閣僚級会合始まる
今日(12月6日)の午後から、閣僚級会合が始まりました。閣僚級会合の開会にあたり、クリスティーナ・フィゲレス条約事務局長、潘基文国連事務総長、ジェイコブ・ズマ南ア大統領がスピーチを行いました。
フィゲレス条約事務局長は、ダーバン会合開会から今日までに、国家適応計画、緑の気候基金など、カンクン合意下の重要事項について交渉が進展したことを各国首脳/閣僚に紹介しました。他方、「見解が分かれる政治的な問題に取り組まねばならないときがきた」として、首脳/閣僚のガイダンスのみならず、積極的な関与をも求めると述べました。この「政治的な問題」とは、長期的な資金支援のあり方、京都議定書第2約束期間の設定の可否、条約の下での包括的な排出削減の枠組みのあり方、を指します。そして、最後に、各国首脳/閣僚を「あなた」(you)と呼び、「温暖化影響に脆弱な環境に暮らす人々は、あなた方からの解決策を必要としています。そして、将来世代の人々は、あなた方からの見識のある贈り物を必要としています」とスピーチを締めくくりました。
潘基文国連事務総長は、多くの国における深刻な経済不況の存在や、政治体制の違い、そして、温暖化対策の優先順位の違いによって、地球温暖化問題の解決に向けた包括的な合意が阻害されることがあってはならないと述べました。また、科学的知見は明確であるとして、各国は、高い目標を持ち続け、モメンタムを維持すべきであると発言しました。そして、ダーバン会合の成果として期待することとして、①カンクンで合意されたことの実施、②長期及び短期の資金支援制度の具体的な進展、③京都議定書を温暖化対処の枠組みとして活用し、空白期間を作らないこと、④すべての国にとって効果的で公平な、包括的かつ法的拘束力ある温暖化対策のための合意に向けたビジョン、の4つを挙げました。
ズマ南ア大統領は、多国間協調主義、環境十全性、共通だが差異ある責任原則、応能負担原則などの諸原則は、これまでずっと、温暖化交渉の基盤として機能し続けてきたと指摘し、真に締約国主導の交渉プロセスを通じて、これら諸原則に立ち返ることこそが、信頼性のある温暖化対処のための国際枠組みを構築する道であると述べました。最後に、「協力することだけが、今日、将来を守ることを可能にする」とダーバン会合のスローガンを再度強調しました。
続いて、各国首脳/閣僚レベルと各交渉グループの代表が発言しました。各交渉グループ代表による発言内容は、以下の通りです。
アルゼンチンのダロット外務副大臣は、途上国グループを代表して、京都議定書第2約束期間の設定は、温暖化対策の基盤として重要であり、途上国もこれらの努力と同等の目標で参加する必要があると述べました。
ヘデゴー欧州委員(気候変動担当)は、EUは、京都議定書第2約束期間を受け入れる用意があると述べました。コロレツ環境大臣(ポーランド)は、地球規模の包括的かつ法的拘束力ある枠組みにつながるロードマップ(工程表)を作ろうと呼びかけました。同大臣は、京都議定書第2約束期間の下での排出削減が限られた数の国で行われることは、対策をしないことの言い訳にされるべきではないと述べました。また、昨年のカンクン会合で合意されたことがすべて実施されることを期待すると発言しました。
オーストラリアのコンベット気候変動・エネルギー効率化担当大臣は、アンブレラ・グループ(EU以外の先進国による交渉グループ。日本もメンバー国のひとつ)を代表して、アンブレラ・グループのメンバー国全体で短期資金として200億米ドルを提供したとし、世界全体での温暖化対処の枠組みを実現するために、ダーバン合意をサポートする用意があると発言しました。
ガンビアのシラー森林及び環境大臣は、最後発発展途上国(LDC)を代表して、温暖化の影響による深刻な影響を受けている国の立場としては、いくつかの国が温暖化対策を2015年あるいはそれ以降に遅らせようとしているが、なぜそのようなことができるのか不思議に思うと発言しました。
グレナダのフッド外務大臣は、小島嶼国連合を代表して、小島嶼国のような、温暖化影響に脆弱な国々にとっては、ルールに基づいた多国間の枠組みが不可欠であると強調しました。同大臣は、京都議定書第2約束期間の設定についてダーバン会合では最終的に解決しないとする提案につき、懸念を表明しました。また、京都議定書非締約国を対象とした、京都議定書と並行する新議定書が必要であると述べました。
そして、今日の閣僚級会合の後、COP17/CMP7議長によるストックテイキング会合が開催されました。
ヌコアナ=マシャバネCOP議長は、COP議題と緑の気候基金に関する協議の進捗状況について報告しました。
メーシー議定書特別作業部会(AWG-KP)議長は、とりわけ、京都議定書第2約束期間の長さや数値目標の形式、及び、京都議定書下の制度(特にCDM)について、作業をさらに進展させる必要があると強調しました。さらに、同議長は、京都議定書第2約束期間を設定するか、並びに、京都議定書のあり方とダーバン合意とをどのように関連させるかについては、政治決定が必要であると述べました。
リーフシュナイダー条約特別作業部会(AWG-LCA)議長は、様々な問題について、議論が進んできており、ダーバン会合の成果の諸要素がより明確になってきたとの見解を示しました。同議長は、共有ビジョン(2050年の長期目標など)やそのレビュー(レビューの範囲、レビューをどのように行うか)といった重要な問題についての議論が進んでいないと述べました。
閣僚級会合において、EUが、包括的な温暖化対処のための国際枠組みの第一段階として、条件なしで議定書第2約束期間を受け入れる用意があることを明確に表明したほかは、各交渉グループ/各国はこれまでの主張を変えていないようです。フィゲレス条約事務局長やメーシーAWG-KP議長の発言にもあったように、この停滞を打破するのは政治的意思しかないように思われます。
明日(7日)も、閣僚級会合が開催されます。明日の午前中、日本の細野豪志環境大臣がステートメントを行う予定です。閣僚級会合と並行して、テーマごとの小グループでの交渉(事務レベル)も引き続き行われます。
参考資料
執筆:久保田 泉
(国立環境研究所 社会環境システム研究センター)
※全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)ウェブサイトより転載