ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

作用・構造や曝露プロファイルの類似性に基づく複数化学物質の生態リスク評価手法の開発(令和 6年度)
Development of ecological risk assessment methods for multiple chemicals based on the similarity of activity/structure and exposure profile

予算区分
安全確保領域
研究課題コード
2222BA002
開始/終了年度
2022~2024年
キーワード(日本語)
混合物,生態毒性,相加作用,グルーピング,曝露評価
キーワード(英語)
Mixture,Ecotoxicity,Additivity,Grouping,Exposure Analysis

研究概要

実際に野外での水生生物等への複合曝露が想定され、かつこれらの有害影響を単一ではなく合算して考慮すべき評価対象化学物質群として、発生源が共通すると考えられる同一用途物質の中から、現在の化学物質管理の法体系や制度での位置付けなども考慮して、有機汚染化学物質群3グループ(フタル酸エステル、トリアジン系除草剤、第四級アンモニウムなど)ならびに金属類(銅、亜鉛、カドミウム、ニッケルなど)を選定する。これらの対象物質について、同一作用機序物質として濃度加算が可能なグループを類似構造や物理化学的性状、ならびに人健康における作用機序を参考にした遺伝子発現や関連マーカーの解析などより確認する。有機の対象化学物質については、化学物質排出移動量届出制度(PRTR)や各種生産・流通量などのデータがそろう物質のデータを未知である物質に拡張して、地理情報システム(GIS)をベースにした環境多媒体モデルG-CIEMSを利用して日本全土あるいは複数の流域を対象にした河川水中濃度の予測により同時曝露の評価を行い、過去の実測値や追加の濃度測定などにより校正を行う。豊富な実測データが存在する金属類については、複数の情報源より実測値データを収集、整理・分析を行い、データマイニング手法などを用いて金属類の同時曝露プロファイルを決定する。有害性評価では、評価対象化学物質について信頼性評価に基づき既存の生態毒性試験データを活用して利用するとともに、キーとなる化学物質については、文献値を活用しながら、魚類、ミジンコ、藻類を用いた慢性毒性試験法を実施する。さらに、複合曝露試験について、各グループについて様々な濃度組合せ(曝露プロファイル)で実施し、類似作用・構造を有するグループ内には濃度加算法、それ以外について独立作用モデルに当てはめた結果と比較し、当該物質群の相加性や、その相加性の適用範囲を検証する。
 これら一連の手法の有効性について、化学物質の複合影響評価において重要と考えられる有機汚染化学物質3グループおよび金属4種によって検証し、その過程で明らかになった知見や課題を抽出することで、環境省が予定する「化学物質の複合影響評価に関するガイダンス(仮称)」の作成に貢献する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

令和4年度は、
・化審法やリスク初期評価における評価結果、農薬の作用機序分類等をレビューし、作用・構造が類似する有機汚染化学物質群(フタル酸エステル、トリアジン系除草剤、第4級アンモニウム塩など)から3グループを選定
・各グループについて、物理化学的性状、人健康(可能であれば野生生物)の作用機序、遺伝子発現解析結果や遺伝子発現のデータベース等、3生物群への毒性スペクトルを参考に同一作用機序の範囲を推定し、実測すべき物質・生物種を絞り込む。
・毒性データのレビューと生態毒性予測の結果、試験および予測による毒性データのない毒性を実測すべき物質・生物種を選定し、欠損する個別の物質の生態毒性試験を開始
・排出や物理化学的性状が明らかな物質についての動態解析モデル(G-CIEMS等)により曝露評価を開始
・文献調査・レビューによって金属類の複合影響評価手法の現状と課題を明らかにするとともに、単一金属での藻類・甲殻類・魚類に対する慢性毒性試験データの文献調査および試験実施により、複合影響評価に利用可能な濃度?反応関係に関するデータを蓄積
・物理化学的性状や記述子に基づく試験データがない金属類について、最近の文献レビューと重回帰モデルによる手法を試行
・金属類のモニタリングデータの収集・整理し、データマイニング手法などにより、分析・分類するとともに、同時曝露の可能性が高い金属元素・金属類の現実的な複合曝露条件による毒性試験を試行的に実施
令和5年度は
・排出状況や物理化学的性状が不明な物質について、既知の物質を参考にして推定して動態解析・曝露評価手法を提案して試行
・毒性試験を継続して相対毒性強度の算出、複合影響試験による相加モデルを検証
・同一作用機序が推定される物質はCA法、それ以外はIA法に基づいて合算したリスクを推定し、曝露シナリオによる毒性試験結果と比較検証してリスク判定
・信頼性の高い金属の環境モニタリングデータが存在する物質について、1年目に得た曝露シナリオを対象として、CA法、IA法および生物利用性を考慮した評価手法(BLMベース評価)を用いて試行的リスク評価を実施
・複数の現実的な金属類の曝露シナリオによる毒性試験を実施し、CA法、IA法および生物利用性を考慮した評価手法(BLMベース評価)による予測計算結果と実測毒性結果とを比較
・金属類の複合物質の評価手法(CA法、IA法および生物利用性を考慮した評価手法(BLMベース評価))による試行的リスク評価を踏まえ、それぞれの手法の得失を整理して、入手可能な情報に基づく段階的な評価手法を提案

令和6年度は
・令和5年度の動態解析・曝露評価を検証し、同一用途物質に拡張
・リスク判定を進めるとともに、有機化学物質と金属が混合した際のFunnel仮説の適用範囲を検討し、曝露シナリオに基づいた検証実験を実施
・一連のグルーピングや得られた情報に基づいて段階的に評価を行う手順など、「化学物質の複合影響評価に関するガイダンス(仮称)」への提案内容のとりまとめ
・金属類について生物利用性を考慮したリスク評価を継続して実施し、曝露シナリオによる慢性毒性試験結果と比較検討
・有機汚染化学物質と金属の複合影響評価のケーススタディを実施
・有機汚染化学物質と金属の複合影響の曝露シナリオを検討

今年度の研究概要

国立環境研究所が担当するサブテーマ1では、
・陽イオン界面活性剤を用いた、藻類、ミジンコ、魚類の3種の単独と複数での毒性試験、曝露評価、ToxCastやRelative Potenccy Factorを用いた評価、グルーピングなどを実施するケーススタディをおこなう。
産業技術総合研究所が担当するサブテーマ2では、
・魚類を用いた複合影響評価や銅の初期生活段階試験
を行う。
また、最終年度として、Funnel仮説の実証や、有機物と金属の複合影響評価なども行う。

外部との連携

産業技術総合研究所がサブテーマ2(サブテーマ代表:内藤航グループリーダー、参画者:加茂将史、岩崎雄一、眞野浩行)を務め、金属の曝露プロファイル解析に基づく評価を実施した。

課題代表者

山本 裕史

  • 環境リスク・健康領域
  • 領域長
  • Ph.D.
  • 化学,生物学,土木工学
portrait

担当者