ダーバン会合の折り返し地点:議論はどこまで進んだか?
筆者は、ホテル—会議場の往復には、シャトルバスを使っています。昨年のカンクン会合では、シャトルバスが決められた通りのバス停にしか止まらず(本来、バスとはそういうものだと思いますが…)、目の前をバスが通りすぎていってしまう、などと参加者の一部から不満の声もあがったようですが、今回は極めて柔軟な運用がなされています。COPの参加者バッジをつけた人が道端で手を振ればバス停でないところでも止まってくれますし、夜道を歩くのがこわいと言えばホテルの前まで連れていってくれたりもします。最初は、時刻表がないので、不便なのではないかと心配しましたが、今のところはストレスなく会議場に通えています。
さて、今日(12月3日)は、COP17/CMP7第1週目の最後の日。2週間の会合の折り返し地点です。実施に関する補助機関(SBI)会合と科学的・技術的助言に関する補助機関(SBSTA)会合については、午後から深夜にかけて、閉会の全体会合が開かれました。
京都議定書第1約束期間後の国際枠組みに関する議論は、この1週間で、どれくらい進んだのでしょうか。今日の午前中に、COP17/CMP7議長によるストックテイキング会合(現状把握のための会合)が開催され、気候変動枠組条約の特別作業部会(AWG-LCA)と京都議定書の特別作業部会(AWG-KP)の作業の進捗状況が報告されました。その内容を紹介します。
京都議定書の特別作業部会について、AWG-KP議長は、この1週間、①先進国の数値目標(目標値、第2約束期間の長さと法形式に関する問題を含む)と、②京都議定書下の諸メカニズム、の2つのテーマについて、非公式協議を開催したと報告しました。このうち、森林吸収源については進展があり、閣僚級会合に送られる文書の合意に近づいているようです。
京都議定書第2約束期間の議論については、共通理解となっている事項は複数あるものの、約束期間の空白を避けるための批准の問題があると同議長は指摘しました。2013年1月までに改正附属書B(=京都議定書第2約束期間)が発効するように、改正手続を京都議定書の規定に基づいて正式に進めるのは難しく、また、各国の主張に鑑みれば、ほぼすべての先進国にとって、暫定適用は実現可能性が低いとして、同議長は、これらの代替案として、以下の3つが考えられるとしました。
- 2段階プロセス:第1段階として、議定書改正案を採択したうえで、CMP決定によって、2013年1月以降も空白なく議定書が続くことを確保する。第2段階として、各国がAWG-LCAの進捗状況などをにらみながら議定書改正を批准する
- 議定書を改正せずに、CMP決定のみを成果とする
- 締約国による一方的宣言のみを成果とする
また、2020年の各国(先進国)の排出削減目標を数値目標(第1約束期間と同じように、約束期間の平均の基準年に対する割合で示す)に変換することについては、2つの問題があると指摘されました。ひとつは、この変換作業を終わらせる時期です。先進国は、作業の時間が必要であることから、ダーバンでは、変換のための明確なスケジュールとプロセスへの合意を成果とすべきと主張しています。他方、発展途上国は、この変換の問題は、ダーバン合意の要となるべきであり、今回、作業を終わらせるべきであると主張しています。
もうひとつの問題は、目標レベルの問題であり、第2約束期間の長さが中心に議論がなされましたが、最大の懸念は、地球温暖化の抑制のために必要な削減量に満たない目標レベルで固定化されるのを避けることでした。
AWG-KP議長は、「合意は可能だと思う」とし、また、「各国は、より広いダーバン合意がなければ、京都議定書に関する決定はできないという姿勢を明確にしているため、AWG-KPの成果は、包括的なダーバン合意の中で位置づけられる必要がある」として、1週目の進捗状況の報告を締めくくりました。
気候変動枠組条約の特別作業部会(AWG-LCA)の議長からは、テーマごとの小グループでの議論を踏まえ、新しい統合文書が作成されたことが報告されました。この統合文書は、中間報告であることが文書の中で強調されています。12月5日の午前中に全体会合が開かれ、この文書に対する各国の反応を見て、その後、テーマごとの非公式会合で協議が進められ、それらを踏まえて更新された新しい文書が7日に示される予定です。
この1週間、京都議定書第1約束期間後の国際枠組みに関する交渉は、作業が淡々と進められたものの、目覚ましい進展は残念ながらなかったようです。6日からは、閣僚級会合が始まります。今回は、12か国の首脳、130か国の閣僚が参加する予定です。政治的意思が、停滞している温暖化交渉を動かすことになるでしょうか。
参考資料
執筆:久保田 泉
(国立環境研究所 社会環境システム研究センター)
※全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)ウェブサイトより転載