- 予算区分
- 環2452
- 研究課題コード
- 2428BB001
- 開始/終了年度
- 2024~2028年
- キーワード(日本語)
- 全球炭素収支,炭素同位体,酸素,アジア太平洋域,長期モニタリング
- キーワード(英語)
- global carbon budget,carbon isotope,oxygen,Asia-Pacific region,long-term monitoring
研究概要
人為的なCO2排出量と、その大気、海洋、陸域生物圏への分配を正しく評価することは、将来の気候変動予測と地球温暖化の緩和策・適応策といった政策立案を支援するために不可欠である。現在、大気中のCO2増加量は排出される人為起源CO2の半分程度でしかなく、残りは陸域生物圏と海洋に吸収されていると考えられている。パリ協定の目標達成のための排出削減計画を策定する上で、人為起源CO2排出量の把握とともに海洋・陸域生物圏のCO2吸収量のより正確な現状把握と将来予測が極めて重要な課題である。最新の研究でもいまだ排出量と吸収量には大きな不確実性があり、炭素循環の理解向上と各成分の推定精度向上が求められている。
そこで、本研究ではアジア太平洋域において広域かつ長期的な大気と海洋の観測を行い全球炭素収支の監視を行うことを目的とする。大気中CO2の炭素の安定同位体(13C)と放射性同位体(14C)、大気中の酸素濃度、さらに表層海水の溶存無機炭酸中の13Cと14Cは、地球表層の炭素循環の各プロセスにおいて特徴的な変化を見せるため、それらの長期観測から炭素循環の変動を推定することができる。本研究では、国立環境研究所が1990年代からアジア太平洋域に広く展開した観測網を用いて炭素同位体や酸素の広域観測を実施し、炭素循環の長期変化傾向や年々変動を検出する。このような基礎的な長期モニタリングデータとそれにもとづく全球炭素収支解析結果は、CO2吸収排出源の把握精度向上と将来予測に貢献することが期待される。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備
全体計画
(1)大気中CO2の炭素の安定同位体比の観測
地上ステーションならびに定期貨物船において大気試料を採取し、大気中CO2の炭素の安定同位体(13C)の広域観測を実施する。13Cの変化から海洋・陸域生物圏のCO2吸収量の年々変化を推定する。
(2)大気中CO2の炭素の放射性同位体比の観測
地上ステーションならびに定期貨物船において大気試料を採取し、大気中CO2の炭素の放射性同位体(14C)を測定する。バックグランド大気14Cのモニタリングに加え、化石燃料起源CO2は14Cを含まないことを利用しCO2濃度変動における化石燃料起源の寄与率を推定する。
(3)大気中酸素濃度の観測
地上ステーションならびに定期貨物船において大気試料を採取し、大気中酸素濃度の広域観測を実施する。現場での連続観測も一部並行して実施する。大気中酸素濃度の減少率から海洋・陸域生物圏のCO2吸収量の定量化と時間的変化傾向を明らかにするとともに、大気-海洋間のガス交換の時空間変化を推定する。
(4)海洋表層水の溶存CO2の炭素同位体観測
定期貨物船を使って表層海水に溶存する無機炭酸中の13Cおよび14C同位体の測定を行う。得られたデータから、大気−海洋間のCO2の交換量のモデル化やフラックス推定の検討を行う。
(5)観測結果の総合解析
本研究で実施される観測から得られるアジア太平洋域における広い領域での大気中CO2の炭素同位体と酸素濃度、ならびに海洋表層水の炭素同位体の時間・空間的変動から炭素循環に関する情報を抽出・解析し、全球炭素収支の監視を行う。
今年度の研究概要
地上ステーションならびに定期貨物船において大気試料を採取し、大気中CO2の炭素の安定同位体(13C)と放射性同位体(14C)、酸素濃度を測定する。また、定期貨物船を使って表層海水に溶存する無機炭酸中の13Cおよび14C同位体の測定を行う。観測から得られた大気13Cと酸素濃度の変化から海洋・陸域生物圏のCO2吸収量の年々変化を、大気14Cから化石燃料起源の寄与率を推定し、全球炭素収支の変動に関する情報を得る。
外部との連携
産業技術総合研究所
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