご参照ください)。
例えば、稲作によるCH4の排出量(CO2換算)は、
「稲作によるCH4の排出量(CO2換算)=作付面積(活動量)×作付面積当たりのCH4排出量(排出係数)×CH4の地球温暖化係数」
で表されます。
なお、各排出源における温室効果ガス排出量の算定は、IPCCガイドラインに基づく方法論を各国共通で適用することになっていますが、既定の排出係数などを用いた簡易な算定方法も準備されている一方、重要な排出源(キーカテゴリー)については、より詳細なデータや国独自の排出係数、モデルなどを用いた高度な算定方法を選択することが求められます。例えば、日本において稲作によるCH4はキーカテゴリーの一つであり、地域や水管理の状況などに応じて活動量及び排出係数を細かく区分したうえで排出量を算定しています。各国が選択した算定方法については、各国の国家インベントリ報告書(NID)に記載されています。
・二酸化炭素以外の温室効果ガス
Q2-2 「CO2換算」とはどのように算出した値ですか?
A
「CO2換算」は、「地球温暖化係数(GWP、Global Warming Potential)」を、各温室効果ガスの排出量に乗じて算出した値です。GWPは、ある一定期間にそれぞれの温室効果ガスが地球温暖化へおよぼす影響について、CO2の影響を1としたときの比率を表しています。 この係数は、パリ協定締約国間の決定(18/CMA.1)等により、IPCC第5次評価報告書(2013)に示された値のうち、排出後100年間の影響を考慮したものを用いることが義務付けられています(2024年提出以降)。メタン:28、一酸化二窒素:265などです。
わが国の「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度などでもIPCC第5次評価報告書の値が用いられています。
なお、2013年以降の京都議定書の第二約束期間(2015年提出以降)はIPCC第4次評価報告書(2007)のGWP(メタン:25、一酸化二窒素:298など)が、第一約束期間(2010~2014年提出)には、IPCC第2次評価報告書(1995)のGWP(メタン:21、一酸化二窒素:310など)が使用されていました。
・換算単位
Q2-3 二酸化炭素排出量は、kgやトンで表現されることが多いですが、炭素トンという表現も見かけます。どうちがうのでしょうか?
A
二酸化炭素はCO2という化学式で表され、炭素1原子と酸素2原子からなる分子量約44の気体です。温室効果ガスインベントリでは、CO2の重量を炭素と酸素を含めた重量で表現します。
一方、地球の炭素循環を研究する自然科学分野では、大気中の二酸化炭素が陸上植物や土壌有機物に変わりながら循環することを表現するため、二酸化炭素の重さでは誤解を招きます。そのため、炭素だけの重量で表現します。
IPCCの第4次評価報告書(2007)によれば、世界の化石起源CO2排出量は2000~2005年には年間72億炭素トン(69億~75億炭素トン)でした。これは、二酸化炭素の重さに換算すると264億トン(253億~275億トン)になります。炭素トンからCO2トンへは二酸化炭素の分子量を炭素原子の原子量の比、44÷12=3.67を係数として変換します。つまり、CO2トンは炭素トンの3.67倍の数値になります。
炭素トンはtCと表現され、世界排出量では10億を意味するG(ギガ)をつけて「GtC」あるいは「Gt炭素換算」という表現を使います。また、世界排出量を二酸化炭素の重さで表す場合は、GtCO2、あるいは、GtCO2eq.(CO2換算の意味)という表現を用います。また、より小さい排出量の表現にはMtCO2(メガトンCO2)=100万トンCO2もよく使われます。