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第6回NIES国際フォーラムを開催しました

第6回NIES国際フォーラムの背景

  国立環境研究所(NIES)では、東京大学、アジア工科大学院及びアジアの様々な研究機関とともに、アジアの持続可能な未来に関して目指すべき方向についての議論を促進することを目的に、2015年度からNIES国際フォーラムを毎年度開催しています。また、この国際フォーラムを通じて、アジア地域の研究機関との研究ネットワークをさらに発展・充実させることを目指しています。
 「第6回NIES国際フォーラム/6th International Forum on Sustainable Future in Asia」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のため2021年1月19日〜20日にオンライン形式にて開催しました。過去の国際フォーラム開催地における共催機関の研究者のほか国内外の研究者や関係機関の関係者など講演者も含めて2日間でのべ約500名以上の参加者を得て、アジアの環境問題について様々な角度から発表と議論が行われました。
  国際社会は今、持続可能な社会の実現に向けた動きを加速しています。2015年には第3回国連防災世界会議で「仙台防災枠組2015-2030」が、同年の国連サミットで「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択され、COP21では「パリ協定」が合意されました。私たちが住むアジアも、経済と環境の両面において持続可能な地域へと変わっていくことが求められています。一方で2020年に全世界を襲ったCOVID-19のパンデミックは、経済のみならず地球環境問題への取り組みにも大きな影響を及ぼしました。このような公衆衛生と世界経済の危機的な状況において、気候変動への対応、環境健康・衛生の問題、持続可能な開発目標と資源、廃棄物の問題などの重要性はより大きなものとなっています。
  これらを踏まえて、今回のフォーラムでは現代そしてこれからのアジア地域で重要な課題である「COVID-19後の地球環境研究」、「アジア諸国の健康問題における環境要因」、「アジアにおける持続可能な消費と生産 (SCP)」の三つのテーマを取り上げました。

(1日目)専門家分科会

  セッション1(COVID-19後の地球環境研究)では、アジアの7カ国から8名のパネリストを招待し発表を行いました。各国での陸域生態系を中心とした観測研究の現状についての報告がありました。モンゴルの草原やインドネシアの熱帯泥炭林など日本にはない生態系での環境研究での課題や取り組みを始めとして、貴重な情報を共有する機会となりました。また、パンデミックを超えて、社会をより強靱なものへと変革させるために、科学者が意識すべきことについての提言などもありました。

Session1の様子

  セッション2(アジア諸国の健康問題における環境要因)では、現在の環境衛生上の課題、環境中の化学物質及び汚染物質のリスクに関する最新の知見を共有し、アジア諸国全体に環境研究ネットワークを拡大することについて議論しました。 ディスカッションでは、COVID-19による感染拡大の状況下における次世代の教育、関係する省庁間における情報集約・共有と協力の重要性、そして政府の方針に基づく国民の意識向上や行動変容の重要性が強調されました。

Session2の様子

  セッション3(アジアにおける持続可能な消費と生産(SCP))では、SDGsの目標12「Responsible consumption and production(つくる責任つかう責任)」を達成するために重要であるSCPに関する研究成果が示されました。商品の生産から消費、廃棄までの流れ、それらを支える政策について、国内外で実施したワークショップ、バックキャスティングによるシナリオデザイン、現地調査によるエネルギー・廃棄物問題の現状、サーキュラーエコノミーにも触れながらSCP政策に関する幅広い議論がなされました。

Session3の様子

(2日目)オープンシンポジウム

  第2日目のオープンシンポジウムでは、最初に主催であるNIESより渡辺理事長、そして共催機関であるアジア工科大学院アジア太平洋地域資源センターの塚本所長から開会の挨拶がありました。それぞれ今回のフォーラムの開会を祝すとともに、展開される議論への期待が添えられました。続く基調講演では、まずマレーシア工科大学のHo Chin Siong教授からマレーシアにおける環境行動計画に関する知見が紹介されました。次に韓国環境政策評価研究院のMyeong博士より、韓国における気候変動適応策とグリーンニューディールについて共有され、最後に共催機関である東京大学未来ビジョン研究センターの福士教授よりアジアの都市における排水モニタリングについての講演をしていただきました。
  後半では1日目の分科会セッションでの議論が報告された後に、基調講演の3名に加えて住 東京大学名誉教授(NIES前理事長)、ミャンマーの公衆衛生大学Than Htut名誉教授、東京大学 藤田壮教授、AIT 塚本所長、NIESからは増井室長、増冨主任研究員を招き、森口理事をファシリテーターとしてパネルディスカッションを行いました。

東京会場の様子
つくば会場の様子

  パネルディスカッションでは新しい価値観、科学の不完全さ、社会科学の必要性といった通常とは異なる様々な視点からコロナ禍後の地球環境研究について議論され、オンライン視聴者からの質問にも答える形で進められました。最後には渡辺理事長による取りまとめで締めくくられました。

パネルディスカッションの様子

終わりに

  今年の国際フォーラムは過去5年間の参加機関を中心に20の研究機関から研究者にオンライン形式で登壇いただきました。これまでは開催国内の研究者・学生の参加が中心でしたが、ヨーロッパ、アメリカを含め多くの国から多様な属性の方々にご視聴いただき参加者の裾野が広がりました。今後のフォーラムでも効果的にオンラインを活用して国際環境研究に関する情報発信の強化や各国との研究連携の深化を図ってまいります。

(写真・成田正司・志賀薫(企画部広報室))

会議の様子