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 受賞者氏名:内田昌男,柴田康行
 受賞年月日:平成19年4月2日
 賞の名称:Environmental Science and Technology誌(米国化学会発行)2006年度Environmental Science部門First runner-up賞
 受賞対象:優れた論文に対して「Compound Class Specific 14C Analysis of Polycyclic Aromatic Hydrocarbons Assosiated with PM10 and PM1.1 Aerosols form Residential Areas of Suburban Tokyo」

 受賞者からひとこと:
 宇宙線起源の放射性炭素14Cを用いた汚染源探索に関わる研究の一例として,東京薬科大学,海洋研究開発機構と共同で実施した研究です。放射性炭素14Cは宇宙線の影響で絶えず大気中で作られ,光合成で植物に固定されたあと,生態系を巡っています。一方,化石燃料である石油,石炭には含まれていないことから,14Cは環境中の有機物におけるバイオマス/化石燃料それぞれの寄与率の推定に使えるよい指標となります。国立環境研究所では,国立機関原子力試験研究費などを用いて,環境試料中の個別の有機汚染物質毎に14C測定を行えるGC-AMSシステムを開発してきました。ここではこのシステムを用いて,東京の郊外で数ヵ月連続捕集した大気微小粒子(PM10及びPM1.1)中に含まれる燃焼起源の多環芳香族炭化水素を分離,精製して微量試料中の14C測定を行い,バイオマス燃焼起源の寄与が意外と大きく,3割程度含まれていることを初めて明らかにしました。これらが具体的にどのような発生源からくるのかを,今後さらに追求していきたいと考えています。

(柴田)


 受賞者氏名:稲葉陸太,橋本征二,森口祐一
 受賞年月日:平成19年5月24日
 賞の名称:廃棄物学会論文賞
 受賞対象:「鉄鋼産業におけるプラスチック製容器包装リサイクルのLCA -システム境界の影響-」

 受賞者からひとこと:
 廃棄物学会は,非常に幅広い分野の専門家が会員となっている活動的な学会であり,国立環境研究所の研究員も多数加入しています。その論文賞を受賞したことを大変光栄に存じます。

 本論文は,プラスチック製容器包装の鉄鋼産業におけるリサイクルを含む事例および焼却発電を含む事例を対象として,既存産業プロセスを利用したリサイクルにLife Cycle Assessment(LCA)を実施する場合の適切なシステム境界を検討したものです。詳細は,廃棄物学会論文誌に掲載された論文(Vol.16, No.6, pp.467-480, 2005)をご参照ください。

 LCAはあるシステムにおける物質収支等の定量的側面を評価する手法であり,当然ながら評価対象は限定的です。また,精度や代表性の点で課題は残っており,特に結果の解釈には細心の注意が必要です。しかしながら,定性的にしか議論されてこなかった事項を,ある程度妥当なデータ・条件に基づいて定量的に評価することには一定の意義があります。本論文の結果が,循環型社会構築に向けた議論の発展・向上につながることを願っております。

 本論文を執筆するにあたっては,共著者と計算シートを睨みながらその改良を重ねると共に,データと計算方法の確認に明け暮れた記憶があります。その共同作業の価値が論文賞として認められたわけですが,その喜びがようやく実感できるようになった今日この頃です。国立環境研究所の強みは,専門知識と環境意識を有した様々な分野の研究者が共存し,高い水準での議論が可能である点だと思います。この利点を生かしながら今後も努力を重ね,人間社会と自然環境をより良い方向に導く研究を行いたく存じます。

(稲葉)


 受賞者氏名:田崎智宏
 受賞年月日:平成19年5月24日
 賞の名称:廃棄物学会奨励賞(廃棄物学会)
 受賞対象:廃棄物に対する真摯な研究を高く評価して

 受賞者からひとこと:
 私が長らく活動している廃棄物学会から奨励賞をいただいたということは,これまでの10年近くの私の研究に対する評価をいただいたということとともに,一緒に研究に関わってきた当研究所の循環型社会・廃棄物研究センターの各研究者への評価ともいえ,大変光栄に存じます。この10年で廃棄物に関わる研究は,世の中の循環型社会に向けた取り組みの進展とあわせて,目覚ましく変わってきています。私の研究成果は,リサイクル制度の評価研究,リサイクル品の環境安全性管理研究,リデュース・リユース研究,製品中物質管理研究と多岐にわたっておりますが,それぞれにまだまだ研究課題が多く残されております。奨励賞というものは「まだまだがんばれよ」というものと理解しておりますので,今回の受賞を機に,これまで以上の熱意と努力をもって,研究や社会に貢献していきたいと考えています。


 受賞者氏名:加河茂美(九州大学),工藤祐揮(産業技術総合研究所),南齋規介,田崎智宏
 受賞年月日:平成19年7月6日
 賞の名称:WASSILY W.LEONTIEF MEMORIAL PRIZE(International Input-Output Association)
 受賞対象:優れた論文に対して「THE ECONOMIC AND ENVIRONMENTAL CONSEQUENCES OF AUTOMOBILE LIFETIME EXTENSION AND FUEL ECONOMY IMPROVEMENT:JAPAN'S CASE」

 受賞者からひとこと:
 レオンティエフ賞は二年ごとに開催される国際産業連関分析学会(IIOA)世界大会での論文コンペで該当論文がある場合にのみ贈られる最優秀論文賞(前大会では該当論文なし)で,ノーベル賞を受賞した偉大な研究者の名前を冠した賞を頂けたことを大変嬉しく思います。本論文は,異時点の最終需要の間に内在する動学的関係を明示的に扱うことができる構造分解分析の新手法を開発し,それを乗用車の使用年数の延長が環境と経済に及ぼす影響とその構造を定量的に把握するという,現実的な問題の解明に応用しています。論文は,Economic Systems Research誌に掲載されますので詳細はそちらをご覧下さい。

 著者らの共通点は同世代の若手?であることと環境研の研究者(だった)ということです。そのため,単なる共同研究者ではなく,互いの専門知識やデータを持ち寄り,仲間として仕事ができたことが,受賞につながったと感じています。今後も個々が研さんを積むとともに,人との心通うつながりを大事にして,研究レベルの乗数効果を発揮していきたいと思います。

(南齋)