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2015年9月29日

都市大気における粒子状物質削減のための動態解明と化学組成分析に基づく毒性・健康影響の評価(分野横断型提案研究)
平成24~26年度

国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-109-2015

表紙
SR-109-2015 [11.8MB]

 直径が数μm以下の大気中を浮遊する粒子は、人の健康に影響を及ぼすため、大気環境保全を考えるうえで大変重要な物質です。平成21年秋に微小粒子状物質(PM2.5)の質量濃度に対する環境基準が設定されましたが、基準達成のためにはPM2.5の環境動態や多様な発生源の情報に基づいた発生源対策が必要です。また、化学組成に基づいた粒子状物質の毒性・健康影響を評価する必要があります。


 本研究では、PM2.5を含む粒子状物質について前駆体も含めた発生源情報の整備、野焼きや直噴自動車からの粒子排出実験、大気チャンバーでの二次生成有機粒子(Secondary Organic Aerosol: SOA)の生成機構の解明や収率測定実験、粒子の凝縮蒸発の実験、関東地方での大気総合観測等を行い、大気シミュレーションモデルの精度向上を図りました。また、人為起源および大気中で捕集した粒子状物質について細胞を用いた曝露実験を行い、SOAなどの毒性を評価しました。さらに、大気シミュレーションモデルや観測などから得られた粒子状物質の化学組成や濃度分布に基づいて、粒子状物質がもたらす健康への影響の評価を行いました。


 その結果、夏季関東のPM2.5は有機物、硫酸イオン、硝酸イオンが主要成分であり、有機物の酸化度は東京・埼玉・群馬で同程度であること、人為起源の芳香族炭化水素から生成されるSOAの細胞への毒性(酸化ストレスなどで評価)はアルファピネン等の自然起源の揮発性有機化合物から生成したSOAの毒性より高いこと、大気中で捕集した粒子状物質による酸化ストレスの発現は実験室で生成したSOAによる酸化ストレスの発現と比べてかなり低いことなどが明らかとなりました。 


 本報告書が、大気環境を保全する総合的な施策を検討するうえで役に立つことを期待しています。


(地域環境研究センター 森野 悠、高見昭憲(編者))

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