FAQ1. 温室効果ガスインベントリ
Q1-1 温室効果ガスインベントリとは何ですか?
A
ある期間内に特定の物質(大気汚染物質や有害化学物質など)がどこからどれくらい排出されたのかを示す目録を、排出インベントリといいます。温室効果ガスインベントリはその一種で、二酸化炭素(CO2)など地球温暖化の原因となるガス(温室効果ガス)の排出量や吸収量を、排出源・吸収源ごとに示すものです。一国が一年間に排出あるいは吸収する温室効果ガスの量を示すものは「国家温室効果ガスインベントリ」と言います。
パリ協定の下では、開発途上国を含む全ての締約国は、「パリ協定第13条に規定する行動及び支援に関する透明性枠組みのための方法、手続及び指針」(決定18/CMA.1 附属書)に従って自国の温室効果ガスインベントリを定期的に作成し、国連に提出する義務を負っており、各締約国が国際的に表明する排出削減目標(Nationally Determined Contribution(NDC):国が決定する貢献)の進捗は、各国の温室効果ガスインベントリをもとに評価されます。
報告対象となるガスは、CO2、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)、パーフルオロカーボン(PFCs)、六ふっ化硫黄(SF6)、三ふっ化窒素(NF3)の7種類です。原則1990年からインベントリ提出時点の2年前までの各年の排出・吸収量の報告が求められています。
Q1-2 温室効果ガスインベントリは、温室効果ガスインベントリ報告書(NID)と共通報告表(CRT)の2つから構成されると伺いましたが、これらはどのようなものですか?
A
パリ協定の下で、開発途上国を含む全ての締約国は、定期的に国家温室効果ガスインベントリ報告書(NID = National Inventory Document)と共通報告表(CRT = Common Reporting Tables)の二つを国連に提出することが義務付けられています。
NIDとは、排出・吸収量の算定方法、算定に用いたデータの出所、インベントリ作成体制や品質保証・管理の手続きなどについて、詳細な説明を記した報告書です。
CRTとは、定量情報(排出・吸収量の算定結果や、各排出・吸収源における活動量といった算定に用いたデータ)を報告するための、標準化された表のセットです。締約国は、これらの表に必要な数値情報を記載し、電子媒体によって提出します。
NIDとCRTは、各国が2年おきに作成・提出する隔年透明性報告書(Biennial Transparency Reports)の一部として、または独立した報告書・報告表として、UNFCCCのホームページに順次公表されます。
パリ協定移行前の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下で各締約国が作成した温室効果ガスインベントリ報告書もUNFCCCのホームページに公表されています。非附属書I締約国のインベントリは、各国が数年おきに作成・提出する国別報告書(National Communications)、及び隔年更新報告書(Biennial Update Report)の一部として公表されています。附属書I締約国のインベントリは、NIR及びCRF(パリ協定下のNID及びCRTに相当)が公表されています。
Q1-3 温室効果ガスインベントリで排出・吸収量を計算している分野はいくつあるのでしょうか?
A
パリ協定の下で世界各国が作成・公表している温室効果ガスインベントリにおいて排出・吸収量の算定が求められる分野は、「エネルギー」、「工業プロセス及び製品の使用」、「農業」、「土地利用、土地利用変化及び林業(LULUCF)」、「廃棄物」の5分野です。
各分野、排出・吸収源別のカテゴリー・サブカテゴリーに細分化して排出・吸収量を計算することが求められています。例えば、農業分野は、「消化管内発酵」、「家畜排せつ物の管理」、「稲作」、「農用地の土壌」等のカテゴリーに細分化されています。「家畜排せつ物の管理」カテゴリーはさらに「牛」、「豚」、「鶏」、「馬」等の家畜別サブカテゴリーに細分化されています。各分野の排出・吸収量が、どのようなカテゴリー・サブカテゴリーに細分化・計算されているかは、
「日本国温室効果ガスインベントリ報告書 (NID)」をご覧ください。
Q1-4 HFCs(ハイドロフルオロカーボン)、PFCs(パーフルオロカーボン)にはどのような物質が含まれますか?
A
パリ協定及び国連気候変動枠組条約の下での報告対象となっているHFCs、PFCsとその地球温暖化係数(GWP)は以下の通りです。GWPは、温室効果ガスインベントリの報告ルールの改定時に、その時点でのIPCCの最新値が採用されています。
表 HFCsとPFCsとその地球温暖化係数(GWP)
温室効果ガス |
地球温暖化係数(GWP) |
||||
パリ協定1) |
京都議定書 |
||||
第二約束期間2) |
第一約束期間3) |
||||
ハイドロフルオロカーボン(HFCs) |
|||||
|
HFC-23 |
CHF3 |
12400 |
14800 |
11700 |
HFC-32 |
CH2F2 |
677 |
675 |
650 |
|
HFC-41 |
CH3F |
116 |
92 |
150 |
|
HFC-43-10mee |
C5H2F10 (CF3CHFCHFCF2CF3) |
1650 |
1640 |
1300 |
|
HFC-125 |
C2HF5 (CHF2CF3) |
3170 |
3500 |
2800 |
|
HFC-134 |
C2H2F4 |
1120 |
1100 |
1000 |
|
HFC-134a |
C2H2F4 |
1300 |
1430 |
1300 |
|
HFC-143 |
C2H3F3 |
328 |
353 |
300 |
|
HFC-143a |
C2H3F3 |
4800 |
4470 |
3800 |
|
HFC-152 |
C2H4F2 |
16 |
53 |
- |
|
HFC-152a |
C2H4F2 |
138 |
124 |
140 |
|
HFC-161 |
C2H5F |
4 |
12 |
- |
|
HFC-227ea |
C3HF7 (CF3CHFCF3) |
3350 |
3220 |
2900 |
|
HFC-236cb |
CH2FCF2CF3 |
1210 |
1340 |
- |
|
HFC-236ea |
CHF2CHFCF3 |
1330 |
1370 |
- |
|
HFC-236fa |
C3H2F6 (CF3CH2CF3) |
8060 |
9810 |
6300 |
|
HFC-245ca |
C3H3F5 (CH2FCF2CHF2) |
716 |
693 |
560 |
|
HFC-245fa |
CHF2CH2CF3 |
858 |
1030 |
- |
|
HFC-365mfc |
CH3CF2CH2CF3 |
804 |
794 |
- |
|
パーフルオロカーボン(PFCs) |
|||||
|
PFC-14 |
CF4 |
6630 |
7390 |
6500 |
PFC-116 |
C2F6 |
11100 |
12200 |
9200 |
|
PFC-218 |
C3F8 |
8900 |
8830 |
7000 |
|
PFC-31-10 |
C4F10 |
9200 |
8860 |
7000 |
|
PFC-318 |
c-C4F8 |
9540 |
10300 |
8700 |
|
PFC-41-12 |
n-C5F12 |
8550 |
9160 |
7500 |
|
PFC-51-14 |
n-C6F14 |
7910 |
9300 |
7400 |
|
PFC-91-18 |
C10F18 |
7190 |
>7500 |
- |
|
PFC-c216 |
c-C3F6 |
9200 |
>17340 |
- |
注1) 出典: IPCC第5次評価報告書(100年間の影響値)、2023年提出から使用している国もいる
注2) 出典: IPCC第4次評価報告書(100年間の影響値)
注3) 出典: IPCC第2次評価報告書(100年間の影響値)