- 予算区分
- CD 文科-科研費 科研費A
- 研究課題コード
- 2426CD003
- 開始/終了年度
- 2024~2026年
- キーワード(日本語)
- 超微小粒子,モバイル観測,認知機能,嗅覚,曝露実験
- キーワード(英語)
- UFP,mobile observation,cognitive function,olfaction,exposure experiment
研究概要
空気中の粒径0.1μm以下の超微小粒子(UFP)は、粒径の小ささから質量濃度への寄与は非常に小さく個数濃度は圧倒的に多いため、PM2.5などで用いられる質量濃度測定では大気中の時空間分布をとらえきれない。また、肺胞からの直接全身血流への移行と上気道の嗅球への沈着から中枢神経系細胞への酸化ストレスや炎症を惹起し認知機能へ影響を及ぼす可能性が指摘されている。本課題では、UFP曝露による認知機能への影響に焦点を当て、モバイル・固定観測および成分分析の併用により、物理化学的特性を考慮したUFP個数濃度の時空間変動解明とそれを応用したUFPの時空間変動モデルを構築する。同時に、疫学・毒性学的アプローチにより、UFP曝露と嗅球を介した認知機能に対する急性影響を明らかにする。疫学研究では、既存データを用いた解析だけでなく、自動車排気、航空機、製鉄所、火力発電所など複数の排出源からのUFPの影響を受ける地域で観測と同期したパネル調査を実施し、 UFP個数濃度と認知機能との関係性を明らかにする。また動物モデルによる毒性学的手法により、そのメカニズムについても明らかにする。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
本課題では、大気観測、大気モデリング、毒性学、疫学、臨床医学の研究者が連携し、都市域におけるUFPの時空間分布と健康影響、特に嗅覚・認知機能への影響を明らかにすることを目的とする。具体的には、
(1) 固定およびモバイル観測によりUFPの個数濃度を時空間的に高分解能で測定することによりUFPの時空間分布の変動要因を解明するとともに、観測と同期した化学組成測定から、健康影響に関係するUFPの化学特性を明らかにする。
(2) 健康影響評価のための環境中UFP個数濃度の時空間変動モデルを構築する。
(3) 疫学アプローチにより、?で構築されたUFP時空間モデルで推定されるUFP濃度を曝露評価として用い、UFP曝露から嗅球を介した認知機能への急性影響を明らかにする。
(4) 毒性学的アプローチによりUFP短期吸入曝露による中枢神経系への影響メカニズムを明らかにする。
今年度の研究概要
UFP測定には粒径別(直径10-500nmの54粒径区分)に測定できる走査型移動度粒径測定器(TSI SMPS3034など)を用い、認知機能などの調査(パネル調査)と同期する固定観測地点では各季節それぞれ1か月程度観測を行い、UFPの個数濃度変動とその健康影響(主に認知機能)との関連を推定する。粒径別粒子試料の採取と成分分析(元素状炭素,有機炭素,有機成分等)を行い,これに基づき,UFPの起源推定や健康影響指標との関連を考察する。モバイル観測には、トラックにSMPSとバッテリーおよびGPSを登載して 特定の排出源(道路沿道、空港など)とその周囲で観測を行う。大気モデルを適用し、疫学研究に資するUFP濃度の時空間変動を推定する。個数濃度計算モジュールが組み込まれた大気化学輸送モデルCMAQや統計モデルであるLUR(Land Use Regression)を用いてUFP濃度分布を推定する。疫学研究では簡易実験室を設置し、UFP個数濃度の観測と同時に被験者の認知機能について計測し、 UFP曝露と認知機能との関連について明らかにする。認知機能評価にはStroop検査を使用し、被験者の認知状態および、実験中の血圧・心拍数の計測を行う。FPが嗅球に沈着し認知機能に影響を与える可能性があるため、嗅覚能力を測定する。毒性研究では、嗅球における細胞外グルタミン酸レベルと記憶機能関連遺伝子発現、および神経免疫相互作用を調べ、 UFP誘発神経毒性のこれまで解明されていなかったメカニズムを明らかにする
外部との連携
北海道大学医学部
東邦大学医学部
- 関連する研究課題
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